働き方改革の残業規制とは?内容や取り組み方から企業の事例まで紹介

働き方改革の残業規制とは?内容や取り組み方から企業の事例まで紹介

働き方改革

働き方改革関連法の施行により、残業時間の削減が急務となっています。施行から1年が経過した現在、実施状況はどのようになっているのでしょうか。ここでは、働き方改革における残業規制の内容や取り組むメリットとデメリット、事例などを詳しくご紹介します。

働き方改革の残業規制とは

働き方改革関連法には、法律に基づく残業時間の条件が設けられています。残業規制の内容や施行時期などについて詳しくご紹介します。

内容

これまでの残業時間の上限は月45時間・年360時間以内であり、月45時間の残業時間を超えることができるのは年間6ヶ月までと法律で定められていました。これに違反した際の罰則は存在せず、行政指導が行われるのみでした。それでは、働き方改革関連法の施行後の残業規制についてはどのようになっているのでしょうか。

残業時間の上限は、従来どおり月45時間・年360時間で、変更はありません。臨時的な特別の事情があり、なおかつ労使が合意すれば、月45時間・年360時間を超えて労働できます(年間6ヶ月まで)。ただし、以下を超えて働くことが新たに法律で禁じられることになりました。

・年720時間以内

・複数月平均※80時間以内(休日労働を含む)

※2ヶ月平均・3ヶ月平均・4ヶ月平均・5ヶ月平均・6ヶ月平均

・1ヶ月当たりの残業時間100時間未満(休日労働を含む)

上記の残業規制に違反した事業者は、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される恐れがあります。

働き方改革関連法では、残業規制のほかにもさまざまな事項が定められています。中小企業で働き方改革に取り組む方法をお探しの方は、「中小企業の働き方改革の取り組み方は?内容から他社事例まで紹介」の記事をご覧ください。

施行時期

働き方改革関連法における残業時間の上限規制は、大企業が2019年4月、中小企業が2020年4月に施行されました。

覚えておきたい所定外労働時間と法定外労働時間

働き方改革関連法における残業時間の上限規制を守るために、所定外労働時間と法定労働時間について確認しておきましょう。

所定外労働時間

所定外労働時間とは、労働契約で定められた労働時間を超えて働いた時間のことです。例えば、労働契約で9時~18時が所定労働時間の場合、18時以降に働いた時間が所定外労働時間となります。

法定時間外労働時間

法定時間外労働時間とは、法律で定められた「1日8時間・週40時間」を超えて働いた時間のことです。働き方改革関連法においては、こちらの残業時間に規制がかかっています。

働き方改革の残業規制のメリット

働き方改革の残業規制を実施するメリットは次のとおりです。

ワークライフバランスの改善による従業員満足度の向上

ワークライフバランスとは、仕事と生活の調和を意味する概念です。仕事上の責任を果たすとともに、多様な生き方の選択と実現できる状況は「ワークライフバランスが取れている」と言えます。自分が望む生き方を選び実現できる状況にあることで、従業員満足度の向上につながります。

残業代の削減

長時間労働によるコストが問題になっている企業では、残業時間の上限規制を順守することで結果的に残業代の削減につながる可能性があります。無駄な業務を減らすことで、収益を落とさずにコストダウンできます。

働きすぎから心身を守る

脳・心臓疾患の労災認定基準では、長時間労動がそうした疾患を引き起こす重要な要素であると判断されています。また、精神的な落ち込み、うつ病など心の不調にも長時間労働が関係していることが判明しています。そのため、残業時間の上限規制で長時間労働を是正できれば、働きすぎによる影響から心身を守ることができるでしょう。

働き方改革の残業規制で起こり得る課題

働き方改革の残業規制を順守することには、次のような課題につながる可能性もあります。注意して対応しましょう。

残業代の削減によるモチベーションの低下

残業代が減ると、従業員のモチベーションが低下する恐れがあります。そのため、福利厚生の充実化や、管理者にはより一層のマネジメント力が求められます。

管理者の負担が増加する可能性がある

残業規制によって、従業員の労働時間・残業時間をより詳細に把握して業務を割り振る必要があるため、管理者の負担が増加する恐れがあります。

働き方改革の残業規制の実施状況

残業時間を削減するために、他社がどのように対策しているのか気になるのではないでしょうか。残業時間を削減するために他社が取り組んでいる施策や成功例をご紹介します。

東邦銀行:柔軟で効果的な働き方を実現

東邦銀行は、業務効率を高めるために、電話や顧客対応の必要がない朝方に事務処理を集中的に行う「朝型勤務」を導入しています。その結果、従業員1日当たりの平均残業時間・休日勤務時間を2014年上期~2016年下期にかけて50%以上の削減に成功しました。

株式会社岩田屋三越:システムの利用やシフトの固定化

株式会社岩田屋三越は、早出勤務や深夜労働など心身への負担が大きい働き方をしている従業員を管理者が把握するシステムを導入しています。さらに、21時30分になるとPCが自動的にシャットダウンします。その他、早出の人が閉店まで残る、遅出の人が早くから出勤しているなどして、所定労働時間以上働いている現状を打開すべく、早出・遅出のシフトの固定化を徹底しました。

シフトの勤務時間内に業務を行うことを徹底すると共に、子育てを理由に早く帰りたい人に早出のシフトを割り当てるといった工夫を行った結果、所定労働時間以上に働いている問題を解決できました。

株式会社ベネッセコーポレーション:ノー残業デーの制定

株式会社ベネッセコーポレーションは、一切残業をしない「ノー残業デー」を推進しています。事業部門ごと、従業員ごとに申請することで、業務の違いに応じて適切な日をノー残業デーに制定できます。さらに、残業時間の上限や会議を行わない時間帯など細かなルールを定めることで、一日のスケジュールを立てやすくなりました。

リコージャパン株式会社:時間単位の生産性を上げる

リコージャパン株式会社では、生産性の向上によって残業時間を削減しています。1日単位のシフト勤務、1ヶ月単位の変形労働時間制によって、ライフスタイルに応じた働き方を実現しました。さらに、PCログから労働時間を可視化することで、残業時間の上限規制を順守しています。

残業規制だけではなく、働きやすい環境づくりや生産性の向上など、さまざまな取り組み事例をチェックして自社に取り入れることをおすすめします。他社の事例については、「働き方改革の取り組み事例11選!大企業・中小企業の事例を紹介」でも詳しく紹介しています。

残業時間の削減を実現するためのポイント

残業時間を削減する際は、次のように取り組むことが大切です。

意識改革を目指す

残業時間を削減する制度を導入するだけでは、残業時間を減らすことはできません。仕事の質が落ちる恐れがあるため、まずは意識改革を目指すことが重要です。残業時間を減らすために生産性を向上する工夫を共有したり、ワークライフバランスの取れた生活が理想であるという認識を与えたりしましょう。

残業時間が長い原因を徹底的に洗い出し、解消する

無駄な業務を徹底的に洗い出し、対策することも重要です。便利なツールを使用して事務作業や管理業務を簡略化する、承認作業を効率化するなど、細かな工夫を積み重ねることで残業時間を大きく削減できるでしょう。

リコージャパンでは、業務に関わるさまざまなデータの一元管理が可能になる「RICOH Desk Navi」を提供しております。情報共有の効率化、業務プロセスの可視化により部門間連携が強化され、残業時間を削減しつつ生産性を高めることに役立ちます。詳しくはこちらをご覧ください。

https://office.solution.ricoh.co.jp/products/desknavi/feature

適切な形で残業時間を削減しましょう

働き方改革関連法で定められている残業時間の上限規制は、必ず守らなければなりません。しかし、焦ってむやみに残業時間を削減すると、業務の質が落ちる恐れがあります。意識改革、ITツールの導入、残業時間が長い原因の排除などを行うことが大切です。また、1人当たりの平均残業時間の推移を記録して、取り組みの効果を検証しましょう。

働き方改革の目的や背景、取り組み方などについては、「働き方改革とは?目的や背景から取り組み方まで徹底解説」の記事をご覧ください。