中小企業の働き方改革の取り組み方は?内容から他社事例まで紹介

中小企業の働き方改革の取り組み方は?内容から他社事例まで紹介

働き方改革

中小企業は大企業と同様に働き方改革に取り組むことが義務づけられています。働き方改革に取り組むことで、結果的に企業の収益性や安定性が高まる可能性があります。ここでは、中小企業が取り組むべき働き方改革の内容や施行時期、他社の事例などについて詳しくご紹介します。

中小企業が取り組む必要がある働き方改革の内容

中小企業庁が公表している定義によると、中小企業とは資本金額と従業員数について、以下のいずれかを満たす企業のことです。

中小企業が取り組む必要がある働き方改革の内容.png

また、働き方改革関連法の主な内容は、「労働時間法制の見直し」と「雇用形態に関わらない公正な待遇の確保」に分類されます。それぞれの内容をご紹介します。

労働時間法制の見直し

労働時間法制の見直しに関する内容は次の8つです。

● 残業時間の上限規制

● 有給休暇付与の義務化

● 高度プロフェッショナル制度の創設

● フレックスタイム制の拡充

● 勤務間インターバル制度の導入(努力義務)

● 産業医・産業保健機能の強化

● 月60時間を超えた分の残業の割増賃金率の引き上げ

このように、長時間労働の是正やライフスタイルに合わせた多様な働き方の推進などを目的とした法律となっています。

雇用形態に関わらない公正な待遇の確保

雇用形態に関わらない公正な待遇を確保する方法として、次の3つが制定されています。

● 不合理な待遇差を排除するための規定を整備する

● 労働者の待遇に関する説明義務の強化

● 行政による助言・指導・行政ADR規定の整備

これらは、従業員同士の不合理な待遇差を排除し、従業員が納得して働ける環境を整備することを目的としています。働き方改革の内容について詳しくは、「働き方改革とは?目的や背景から取り組み方まで徹底解説」をご覧ください。

中小企業の働き方改革関連法の施行時期

中小企業に関する働き方改革関連法の施行時期は次のとおりです。

中小企業の働き方改革関連法の施行時期.png

中小企業が働き方改革に取り組むべき理由

中小企業が働き方改革に取り組むことで、従業員1人当たりの生産性の向上や離職率の低下などが期待できます。その結果、優秀な人材の確保につながり、収益が向上する可能性があります。日本は人口減少の一途をたどっているため、優秀な人材をひとりでも多く確保することが急務と言えます。

国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口(平成29年推計)」によると、2015年の人口は1億2,709万人でした。しかし、2040年には1億1,092万人、2053年には9,924万人、2065年には8,808万人にまで減少すると推計されています。この推計値には外国人も含まれているため、外国人労働者を確保したとしても1人当たりの生産性を高めることが重要と言えるでしょう。

中小企業の働き方改革の効率的な取り組み方

働き方改革の実施に向けてやみくもに取り組むと、効果が発揮されない、管理者の負担が著しく増加するといった問題が起きる恐れがあります。次のように取り組むことで、働き方改革を効率的に進められるでしょう。

■働き方改革推進支援センターに相談する

働き方改革推進支援センターとは、厚生労働省が47都道府県に設置している働き方改革に関する相談窓口です。非正規雇用の従業員の待遇を改善したい、助成金を活用したいがどれを利用できるのか分からないなど、働き方改革に関することであれば内容を問わず相談できます。

自社の状況を伝えたうえで、どのように取り組むべきかアドバイスを求めることで、働き方改革の効率的な取り組み方が分かります。社会保険労務士をはじめとした専門家が担当するため、安心して相談できるでしょう。

■キャリアアップ助成金を活用する

キャリアアップ助成金は、有期雇用労働者や短時間労働者など非正規雇用労働者のキャリアアップを目的に、待遇改善や正社員化などを実施した事業主に支給される助成金です。非正規雇用労働者と正規雇用労働者の待遇差を埋めることや、優秀な人材の流出を防ぐことなどの目的に利用できます。

キャリアアップ助成金には、「正社員化コース」と「処遇改善関係コース」があります。いずれも、助成金を受給するにはキャリアアップ計画の作成・提出が必要です。また、キャリアアップ助成金を申し込めるのは、雇用保険適用事業所の事業主、およびキャリアアップ管理者を事業所ごとに置いている事業主です。

■ITツールを活用する

働き方改革関連法における残業時間の上限規制や年次有給休暇の付与、フレックスタイム制の拡充などを実施することで、管理者の負担が増大する可能性があります。そのため、業務効率化につながるITツールを積極的に導入することが大切です。参考までに、働き方改革に取り組むリコージャパン株式会社が導入しているITツールをご紹介します。

リコージャパン株式会社が導入しているITツール一覧

情報の共有や確認などにITツールを導入することで、業務効率が格段に上がります。なお、リコージャパン株式会社では情報共有の円滑化やデータの一元管理が可能になる「RICOH Desk Navi」を提供しています。VPN経由で利用することにより、在宅勤務の従業員にも情報を速やかに共有できるため、多様な働き方の実現を目指す際にも役立ちます。RICOH Desk Naviについて詳しくはこちらをご覧ください。

https://office.solution.ricoh.co.jp/products/desknavi/feature

■現状を分析してから実行する

働き方改革を実施する前に、現状の課題を分析しましょう。例えば、残業時間が長すぎる原因が「無駄な業務がある」「生産性が低い」の場合、業務内容の見直しや生産性が低い原因の追及が必要です。現状を分析し、働き方改革を実施する際の障害を取り除いたうえで、働き方改革に取り組みましょう。

働き方改革の残業時間の上限規制や残業時間の削減に取り組むときのポイントについては、「働き方改革の残業規制とは?内容や取り組み方から企業の事例まで紹介」をご覧ください。

中小企業の働き方改革の事例4選

中小企業の働き方改革について、他社の事例を見ていきましょう。

大鏡建設株式会社

大鏡建設株式会社は、残業が続いている従業員へのヒアリングやミーティングにより業務割り振りを確認し、残業時間の削減に取り組んでいます。その結果、法人営業部の月平均残業時間が2017年の10.2時間から2019年には6.5時間へと大幅に減少しました。さらに、開発事業部設計担当では同36.1時間から同13.5時間と残業時間を20時間以上も削減できています。

中田工芸株式会社

中田工芸株式会社は、ノー残業デーを実施することで生産性を高めると共に、残業削減の意識を高めるために個人プレーからチームプレーへの変革を進めました。その結果、1人当たりの月平均残業時間は2014年の24時間から2019年には9.5時間へ大幅に削減できました。

株式会社ときわ

株式会社ときわは、出社と退社の時間を自分で決める制度を導入しています。コアタイムが存在しないため、ライフスタイルに合わせて働けます。また、来客の時間帯に合わせた勤務時間を設定することで、残業時間の削減にも成功しました。

有限会社ジェム

有限会社ジェムは、業務効率化を目的にクラウドやメーリングリスト、社内ポータルサイトなどを活用し、円滑な情報共有と管理を行っています。お客様情報やお問い合わせ状況などを全従業員が共有することで、誰がいつ対応してもスムーズに業務を遂行できます。さらに、オンライン上で従業員同士が意見交換できるため、より良い社内環境の整備が可能になります。

働き方改革への取り組み事例については、「働き方改革の取り組み事例11選!大企業・中小企業の事例を紹介」でも詳しくご紹介しておりますのでぜひご覧ください。

働き方改革に正しく取り組みましょう

働き方改革に取り組む際は、現状の把握・分析と原因の追及が必要です。また、行政の窓口やキャリアアップ助成金などを活用し、効率的かつ少ない負担で働き方改革に取り組むことが大切です。人口の減少が進んでいる日本では、働き方改革の推進により優秀な人材を確保することが急務と言えます。この機会に働き方改革に関する取り組みを始めてみてはいかがでしょうか。