社内情報の有効利用がビジネスの成否を分ける、クラウドで共有化するポイント

社内情報の有効利用がビジネスの成否を分ける、クラウドで共有化するポイント

クラウド活用

例えば、同じクライアントに2人の営業が別の日に訪問し、それぞれの提案の内容が異なっていたらどうでしょう。クライアントには「社内で情報共有もできていないのか」といった悪い印象を与えてしまうかもしれません。別の事例で、担当営業にクレームを入れた際に、サービススタッフが取引状況や利用状況を踏まえたうえですぐに、そして、的確に対応してくれたらどうでしょう。スムーズなクレーム対応よってクライアントからの評価が上がることもあるかもしれません。この2つの事例における印象の違いこそが、情報共有の違いです。しかし、重要性は認識していても情報共有にどのように取り組めばいいのかわからないという会社も多いのではないでしょうか。今回はクラウドを使った情報共有の最新事情についてご紹介します。

情報共有の重要性の再認識

その前に、情報共有とはなにかについてもう一度考えてみましょう。

そもそも情報共有とは

かつては経営方針や売上目標、業務の進捗情報などが情報共有の対象でした。朝礼や定期的な会議、通達などで伝えられていた内容です。しかし時代が変わり、共有すべき対象やその方法も変わってきています。

情報共有の新しい指標は次のようなものです。

  • 情報がリアルタイムに伝わってくる
  • 情報を相互に交換できる
  • 情報を容易に拡散・展開できる
  • その情報で次の行動ややるべき課題が見えてくる
  • その情報にノウハウや新しいアイデア、解決のヒントがある

例えば、顧客のニーズを営業からサービス担当者までが共有できると、営業からアフターサービスまで均質なサービスが提供できます。互いのスケジュールがリアルタイムに把握できていれば、不測の事態の対応も早くなります。また、ベテラン社員の行動を知ることができれば、若手社員のノウハウ習得の機会になります。

これらの情報共有は朝礼や会議、通達では実現しにくいものですが、クラウドの力を借りることでよりタイムリーに実現できるようになります。

情報共有ができていないことによるデメリット

では、情報共有できないことのビジネス上の問題点について考えてみましょう。冒頭のような顧客対応の遅れはわかりやすい例です。生産技術の向上などにより、商品やサービスでの差別化が難しくなってきている現在、このような対応の遅れこそが顧客を奪われてしまう弱点になりかねません。

また、情報共有の遅れは企業の成長の鈍化、問題解決の遅れにもつながります。例えば、社員教育という視点で見てみましょう。ベテラン社員がベテランである理由は、長い経験で蓄積された情報やノウハウがあるからです。今までの社員育成の考え方では、新人にはベテランになるまで仕事の時間を積んでもらうというやり方が主流でした。しかし、うまく情報やノウハウを共有することができれば、一人の新人社員がベテラン社員に成長するまでの時間を短縮することにつながるでしょう。ベテラン社員が持つ情報やノウハウをうまく共有し、新人の教育に活かすことができれば、戦力となるベテラン社員に加え、即戦力になりえる新しい力や新たな視点を活かすることができるわけです。

情報共有ができるツール

それでは情報共有ができるツールについてみてみましょう。以下のように、さまざまなツールがあります。

オンラインストレージ

例えば、社内の別部署が共同で1つの企画書を作成する。というケースを考えてみましょう。この時に、2つの部署間でメールなどを用いて企画書のファイルをやりとりしていたのでは、手を加えるたびにファイルを送付する必要があり、時間的なロスが生まれることになります。さらにコピーを作成した場合など両部署に同様の企画書が存在する状況になり、送信ミスや取り違い、最新のファイルがどちらかわからなくなり、バージョン管理に混乱が生じるといった事態に陥ることもあるでしょう。

社内での共有であればなんとか対応できたとしても、これが他社との共同企画だった場合にはどうでしょうか。容易にファイルやデータが共有できない状況の問題やリスクがイメージできるかと思います。

この問題の解決策のひとつが、外部のオンラインストレージの利用です。「オンラインストレージ」とは外部のサーバ内のハードディスクなど記憶領域をレンタルし、ストレージとして利用することができるサービスです。そのストレージへのアクセス権を共有することで、ストレージ内のファイルやデータを共有することができます。このオンラインストレージ内に共有フォルダを作り、アクセス権で管理しておくことで、ファイルやデータのやり取りの手間や時間的なロスの解消や、ファイルやデータのバージョン管理の煩雑化回避を実現でき、共同作業の効率アップが見込めるでしょう。

オンラインストレージの代表的なものとして、以下のものが挙げられます。

Dropbox

2GBまで無料で、友人などを招待すれば最大16GBまで無料で使うことができます。さらに容量を増やしたい場合はDropbox Proがあり、月額1,200円(消費税別)で1TBまで容量を拡大できます。
https://www.dropbox.com/ja/

GoogleDrive

無料で15GBまで利用できます。もともとGoogleドキュメントという同社の文書作成ソフトのデータ保存用のためにスタートしたものであるため、Googleドキュメントで作ったデータは容量無制限で利用できます。
https://www.google.com/intl/ja_ALL/drive/

BOX

無料で10GBまで利用できます。Word、Excel、PDF、AI、EPS、PSD、写真など、120 種類以上のファイルをプレビューできるため、いちいちファイルをダウンロードせずに内容を確認することができます。
https://www.box.com/ja-jp/home

グループウェア/ワークフロー

共同プロジェクトなどで進捗の管理や情報の共有を図るためのソフトウェアがグループウェアです。掲示板を使った通達、参加者のスケジュール管理、文書の共有などをひとつのソフトウェアで実現できるため、メールのみで情報やファイル、データをやりとりしている場合よりもはるかに効率良く作業を進めることができます。

このグループウェアにはワークフロー機能という、書面による申請を電子上で行う機能を備えたものも少なくありません。この電子申請機能に特化したワークフローソフトウェアもあります。これまでの紙の申請書の回覧と押印では、決裁者の外出や書類の滞留による申請の遅れが発生していましたし、申請が誰で止まっているのかを特定することが難しいことも大きな欠点でした。この申請の流れを電子上で管理することでそれらの問題点を解決したものがワークフロー機能なのです。

グループウェアやワークフローの代表的なものとして、以下のものが挙げられます。

サイボウズ ガルーン

数十名規模から5,000人以上の大企業までをカバーするグループウェアです。メール、チャット、ファイル共有、掲示板、スケジュールなどの基本機能はもちろん、部門、拠点、プロジェクトなどのカテゴリ別に、社内の情報を集約できるポータル機能が特長です。
https://garoon.cybozu.co.jp/

Chatter

SNSに近いユーザーインターフェースを持ったChatterは、チャットベースで社内の情報共有を行えるグループウェアです。部署別、プロジェクト別などでグループを作成でき、ディスカッション、アンケート、ナレッジ共有、Q&Aなど、過去の事例やノウハウを共有しながらプロジェクトを進めるための機能が充実しています。
https://www.salesforce.com/jp/products/chatter/overview/

ジョブカンワークフロー

1ユーザー300円から利用できるワークフローシステムです。おすすめのポイントは同じシリーズで経費精算、勤怠管理、採用管理、労務管理、給与計算システムがあり、それぞれと連携を取って業務効率がアップできることです。
https://wf.jobcan.ne.jp/

文書の電子化と管理システム

多くの場合、契約書の原本は法務部で保管されていることでしょう。しかし、新しい見積作成時の単価合わせなどに参照するためにほかの部署でも契約書が必要になることがあります。こんな時に手元に複写がないと毎回法務部に問い合わせることになり、余計な手間がかかってしまいます。このような場合も書類をスキャンしてPDF化すれば関係者で共有しやすくなります。また「いつ、誰が、どのような目的で作ったものか」などの情報も加えれば、文書資産の有効活用が進みます。電子化することで改ざんや複写の防止、アクセス管理ができるようになるので、セキュリティ上の課題もクリアできます。

文書の電子化・管理システムの代表的なものとして、以下のものが挙げられます。

活文 Contents Lifecycle Manager

文書管理システムとしての基本的な機能はもちろんのこと、Windowsの操作ができる人であれば迷わず使える、使いやすい操作画面(ユーザーインターフェース)が用意されています。使い方を簡単に覚えることができるために、多くの人に活用いただけるようになっています。
http://www.hitachi-solutions.co.jp/katsubun/sp/clm/

FUJITSU ビジネスアプリケーション Documal

クラウドサービスの一種である「SaaS」という形式でサービスを提供しています。規定集から個人の書類まで、版数・承認記録などの要件にそって適切に管理することができます。
http://www.fujitsu.com/jp/services/application-services/information-management/ecm/e-document/documal/

