営業勝率を確実に高める「案件管理ツール」の選び方

営業勝率を確実に高める「案件管理ツール」の選び方

業務効率化

どんな営業でも、確実性の高い相手に、その望むものを着実に早く提供することが、商談成功の確率を高めます。それはだれでもがわかっていますが、ついついわかりやすいもの、気になったもの、相手から催促されたもの、金額の大きいものなどを優先してしまい、必ずしも合理的な判断にもとづいた行動ができているとは限りません。あるいはこのような状態が、いまのあなたの会社の営業スタイルの定番なのかもしれません。そうであれば、逆にこれらを改善することで売り上げのベースアップが図れる可能性もあるわけです。その手段として欠かせない「案件管理ツール」について見てみましょう。

逸注の原因を考えると

わかりやすくするために、営業の失敗要因から見てみましょう。

管理の杜撰(ずさん)さ

ライバルが圧倒的な強みを持っており、その結果として逸注したのならまだあきらめがつくでしょう。しかしそのような強大な価格優位性、ブランド力、品質の差のために敗れるケースばかりとは限りません。基本的な提案のタイミングが遅れたり、営業と製造やサービスとの連携が不十分だったり、協力メンバーとの意識の統一が不足していたりといった、内部要因で受注を逃すことも多いのではないでしょうか。見積もる段階での仕様書の理解が現業部門に不足していて、割高になってしまったために受注を逃すことは十分にあり得ます。つまり営業案件の管理そのものの不手際によるところが大きいと認識するべきではないでしょうか。

優秀な営業マンは個人の手腕

どんな会社でもトップクラスから中堅、そしてあまり成績が振るわないグループへと営業成績の序列ができているものです。優秀な営業マンは経験で磨いた感覚や、独自の案件管理の方法を持っていることが多いです。この事実から考えるべきことは2つです。

  • 優秀な営業マンのノウハウを共有することで、営業部全体の底上げを考える。
  • 優秀な営業マンという個人のパフォーマンスに頼らず、チーム力で営業の業績を高める。

優秀な営業マンが他社へ転職してしまう痛手は相当なものです。一方で、飛びぬけて優秀でなくても、粒ぞろいの営業マンが力を結集したほうが、売り上げの安定性が図れることになります。

案件管理の必要性

では案件管理の必要性の背景とその効果は何が考えられるのでしょうか。

営業環境の改善とリソースの有効活用を図る

それぞれの会社が営業の場面でしのぎを削る現代は、わずかな努力の差で明暗がわかれるものです。「気合」や「情緒営業(忠誠心の提示や泣き落とし)」の時代は終わりました。売り上げを上げやすい仕組みを営業マンに提供し、機能面と精神面から士気を向上させる必要があるのです。リソースの有効活用が必要な中堅中小企業ほど、各営業マンを支援したり、実際の商材の提供を担当したりする現業部門の力を結集して商談に臨む必要があります。

士気の向上、新人の即戦力化

「足を引っぱる」という状況は、チームの中に成績が振るわない営業マンがいたり、業務の重要性を理解できず、非協力的なスタッフがいたりする場合に現れます。また、チーム(営業から現業まで)が不ぞろいだと全体の士気の低下につながる危険があります。営業案件についてだれもが理解でき、情報共有が図れ、次に何をすべきかを知ることができる仕組みが必要なわけです。これは新人営業の戦力化にも有効です。また異動のときなども引き継ぎが容易になり、営業先が1人の営業マンに固定してしまう属人化も避けられる効果が得られます。

案件管理の方法

それでは、案件管理をどのようにするか、具体的な方法について考えてみましょう。

エクセルによる案件管理の限界

ホワイトボードに案件一覧を書き出したり、エクセルで情報を更新・共有したり、朝礼・夕礼のときに進ちょくを確認したり、定期的な会議で関係者がすり合わせを行ったりするのが一般的です。とくに使い慣れたエクセルによる管理は、どの会社でも、また個人でも自主的に実施していることが多いと思われます。しかし次のような限界に注意しなければなりません。

  • 更新がおざなりになりやすく、人によって表現や鮮度、詳細度がまちまちになる。
  • 毎回表を見て訪問先やタスクに優先順位を自分でつけるなどの作業が必要。
  • スタッフや関連部署が顧客に接してもその結果がリアルタイムに反映されている保障がない。
  • エクセル上に活動記録があっても、その感触や有効情報を得るには直接その担当者に確認しなければつかめないことが多い(あくまでも目安の情報の記録にとどまる)。

いかがでしょうか。営業マンに限らず、支援する立場のスタッフでも、このような使いづらさを感じたことがあるのではないでしょうか。ひとつの案件管理だけでも大変なのに、複数あれば、なおのこと運用とその効果を得るのは難しいはずです。苦労してエクセルで管理しても、重要な顧客をライバルに奪われてしまう結果になるかもしれません。

注目される「案件管理ツール」と選び方

そこで考えたいのが、案件管理の専用ツールです。

タスク忘れなどでアラート機能も

自分はしっかりしているつもりでも、支援する部署のスタッフが重要なタスクを忘れていないかなどが気になり、リマインド(思い出させる)メールを送ることなどもしばしばあるでしょう。案件管理ツールがあれば、アラート等の設定でその必要がなくなります。その機能の一例を示すと次のようになります。

  • 商談情報管理/ランク付け:営業先やタスクの優先順位を表示。
  • 案件のピックアップ能力:条件を検索し案件ごとの状態を個別に検出。
  • 放置等の際のアラート機能:煩雑な業務でも失念による致命的なミスを撲滅。
  • アプローチ計画とその記録:計画的な営業活動とその記録からの分析。
  • 工数の管理:進捗の状況と残りの工数、必要なリソースやタスクを把握。

このようなツールを使うことで効果的でかつ迅速な営業活動が実現できることになります。また新人とベテランとの差、個人の資質による業務達成のばらつきなども是正できることになります。情報共有、案件別の深掘り、チーム員のスケジュールの確認、各人のミッションの明確化とその実行管理までが行えます。営業マンから支援スタッフ、それらの管理者までが情報を利用でき、仕掛の商談の見積もり金額から見込みの売上高の把握など、経営に役立つ情報なども得られることになります。

案件管理ツールの発展性

案件管理ツールは、SFA(営業支援システム:予算等の目標達成率、進ちょく管理、営業活動の記録・報告を自動的に管理)の機能の一部、CRM(顧客関係性マネジメント:日々発生する顧客情報を蓄積・管理し、顧客の見える化、適切な対応を支援)との連携が強いもの、というようにその成り立ちを大きく2つに分けることができます。導入の際は、自社にとってどちらが重要なのか、適しているのかを把握しておく必要があります。単なる案件の管理ではなく全社営業の強化や、顧客対応の高度化によるロイヤルカスタマーの獲得など、先行きを見越した導入が重要です。単なるエクセルによる予定管理とは大きくことなる点が、この発展性であると言えます。

クラウド(SaaS)による導入のしやすさ

その昔、システムの導入は基本的には戻り道のない世界でした。導入にはコストがかかり、運営のノウハウも考えると、システムの変更はリスク、コスト、時間的な損失が大きかったからです。しかしクラウド(SaaS)がそのような概念を払しょくしました。気軽にテスト導入の位置づけで案件管理システムを特定の営業グループから導入し、その効果を診断したり導入や利用にあたっての課題を抽出したりすることなどから始められます。フレキシブルに変更できる点もメリットとなるでしょう。

営業スタッフや商材の優劣だけでは決まらない時代

「機能が優れている」「品質が良い」「優秀な営業スタッフがいる」「充実したサービス体制がある」ということを強みとする会社は多いと思います。しかしそれらが横並びの状態になれば、次に差がつくのは、それらの会社の強みを、どう結集して効果的に、かつ迅速に顧客に提供できるかです。ITなどのシステムを使い、効率よく営業管理することは最低限必要な時代になったと言えるのではないでしょうか。

 

参考: