テレワークの導入効果と、導入を推進するテレワーク助成金について

テレワークの導入効果と、導入を推進するテレワーク助成金について

働き方改革

安倍内閣の推進する働き方改革。その手法のひとつに「テレワーク」があります。オフィス以外の自宅やサテライトオフィスで仕事をすることで、通勤時間の有効活用からワークライフバランスの改善が期待されます。その推進にあたり、政府から助成金が出ることがあります。申請や承認を受ける際の注意点についてご紹介しましょう。

テレワークの実際

テレワークという言葉をよく耳にするようになりました。実際どの程度の企業が実施しているのでしょうか。

テレワークの導入率

総務省の「平成28年 通信利用動向調査」によると、企業のテレワークの導入率は13.3%、導入予定とする企業は3.3%で合わせて16.6%です。一方、テレワークを導入していない企業の74.2%が未導入の理由として「適した仕事がないから」としています。つまり、業種や職種によりテレワークが合わないケースもあるということが伺えます。テレワークの導入を考える前に、自社の業態において、どういう作業に導入できるのかを具体的に把握することが大切です。

テレワークの効果

では、テレワークを導入した結果をみてみましょう。導入企業の86.1%が「効果あり」としているので、仕事内容と合えば導入価値は高そうです。テレワーク導入企業の労働生産性(同調査の回答企業の<営業利益+人件費+減価償却費)÷従業員数>)は、未導入企業の1.6倍という結果もあります。最初から、テレワークは合わない、関係ないと即断せず、部署や業務内容ごとに考え、テレワークによって、現状の課題が改善できる可能性があるならテスト運用からはじめてみてはどうでしょうか。

導入によるおもな効果は以下の通りです。

  • 通勤や移動時間の仕事への活用(往復2〜3時間は午前中の仕事時間<9時~12時>と同じ)
  • テレワーカーの増加によるオフィスコストの縮小(オフィス賃料、電気代、空調費等の削減)
  • ワークライフバランスの確保による社員のモチベーションアップ(個人の時間活用の有効化)

この他、間接的には通勤ラッシュの緩和などが期待されています。

テレワーク助成金「テレワークコース」

さて、さらに耳よりな情報として、テレワーク導入企業に対する国や自治体の支援についてご紹介しましょう。

職場意識改善助成金(テレワークコース)の目的

厚生労働省が管轄する「職場意識改善助成金」が代表的ですが、所定外労働時間の削減や有給休暇消化促進のために実施される施策などの費用の一部を助成するものです。同助成金には「職場環境改善コース」や「勤務間インターバル導入コース」などいくつかのコースがあり、その中に「テレワークコース」があります。本コースは仕事と生活の調整・調和(ワークライフバランス)を目的とし、在宅やサテライトオフィスでの仕事を推進するものです。
職場意識改善助成金(テレワークコース)の詳細は、下記ページよりご覧いただけます。(2019年度分の公募期間は平成29年12月1日まででした)
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/jikan/syokubaisikitelework.html

職場意識改善助成金(テレワークコース)の助成内容

助成金を受けられるのは労働者災害補償保険への加入しているほか、以下の条件に該当する中小の企業です。テレワークなどの小規模企業での導入の遅れを懸念した国の施策とも理解できます。

  • 小売業(飲食店を含む):資本金5,000万円以下、常時雇用労働者数50人以下
  • サービス業:資本金5,000万円以下、常時雇用労働者数100人以下
  • 卸売業:資本金1億円以下、常時雇用労働者数100人以下
  • その他業種:資本金3億円以下、常時雇用労働者数300人以下

職場意識改善助成金(テレワークコース)、申請から助成金支給までの実際

新規のテレワーク導入のみならずテスト導入も対象となり、導入後、テレワーカーを2倍に増員する場合は2回まで受給が可能である点も魅力です。

助成対象は「テレワーク通信機器の導入と運用」その「保守サポート」「クラウドサービスの利用」、社労士費用などのかかる「就業規則・労使協定等の作成や変更」、導入コンサルタントの利用や研修費用も対象となります。

ただ、注意点として、パソコンやスマートフォン、タブレットパソコンなどの購入費は助成の対象外です。

評価期間は1カ月から6カ月の間で申請者が選択でき、その間の評価で達成と未達成が決まり、結果で支給額が異なります。達成で社員1人当たり上限額15万円、未達成でも上限額10万円。1企業当たりでの上限は達成すると150万円、未達成の場合は100万円と定められています。

その評価軸は、厚生労働省の提供する「成果目標の達成状況に関する集計表」によると、各社員の有給休暇の取得日数と所定外労働時間の記録で判定される仕組みであるとわかります。

その他のテレワーク助成金

厚生労働省の「職場意識改善助成金(テレワークコース)」以外にもいくつか助成金があります。

ふるさとテレワーク推進事業

総務省の管轄で、地方でも都心部と同じように仕事が請けられるような環境を目指し、地方の雇用増進や、都心部から故郷へのUターンワーカーを支援する仕組みです。

こちらは、厚生労働省の「職場意識改善助成金(テレワークコース)」と異なります。企業と自治体が連携して、地方創生やUターンに向けたテレワークモデルを検討することで、その費用の一部を国が補助するというものです。平成30年の予算は4億2,000万円となっています。
ふるさとテレワーク推進事業の詳細は、下記ページよりご覧いただけます。
https://www.furusato-telework.jp/

テレワーク導入に係る助成金(東京都の場合)

東京都と東京しごと財団が連携して行っているのが、女性が働きやすい社内環境整備として用意されたのが「女性の活躍推進等職場環境整備助成金」です。

在宅勤務」「モバイルワーク」「サテライトオフィス」を推進しています。厚生労働省の「職場意識改善助成金(テレワークコース)」に近い内容です。概要は次のようになります。

  • 2名以上の労働者を雇用している東京都の中小企業
  • テレワーク(在宅勤務、モバイル勤務、リモートワーク等)実現のための環境の整備が対象
  • 対象はモバイル端末、ネットワークの整備費用、システム構築費、関連ソフト利用料、それらの委託費やコンサルティング費
  • 限度額250万円(事業費に占める助成金の率は2分の1まで)

「女性の活躍推進等職場環境整備助成金」の詳細は、下記ページよりご覧いただけます。(平成29年度の申請受付締切は、平成30年3月30日まででした)
http://www.shigotozaidan.jp/koyo-kankyo/joseikin/joseikatsuyaku.html

テレワーク助成金利用の際には相談窓口へ

さて、利用価値のあるテレワークに関する助成金ですが、テレワークの定義やその導入効果測定などで留意すべき点を確認しておきましょう。

事前に相談を

まずテレワークの定義が難しいため、申請者の独自の判断で始める施策がテレワークの助成対象と見なすのは避けたいものです。機器の購入や外部業者への発注の前に、申請要件の確認や書類の入手などの他、評価方法等を確認しておきましょう。

また、助成金が出るまでの期間は自己資金による運営となるので、大切な事業の資金繰りに影響がないように資金調達時期も確認しておくことが必要です。また、その導入効果としての働き方の改善や事業成果の向上ばかりに気を取られず、情報管理(セキュリティ対策やその教育)への配慮も忘れないようにしましょう。

主な問合わせ窓口

実施を検討している企業だけではなく、将来の導入の検討も合わせ、情報を知っておくだけでも意味があります。以下の機関がその相談窓口として機能していますので、まずは話を聞くことからはじめてみましょう。

テレワークで収益力、ライフワークバランスを同時に実現する会社に

働き方改革はワークライフバランスの改善のみならず、企業の業務の効率化を推進し、結果として収益性への反映などが期待できます。現状の業務改善、生産性向上を目指したテレワークについて構想し、その後に助成金の利用を検討するようにしましょう。

もちろん助成金を活用できれば、資金的に余裕をもって取り組むことができますが、助成金の申請条件にあわせるために、自社に適さない改革をしたのでは働き方改革の意味がありません。まずは、自社にあったテレワークの環境を検討することが大切です。

参考: