企業のクラウド導入メリットは?クラウドについて整理する

企業のクラウド導入メリットは?クラウドについて整理する

クラウド活用

総務省の白書「企業におけるクラウドサービスの利用動向(平成29年版)」によると、クラウドサービスを一部でも利用している企業は平成28年において46.9%で、前年から2.3ポイント上昇しています。半数近い企業が何らかの形でクラウドを利用していることになり、この比率は今後も増えることが予想されます。そこで、企業での利用を想定して、クラウドの種類やオンプレミスとの違い、またクラウドを導入するメリットについてまとめてみました。

クラウドとは?クラウドの種類

クラウドは直訳すると雲ですが、実態のクラウドとは簡単に言ってしまうと、世界中に張り巡らされたインターネット上に構築された仮想基盤のことを意味しています。よく「クラウドにデータを保存する」という使われ方がされますが、これはデータを自分のパソコンやモバイルではなく、ネット上に構築されたシステムに保存することです。パソコンやモバイルが壊れたり失われたりしても、クラウドが消滅しない限りシステムやデータが消えてしまうことはありません。このクラウドにデータを保存する、というのは、多くの方が利用しているクラウドサービスのひとつでしょう。

こうしたシステムを利用したクラウドサービスには、アプリ(ソフト)をクラウド上で動作するSaaS、アプリの開発のための環境をクラウドで提供するPaaS、システムのインフラをクラウドで提供するIaaSとありますが、SaaSが一般的で分かりやすいでしょう。

個人で使うSaaSの例としてはG Suite(旧 Google Apps)やOffice 365、オンラインストレージなどがあります。

企業で使うものとしては、メンバーのスケジュール管理や会議室予約、メール、書類の共有と回覧、申請・承認ワークフローなどの機能を備えたグループウェアや、会計ソフトや人事管理ソフト、営業支援ソフトなど会社運営に利用されるソフトが、クラウドサービスで提供されています。

また、クラウドの中には、パブリッククラウドと、プライベートクラウドがあります。

パブリッククラウドは、いつでもだれでもどこからでもすぐに利用できるオープンなクラウドで、不特定多数の人がサービスを共有します。代表的なものにGoogle、Amazonなどがあります。一方プライベートクラウドは企業や個人が専用のクラウド環境を構築するもので、サービス内容をカスタマイズしたりコントロールしたりできるのが特徴です。プライベートクラウドを提供する業者には、IBMやNECなどがあります。

プライベートクラウドではさらに、自社でインフラを構築するオンプレミス型と、サービス業者のインフラを使うホステッド型があります。

クラウドとオンプレミスの比較

インターネット上の仮想システムを利用するクラウドに対して、端末だけでなくサーバーやネットワーク機器も物理的に自社に設置してシステムを構築し運用する形態がオンプレミスで、これは自社運用型ともよばれます。従来は何らかのシステムの導入はオンプレミスで行うのが普通でした。IT技術の発達で他社のリソースでシステムを構築できるようになり、クラウドサービスが普及し始めたため、従来の運用方法をオンプレミスと呼ぶようになりました。

クラウドとオンプレミスの大きな違いはコスト面と運用の手軽さなどです。たとえば、グループウェアや会計ソフト、営業支援ソフトなどの導入にあたって、ソフトのパソコンへのインストールや、複数の社員で共有して利用するためのサーバーやネットワークのインフラの構築を、オンプレミスで自社が全て行うと初期コストや運営コストもかかります。しかし、その部分にクラウドサービスを利用すると、このコストは不要となります。ただ、クラウドでは基本的にシステムやリソースを他社と共有することになりますから、自社の運用に合わせたカスタマイズや、既存のオンプレミスのシステムとの連携は困難となります。また、セキュリティの高さについても、オンプレミスのほうが勝っているとも考えられます。

また、クラウドとオンプレミス両方のメリットを利用して、システムはオンプレミスでデータはクラウドで保存するなど、オンプレミスとクラウドを組み合わせたハイブリッドクラウドもあります。上記でご紹介したオンプレミス型のプライベートクラウドは、よりオンプレミスに近い形となりますから、オンプレミスかクラウドかを単純に比較するのではなく、「このサービスで何を実現したいのか」「セキュリティ面はどの程度確保したいのか」「コストはどれくらい掛けられるのか」など、運用と実現したい環境などもう一歩踏み込んだ比較も必要です。

企業のクラウド導入メリット

冒頭で引用した総務省の白書では、クラウドサービスを利用しない理由として22.5%が「メリットがわからない、判断できない」と回答しています。そこで、企業でクラウドサービスを導入するメリットを整理しておきます。メリットには、以下のものがあります。

  • サーバーなど物理的なシステム機器を購入する必要がなく、初期コストや運用コストが節約できる。
  • ソフトのパソコンへのインストールが不要なため、すぐに使い始められる利便性がある。
  • メンテナンスやアップデート、障害時の対応を自分でする必要がない。
  • 情報漏えいに対するセキュリティが比較的高い。(ただし、金融関係や個人情報を取り扱う機密性の高い商品を扱う企業にとってのセキュリティを保障するものではない)
  • 汎用性があり機器を選ばない。
  • インターネット接続環境があれば、どこからでも作業ができる。
  • 事業継続計画BCPにつながる。
  • 会計システムの場合などでは、社外の税理士とも情報を共有できる。

どう使いたいのかを考えたクラウドの利用が大切

個人でのクラウド利用に比べて企業でのクラウド導入は遅れていますが、クラウドにもいろいろな種類があります。今後はそれらを組み合わせたクラウドサービスを利用する企業が増えそうです。クラウドとオンプレミスの違いを整理してクラウドのメリットを見直し、クラウドの導入を検討してはいかがでしょうか。

参考: