失敗しないクラウドの導入とは?導入のチェックポイント

失敗しないクラウドの導入とは?導入のチェックポイント

クラウド活用

さまざまなシステムのクラウド化が進んでいます。メールやストレージはもちろん、ERP(統合基幹業務システム)、CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネージメント)、SFA(営業活動支援システム)のように、企業が独自にシステムを構築することが多いものについても、クラウド環境で利用できるサービスが増えてきています。

クラウドサービスによって最新のシステムや機能を利用できるというメリットはありますが、自社に適したクラウドサービスを十分に検討せず導入した結果、失敗する会社が多いのも事実。今回は失敗せずクラウドサービスを導入するためのチェックポイントを紹介します。

クラウドサービスを導入する理由

総務省の調査(平成29年版 情報通信白書)によると、クラウドを利用する割合は2015年から増加しています。2016年に、一部でもクラウドサービスを利用していると回答した企業の割合は46.9%と全体の半数近くに達しました。

利用サービスの内訳は、「電子メール」51.7%、「ファイル保管・データ共有」50.7%、「サーバ利用」46.7%、「社内情報共有・ポータル」38.4%の順で高い割合を示しています。

利用の理由を見ると「資産、保守体制を社内に持つ必要がないから」40.9%、「どこでもサービスを利用できるから」36.5%、「安定運用、可用性が高くなるから(アベイラビリティ)」29.6%が高い割合で回答されています。

クラウドは、社外のサービス提供会社がメンテナンスなど維持管理を行うため、社内で保守体制を持つ必要がありません。自社でシステムを開発したりアプリケーションを購入したりする必要がなくなるため、導入時の費用や人的負担が軽減できるのです。また、携帯端末などを用いてインターネットでアクセスできるため、働き方改革が進む中、働く場所にとらわれずに利用できるということからも価値を見出す企業が増えています。

クラウドサービス導入の課題

上記の理由から、クラウドサービスを導入する企業は増えていますが、同時に課題も見えてきました。

管理の複雑化

サーバやストレージ、ネットワークなど、機能が増えるごとに管理は複雑になります。そのため担当要員を社内に置くことが必要になりますが、とくに中小企業ではシステム管理の人員が十分に用意できるとは限りません。

また、既存のシステムに対応させた社内体制があり、その運用にスタッフが慣れている状況では、新たにクラウドサービスを導入して、システムを変更したり、データを移行したりすることは容易ではありません。

コストがかかる

また、クラウドサービスは導入時のコストを安価に抑えることが可能ですが、長く利用することで運用コストがかかる、通信費用がかさむ、既存システムの改修にコストがかかることがあります。運用費を含むトータルの費用を確認しないと、結果的に高くついてしまうことになるかもしれません。

安全面に不安が残る

データを外部に保管するということに対し、セキュリティ上の不安を感じる企業も多いようです。社内規定や業界のルールとして、自社内での管理を基本にしている場合などは、組織の規定から見直さなければならず、対応に苦慮する場合があります。

よくある失敗例

よくある失敗例としては、以下のようなものが挙げられます。

  1. 導入したものの、各部署での対応が統一できておらず、十分に活用できていない
  2. 目先の導入コストの安さにとらわれ、運営コストなどトータルの費用がかえって高くついてしまった
  3. 導入後の、サービス提供会社のサポートが不十分だった

クラウドサービス導入のチェックポイント

導入の失敗を避けるためには、導入前に、自社に必要な機能、予算やセキュリティ、サービス提供会社など確認・検討すべきことが数多くあります。
独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)では、「中小企業のためのクラウドサービス安全利用の手引き」を策定し、確認項目のチェックシートを提供しています。下記の3つのカテゴリーで全14項目を掲載しているので、導入前に確認してみましょう。

  1. 利用範囲の確認:「クラウドサービスでどの業務、どの情報を扱うかを検討し、業務の切り分けや運用ルールの設定を行いましたか?」など、自社の条件や希望とサービスの適合性を確認する4項目
  2. 利用準備の確認:「クラウドサービスの特徴を理解した担当者を社内に確保しましたか?」など、サービス導入に伴い、自社が対応できる準備を行っているかの4項目
  3. サービス提供条件等の確認:「クラウドサービスを提供する事業者は信頼できる事業者ですか?」など、サービス提供会社に対する確認6項目

また、導入した後に、社内でどのようにスタートさせていくかについてもチェックポイントがあります。以下の4つのポイントを参考にしながら、スムーズな導入を目指しましょう。

1. 担当者を配置する

サービスを利用する現場では、常に予想していないことが起きたり、即時の対応が必要となったりします。サービスを効果的に利用するためには、不慣れな社員に対してもサービスを利用するうえでの注意点や活用方法を説明できる担当者を各部署に配置することが望ましいでしょう。

2. アクセス権限を設定する

情報セキュリティ上の観点から、導入したらすぐに社員のアクセス権限を設定しましょう。これを忘れると、会社の機密情報に社員全員がアクセスできるという事態になりかねません。

3. まずは特定部署でスモールスタートする

導入前にいくら確認や検討を重ねたと思っても、実際に利用を始めると、思いもかけないことが起こるものです。一度に全社でスタートさせてしまうと、トラブルによる被害も甚大なものになってしまいます。まずは特定の部署でスモールスタートし、知識と経験を重ねて全社への利用に備えましょう。

4. 使いやすい機能から始める

いきなりすべての機能を活用することから始めると、機能が複雑すぎて、不慣れな社員にクラウドサービスへの苦手意識が生まれてしまう恐れもあります。まず必要度の高い機能から始め、クラウドサービスに慣れてから徐々にほかの機能へ広げていくと、スムーズに展開できます。

自社との適合性を確認することが大切

今後も広がっていくと見られるクラウドサービスは、その種類や業者も多種多様です。導入の目的を明確にしたうえで、チェックポイントを活用し、十分に自社との適合性を確認することが成功への一歩です。うまくクラウドサービスを活用し会社の生産性を上げることにつなげる取り組みへと広げていきましょう。

参考: