存続と成長に欠かせないビジネスプロセスの管理は、もはや大手企業だけの話ではない

存続と成長に欠かせないビジネスプロセスの管理は、もはや大手企業だけの話ではない

業務効率化

いまが変化の時代であることを意識していないビジネスマンや経営者はいないでしょう。製品やサービスなどの商材を開発する際や、消費者や得意先のニーズの変化を知ることの重要性は理解されていると思います。しかし一方で、ビジネスそのものや会社組織の改善・改革を早急に進めなければならないという認識は甘いのではないでしょうか。変化の時代に適応していくためにも、いまあなたの会社のビジネスの方法そのものを改善することが先決なのかもしれません。今回は、その手法のひとつである「ビジネスプロセス管理(BPM)」をご紹介しましょう。

なぜ“ビジネスそのものを管理”しなければならないのか

管理の対象は、これまでは社員の仕事についてでした。「ビジネス自体を管理する」とはどういうことでしょうか。求められる背景についてまず考えてみましょう。

ビジネス環境の変化

「モノからコトへの消費の変化」とはよく耳にすることです。つまり所有するための消費から体験や経験を積むための消費へと変化したということです。こうした消費傾向の変化は買うスタイルをも変えてきています。たとえば、かつてはステイタスだった車も、現代の若者の消費心理には響かなくなりました。情報取得と言えば書籍や雑誌からであったのが、スマートフォンの登場でネットメディアに替わり、買い物も実店舗ではなくネット通販で済ませる人が増えてきました。これらがビジネス環境の変化です。対消費者のビジネスのみにかかわらず、それらの会社に原材料やサービスを提供している企業も、何らかの影響を受けることになります。言い換えれば、大口の顧客を抱えて、大きな資本を動かしている大手企業だけが消費傾向の変化の影響を受けるのではなく、今やどのビジネスも、どの規模の企業も、環境の変化にさらされているのです。

自社のビジネスについて知る重要性

そこでビジネスも環境に合わせて変化・適合する必要があるわけです。しかし、それは理解していても、どこから着手すればいいのか、何をどうすれば時代に合った会社になれるのか、解を得るのはとても難しいことです。一方で少子高齢化によるマーケットの縮小、AIなどの普及によるテクノロジーの変化も追い打ちをかけています。変化する市場の中で自社のポジションを知り、変化に対応していかなければ、業績の向上どころか生き残ることすらできなくなる恐れがあります。まずは自社のビジネスそのものを第三者の目で評価し、管理・統制していかなければなりません。そこで求められるのがビジネスプロセス管理なのです。

ビジネスプロセス管理とは

では、具体的にビジネスプロセス管理とはどのようなものなのでしょうか。

ビジネスプロセス管理の定義

一般社団法人日本ビジネスプロセス・マネジメント協会ではビシネスプロセス管理の定義について「一定ではなく、定義そのものも変化している」としています。ビジネス環境が変化する中、ビジネスプロセス管理の定義や手法も適合して変わっていかなければならないということです。その主旨は「ビジネスプロセスのとらえ方と継続的改革能力の育成と維持」と解釈できそうです。

ビジネスプロセス管理の範囲

近年は情報漏えいなどの不祥事やブラック企業という悪評なども企業価値を下げる要因となるため、ビジネスのみならずコンプライアンスも含めたビジネスプロセスの改善が求められています。同協会の定義にも「企業活動の俊敏性・業績・コンプライアンスの改善といった経営目標の改善に向けて、ビジネスプロセスの改善サイクルを、人とITにより迅速に実現する新しいマネジメントの考え方・領域」とあります。変化への対応を常に早める取り組みとも言えます。

ビジネスプロセス管理(BPM)を行うことで得られるメリット

では具体的にビジネスプロセス管理のメリットと、その効果について見てみましょう。

BPMとはPDCAサイクルをビジネスに当てはめること

PDCA(Plan、Do、Check、Act)は耳なじみのある方も多いと思います。部署やチーム、プロジェクト単位で活用されてきた業務管理の手法のひとつです。ビジネス全体に当てはめてみると、次のように表すことができるでしょう。

  • Plan:ビジネスプロセスの可視化と設計
  • Do:プロセスをチームで共有化・実施
  • Check:状況把握と問題発見
  • Act:実績をデータという客観的な数値で把握し、改善につなげる

ビジネスという大きな枠組みを「目に見える、かたち」にし、関わるすべての部署で共通認識を持つこと、役割分担とタスクをそれぞれ明らかにし、どこが問題か、課題かを探り出し、その改善を実施し、同じ流れでその結果を再確認する。最終的には効果が最大に発揮されるように業務の最適化を図ることと解釈できるでしょう。

硬直化した組織を変化しやすい方向へ

部署や業務単位では日常的に行われているPDCAのような活動も、会社全体、ビジネス全体という巨視的な視点での実施となると、意外と行われてこなかったのが事実ではないでしょうか。BPM導入によるメリットをまとめると次のようになります。

  • ビジネスのボトルネック、不均衡、その是正としての力配分を知ることができる:ビジネス全体の最適化。
  • 会社の課題を知り・全社で共有できる:意思の確認・決定の迅速化。
  • 組織全体が変化に早く対応できる:体制変更、行動の迅速化、その継続性と発展性の維持。
  • ノウハウ等の情報の共有が進む:属人化、ブラックボックス化の是正と強みの結集・再構築。

時代の変化を感じ、そして会社の変革の必要性を痛感している経営層の方も多いと思います。一番難しいのは、その変革をどう進めていくか、なのです。ビジネスプロセスを管理することは、その第一歩という位置づけになります。

ビジネスプロセス管理の導入と運営

ではBPMの実際の導入について考えてみましょう。

ITシステムの活用がポイント

ビジネスの見える化、情報の共有、実施の効果測定のためのデータの取得などはITの技術で実現することになります。ビジネスのプロセスを管理するITシステムを導入することとも換言できます。例えば、これまで個別に働いていたITシステム(例:顧客管理、カスタマーサポート、FSA、ERP等)を連携させることなども含め、システムでビジネス全体のPDCAサイクルを管理することとも言えます。

ビジネスプロセス管理は現場が主役

多くの会社において、情報システム部門がシステム導入の担当部門となるかと思いますが、営業や生産、サービスなど営業の現場がシステム運用の主体だということを忘れてはいけません。システムの導入には現場のスタッフへの十分な説明・教育、マニュアルの整備などが不可欠でしょう。導入に当たってはすべての部署を対象とする方法と一部のプロセス(会計や経費管理、あるいは生産から販売、配送まで等)から着手する方法があります。

着地点・目的を考えて導入を開始

業務や目的別に、またこれまで構築してきた既存のシステム等との関連に配慮して導入していくことが重要です。したがって、どういうシステムであるべきか、どこまで導入すべきかという基準は会社により異なると考えておくべきでしょう。経営層から社員に至るまで、それらを認識したうえで、どのような在り方か、どのような導入スタイルになるかを考えることになります。また将来のシステムの拡大(他の部署、協力会社等を含む)や、状況変化に対応できるフレキシブルさなどを確保しながら進めることも忘れないようにしたいものです。

BPMは企業戦略に直結

BPMは管理のための仕組みではありますが、管理した結果を戦略に活かし、実際に実績を挙げていくことが最終目的となります。言い換えれば、BPM導入の目的は、業務の効率化(速度アップ、コストダウン)、経営資産の有効活用(付加価値化)、ライバルとの競争(差別化)などを着実に進め、会社のビジネス上での強みを獲得し、成長することにあるのです。その目的から逆算してビジネスプロセスで何を管理するかを考えることが肝要です。

 

参考: