働き方改革とは?目的や背景から取り組み方まで徹底解説

働き方改革とは?目的や背景から取り組み方まで徹底解説

働き方改革

働き方改革関連法の施行に伴い、長時間労働の是正や賃金関連の見直しなどが行われています。働き方改革の実現が不十分な場合、罰則を受ける可能性もあるため概要から取り組み方まで確認しておくことが大切です。ここでは、働き方改革の目的や背景、内容からメリットとデメリット、取り組み方まで詳しくご紹介します。

働き方改革とは

働き方改革とは、働き方改革関連法に基づき、従業員の生産性の向上や就業機会の拡大などを実現するために施策を講じることです。働き方改革の目的と背景、内容について詳しくご紹介します。

■目的と背景

働き方改革が推進されている背景には、少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少があります。国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口(平成29年推計)」によると、日本の人口は2053年には9,924万人、2065年には8,808万人にまで減少する見込みです。また、仕事と育児や介護などの両立、収入が不足していることを理由とした兼業のように、働く人々のニーズが多様化している背景もあります。

働き方改革の目的は、多様な働き方を選択できる職場環境の実現や、1人当たりの生産性を向上させて生産人口の減少に対応することなどです。日本の全企業数の99.7%は中小企業(平成28年度)であることからも、大企業だけではなく中小企業も働き方改革に取り組むべきことが分かります。

■内容

働き方改革関連法の内容は、「労働時間法制の見直し」と「雇用形態に関わらない公正な待遇の確保」に分類されます。働き方改革関連法の内容について詳しくご紹介します。

時間外労働の規制

働きすぎを防ぐことを目的に、時間外労働の上限規制が設けられました。月45時間かつ年360時間を超えて残業させることはできません。また、臨時的な特別の事情で労使が合意し、これを超えて残業する場合においても月100時間未満、年720時間以内に留めることが義務づけられています。時間外労働の上限規制に違反すれば、刑事罰を科される恐れがあります。

勤務時間のインターバル制度

勤務終了から翌日の出社までに一定のインターバルを設け、生活時間や睡眠時間を確保する制度です。勤務終了から翌日の出社までに一定時間以上のインターバルを設ける必要があります。

年5日以上の有給休暇の取得

年10日以上の有給休暇を取得する権利を持つ従業員に対し、年5日の有給休暇を取得させる義務が課されました。これを守らなかった場合は、刑事罰が科される恐れがあります。

割増賃金率の引き上げ

時間外労働が月60時間を超えた場合、超えた分の割増賃金の割増率を50%以上へ引き上げる制度が適用されます。中小企業への適用は2023年からです。

同一労働・同一賃金

非正規雇用者が正規雇用者に近い労働を課されている場合、不公平な待遇差を埋めるために正規雇用者と同様の賃金を支払う必要があります。また、福利厚生にも不合理な差をつけることが禁止されています。

フレックスタイム制の柔軟性の向上

フレックスタイム制は最大1ヶ月単位の適用でしたが、2ヶ月・3ヶ月単位での適用が可能になりました。シーズン単位で繁忙期がある業種の場合、期間内の休日のタイミングを調整できるため、企業と従業員の両方にメリットがあります。

高度プロフェッショナル制度の導入

高度プロフェッショナル制度とは、年収1,075万円以上で、なおかつ一定の専門知識を持つ従業員を対象に労働時間規制や割増賃金の支払いを行わないことを可能にする制度です。必ず本人の同意が必要です。対象となる職種は、金融商品の開発者、研究開発業務に従事する者、公認会計士や弁護士などです。ただし、高収入で専門職の代表とも言える医師には適用されません。

産業医関連の強化

産業医やカウンセラーを通じ、労働時間を客観的に把握することが義務付けられています。また、産業医による長時間労働者に対する面接指導に関する取り組みも強化されました。

不合理な待遇差をなくすための規定の整備

同一賃金・同一労働を実現するために、不合理な待遇差を設けることを禁止する規定を整備する必要があります。

労働者への待遇に関する説明義務の強化

正規雇用者と非正規雇用者の間で待遇差が生じる場合は、その内容や理由などを従業員が企業に説明を求めることができるようになりました。

行政による助言・指導・行政ADRの規定の整備

都道府県労働局にて、不均衡待遇や待遇差の内容・理由に関する説明に関する助言・指導を行っています。また、無料で非公開の紛争解決手続きも行っているため、働き方改革の取り組みを実行するうえでトラブルが起きた際は、必要に応じて相談してみるとよいでしょう。

知っておきたい働き方改革関連法とは

働き方改革関連法は、働き方改革に関連する法律の総称です。その内容と施行時期について詳しくご紹介します。

■含まれる法律

働き方改革関連法には、次の法律が含まれています。

● 労働基準法

● 労働安全衛生法

● 労働時間等の設定の改善に関する特別措置法

● じん肺法

● 雇用対策法

● 労働契約法

● 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律

● 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律

上記はいずれも以前から存在している法律で、働き方改革によって改正されました。

■施行時期

働き方改革に関連する法律は、働き方改革の推進が始まる以前から存在していました。働き方改革によって改正された法律の施行時期をご紹介します。

● 時間外労働の上限規制……大企業2019年4月、中小企業2020年4月

● 年次有給取得の義務化……2019年4月

● 勤務間インターバル制度の努力義務……2019年4月

● 中小企業の時間外割増率猶予措置の廃止……2023年4月

● 産業医の機能強化……2019年4月

● 同一労働同一賃金の義務化……大企業2020年4月、中小企業2021年4月

● 高度プロフェッショナル制度の創設……2019年4月

● フレックスタイム制の清算期間延長……2019年4月

働き方改革のメリット

働き方改革に取り組むことには、従業員だけではなく企業側にもメリットがあります。働き方改革に目的意識を持って取り組むためにも、働き方改革のメリットについてチェックしておきましょう。

生産性が向上する

働き方改革の目的である生産性の向上に成功すれば、従業員1人当たりが生み出す利益が増加する可能性があります。少ない従業員数でより多くの利益を得られると、収益と経費のバランスが改善します。従業員数1人当たりが生み出す利益が少ない企業こそ、働き方改革に積極的に取り組むべきと言えるかもしれません。

社会的信用性が高まる

働き方改革を推進し、従業員が多様な働き方を実現したり生産性を向上できたりすれば、世間に対するイメージアップにつながる可能性があります。社会的信用性が高まれば、商品やサービスの販売数や取引先の数が増えることが期待できます。その結果、より多くの利益を得られ、さらに働き方改革への更なる取り組みや、新しいビジネスにも先行投資できるようになり、好循環が生まれます。

優秀な人材を確保しやすくなる

働き方改革に取り組み、従業員が高いモチベーションを維持できるようになれば、優秀な人材の流出を抑えられるでしょう。また、賃金や福利厚生、働きやすさなどに優れた企業であることをアピールできれば、優秀な人材が集まりやすくなるはずです。

生産性が高い優秀な人材を多く確保できれば、少子高齢化で日本の人口が減少の一途をたどっても経営を維持できるでしょう。

働き方改革のデメリット

働き方改革に取り組むことには、次のデメリットがあります。

管理監督者の負担が増加する可能性がある

時間外労働の上限規制ができてからしばらくは、時間内に業務を終えることができず、管理監督者の負担が大きくなる可能性があります。管理監督者は深夜労働を除き、時間外労働に対して賃金が支払われません。そのため、残業時間の上限規制を気にしなくてもよい管理監督者にしわ寄せが行くと考えられます。

また、従業員の時間外労働を常に把握し、適切にマネジメントすることが求められます。そのため、管理監督者は管理業務に大きな負担を感じることもあるでしょう。

このような事態を避けるため、働き方改革を推進する場合は、業務の見直しを行い、不要な業務の排除やITツールの導入による自動化など、一人当たりの業務量を減らす取り組みを行うことが重要です。

不公平感が生まれる可能性がある

多様な働き方に対応することで時短勤務者が増えると、時短勤務をしていない従業員の業務量が増える恐れがあります。時短勤務者はそうではない従業員よりも労働時間が短いため、それだけ給与は少なくなります。しかし、時短勤務ではない従業員の業務量が増えることで、不公平感が生まれる可能性があります。

業務遂行に支障をきたす

時間外労働の上限規制、5日の有給休暇の取得などで働ける時間が減ると、業務遂行に支障をきたす恐れがあります。例えば、プロジェクトの責任者が時間外労働の上限に達した場合、ほかの従業員が業務を代行することになります。そうなれば、トラブルが起きたときに適切な対処ができなくなり、大きなトラブルへ発展する可能性も考えられるでしょう。

ほかの部署との連携の難易度が上がる

ほかの部署との連携を強化しようにも、時短勤務者が増えると思うように連携できなくなる恐れがあります。例えば、3人の橋渡し役がいて、そのうち2人が時短勤務者になってしまうと、連携すべきタイミングで連携できないケースも出てくるでしょう。

このような問題を少しでも緩和するために、ITツールを活用し、他部署との情報共有を円滑化する工夫が必要です。

働き方改革の取り組み

働き方改革に取り組もうにも、具体的な取り組み方が分からず悩んでいる方もいるでしょう。そこで、働き方改革の取り組み方をご紹介します。中小企業の働き方改革の取り組み方については、「中小企業の働き方改革の取り組み方は?内容から他社事例まで紹介」をご覧ください。

長時間労働の見直し

残業時間の上限規制を超えないのはもちろん、長時間労働が多い従業員の働き方を見直すことが重要です。長時間労働は、過労死や自殺、脳や心臓の病気との関連が判明しています。長時間労働を改善することで、従業員が私生活と仕事のバランスを取りやすくなり、仕事に対するモチベーションアップにつながります。働き方改革における残業時間の上限規制と長時間労働の見直し方については、「働き方改革の残業規制とは?内容や取り組み方から企業の事例まで紹介」 をご覧ください。

従業員の生産性を高めるための職場環境改善

従業員の生産性を高めるための職場環境改善も働き方改革の一環です。そのひとつにパワハラやセクハラの排除が挙げられます。パワハラやセクハラが横行している職場では、職場全体の士気の低下や職場風土の悪化によって、従業員の生産性が低下します。また、企業イメージの低下によって優秀な人材が流出したり、新卒・中途採用者の応募数が減少したりする恐れがあります。その他にも、集中しやすい環境を作るためのオフィス設備の整備、ITツールの導入などが挙げられます。

テレワークの推進

新型コロナが流行している昨今では、通勤や出社による感染リスクを懸念して、仕事に対するモチベーションが低下するケースがあります。テレワークを推進することで、感染リスクを抑えると共に柔軟な働き方が可能になります。テレワークの推進には、ITツールの活用が欠かせません。リコージャパン株式会社では、在宅勤務への対応方法や導入方法、役立つITツールなどを紹介するガイドをご提供しておりますので、ぜひご覧ください。

No1-バナー.png

福利厚生の充実化

賃金を上げることは難しいが、福利厚生であれば充実させられるという企業は多いのではないでしょうか。福利厚生は賃金と同様に従業員のモチベーションに関係しているため、必要に応じて充実させることが大切です。実際に、福利厚生の充実によって従業員満足度が上がる結果となった企業も存在します。働き方改革の取り組み方の事例は「働き方改革の取り組み事例11選!大企業・中小企業の事例を紹介」 をご覧ください。

働き方改革を実行する際の流れ

働き方改革を実行する際は、やみくもに施策を導入するのではなく、次の流れを守ることが大切です。

社内の現状を把握する

働き方改革の推進が始まる前から、すでに長時間労働の改善や多様な働き方への対応などができている企業もあります。そのため、社内の現状を把握することから始めた方がよいでしょう。改善した方がよいところ、取り組みを強化した方がよいところなどを明確にすることで、不要な施策の実施による従業員への負担や無駄なコストが増えるリスクを抑えられます。

必要な施策を立案する

社内の現状を把握し、課題が明確になった後は、それを改善するために必要な施策を立案し、実行しましょう。

社内へ浸透させる

働き方改革を成功させるには、従業員の協力が必要です。どれだけ優れた取り組みを行おうとしても、従業員が自主的に取り組んでくれないと効果が発揮されません。働き方改革の取り組みを社内へ浸透させる必要があります。

働き方改革の取り組みは、ただ実行すればよいのではなく、現実的に行えるのか、従業員の協力を得るにはどうすればいいのかを考えることが重要です。従業員の協力を得て社内で浸透させるためには、現在の課題と改善する必要性やメリットを認識させましょう。

効果を検証しブラッシュアップする

施策の効果を定期的に検証し、問題点や改善点を把握しましょう。さらに優れた施策へとブラッシュアップさせることを繰り返せば、より高い効果を得られるようになります。働き方改革に向けてどのように取り組めばいいか分からない、効果がなかなか出ないような場合は、厚生労働省が47都道府県に設置している「働き方改革推進支援センター」に相談してみてはいかがでしょうか。

リコージャパン株式会社の働き方改革への取り組み

リコージャパンは、社員が生き生きと誇りを持って働き、お客様から感謝される顧客価値企業を目指し、働き方改革に取り組んでおります。取り組みの考え方や内容についてご紹介します。

働き方改革の取り組みにおけるリコージャパンの考え方

働き方改革は、社員にとって働きがいのある状況を作ることを基本方針としています。会社が働き方改革の取り組みを一方的に取り入れると、会社主体の「働かせ方改革」になる恐れがあります。そこでリコージャパンでは、一人ひとりの働きがいを作るとともに、誰もが活躍できる環境づくりを基本的な考え方として、働き方改革に取り組んでいます。

リコージャパンの働き方改革の取り組み

リコージャパンが行っている働き方改革の取り組みについて、一例をご紹介します。

残業時間の削減

リコージャパンでは、生産性や効率性を高めつつ、残業時間を減らすことに力を入れています。例えば、営業の外回りにおいて移動時間やアポの空き時間にモバイルワークで資料や報告書を作成し、直行直帰にすることで労働時間を減らし、社員の私的時間を増やすことに成功しました。

ワークライフバランスの改善

家事や子育てと仕事を両立している従業員の在宅勤務を可能にすることで、家事や育児に使える時間が増えるとともに、フルタイム勤務を実現しました。フルタイム勤務によって収入が増えるとともに、家事や育児に使える時間が増えることでワークライフバランスが改善します。そのほか、場所を問わずに働ける環境づくりを目的に、業務ロボ(RPA、AI)の活用も推進しています。

コミュニケーション方法の改善

会議の効率化を目的に、会議は1テーマ15分、資料は1枚、月曜日固定、Web会議の実施、立ち会議、IWB(電子黒板)の活用などに取り組んでいます。さらに、ICTを駆使したコミュニケーションで即断・即決・即行動することを目標に、全社一斉メールの廃止、掲示板の活用、ポップアップ配信、チャットの活用、Web会議の活用などにも取り組んでいます。

顧客に提供する価値を高める

リコージャパンは、「働き方先進企業」として誇れるオフィスで働けるように、社会に率先して働き方改革に取り組んでいます。自社の最新ソリューションを実際に活用し、業務を改善することでお客様により質の高い提案が可能になりました。働き方改革と言えば、従業員のワークライフバランスを整えたり多様な働き方に対応したりするだけのイメージがあるかもしれませんが、取り組み方次第では顧客の利益にもつながります。

働き方改革には早めに取り組みましょう

働き方改革への取り組みが遅れると、残業時間の上限規制を守れなくなり刑事罰が科されたり、優秀な人材の流出が増加したりする恐れがあります。働き方改革にはできるだけ早く取り組んで、ワークライフバランスを取りやすく柔軟な働き方を実現できる職場を目指しましょう。今回、ご紹介した働き方改革のメリットやデメリット、取り組むときの流れなどを参考に、自社に合った施策を検討してみてください。