Ridoc Smart Navigator V2

文書の版管理、全文検索、アーカイブなどの機能が利用できます。Webブラウザ版も用意されていて、導入、管理コストを最小限に抑えつつ、面倒な手間のかからない簡単操作を実現しています。
https://www.ricoh.co.jp/ridoc_ds/rds/rsn2/

チャット

チャットの既読通知機能や画像や動画を送れる機能は、まさに現代ビジネスのテンポにマッチしています。また、メールでメンバー全員と意見の交換、共有を行うことは困難ですが、チャットであれば意見の共有、交換をスムーズに行なうことができます。また、全員の時間を合わせ、会議室に集まって会議を行わなくても、チャットルーム内で会議を行えるため、意見交換の時間的、物理的な自由度が高まります。

チャットサービスの代表的なものとして、以下のものが挙げられます。

チャットワーク

チャットやタスク管理ができるツールです。スマートフォンのアプリを利用すると、自分宛のメッセージがプッシュ通知で届きます。
https://go.chatwork.com/ja/

Slack

チャットやビデオ通話ができるツールです。大企業向けのエンタープライズ版もあります。
https://slack.com/intl/ja-jp

LINE WORKS

スマートフォンのメッセージアプリ「LINE」と同様の感覚で利用できるチャットツールです。Windowsのパソコンにも対応しています。
https://line.worksmobile.com/jp/

CRM、SFAなどの顧客・案件管理システム

顧客からの問い合わせ履歴、営業やサービスの記録、そして、ダイレクトメールの発送記録などを一元管理するのがCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネージメント)やSFA(営業活動支援システム)です。また、見込み案件の進捗管理を見える化し、対応遅れなどを減らすのが案件管理システムです。これらは情報共有を進めるための仕組みで、ITで管理を容易にし、ヒューマンエラーの削減や業務効率化につながります。

顧客・案件管理システムの代表的なものとして、以下のものが挙げられます。

Sales Cloud

人口知能によって案件につながりそうな見込み客をスコアリングできるシステムです。受注した案件と失注した案件の違いが分かるため、営業担当者は次のステップが分かります。
https://www.salesforce.com/jp/products/sales-cloud/overview/

Microsoft Dynamics365

営業担当やカスタマー担当が必要な機能を装備したCRMのシステムです。Microsoft Officeとの連携も可能です。
https://dynamics.microsoft.com/ja-jp/

SAP CRM

受注情報やクレーム等、顧客情報を一元管理できるシステムです。強力なアナリティクス(分析)機能を有しています。
https://www.sap.com/japan/products/customer-relationship-management/crm-service.html

クラウドによる情報共有

これらのシステムをすべて自社で購入・構築していたらかなりの資金が必要になってしまいます。そこで注目したいのが、これらのシステムを包括したクラウドによる情報共有ツールです。

多くのツールがクラウドで利用可能に

紹介したツールにも多くの種類があり、それぞれ特徴や売りとなる機能が異なっています。そんな中から、会社の実情に合ったものをみつけるのはなかなか大変な作業です。かといって、それぞれ自社専用のソフトを一から開発していたのでは、いくら資金があっても足りません。クラウドによる導入であれば、ソフトを開発したり、あるいは買い切り型のソフトを購入したりするよりも安価、かつ容易に導入することができるため「良さそうなものをとりあえず試してみる」ということも可能です。まずは、目的や導入部署を限定するなどして、利用をはじめてみることができるのです。

クラウド情報共有ツール導入のポイント

情報を共有しても効果が現れなければ意味がありません。導入の目標として、次のことを念頭に置いて検討することをお勧めします。

  • 効率化:必要な個所に必要なサービスを導入し、情報共有することで作業を削減でき、時間等の短縮が図れるサービスを選択する。
  • 営業効果:情報共有することで営業実績に反映するような運用が可能なサービスを選択する。
  • セキュリティ:紛失や改ざんのリスクが高い書類などを、ヒューマンエラーや悪意の行為から守れるだけのセキュリティが確保されているものを選択する。

クラウドも適材適所で

情報共有ができるクラウドのツールは、かなりの種類があります。すべてを一気に導入するのではなく、使いこなして効果を得ることを優先し、会社の現状と照らし合わせて導入することが大切です。宝の持ち腐れにならないよう、適材適所、必要度・緊急度の高いものからサービスや機能を選択するようするのがポイントです。

参考: