メールのクラウド化を検討している企業が事前に知っておくべきポイント

メールのクラウド化を検討している企業が事前に知っておくべきポイント

クラウド活用

あらゆるサービスがクラウド化されていく現代において、最も早くその波が訪れたものの1つが、メールサービスです。なぜメールをクラウド化する必要があるのでしょうか。また、それによってどのような効果があるのでしょうか。メールをクラウド化することによるメリットとデメリット、クラウド型のメールサービスを選ぶ際に注意する点などを説明していきます。

クラウドの現状と利用動向

日本国内にはおよそ170万社の法人企業が存在しています。このうち、どの程度の企業がクラウドを利用しているのでしょうか。

総務省の「平成29年版 情報通信白書」によると、2016年にクラウドサービスを利用していると回答した企業は、全体の46.9%となっています。2014年は38.7%、2015年には44.6%で5.9ポイント上昇、2015年から2016年は2.3%上昇と、伸びは少し緩やかになりつつあるものの、数年後には全体の半数に到達することが予測されます。

では、企業はどのような用途にクラウドを活用しているのでしょうか。「クラウドを利用している」と回答した企業のうち、利用しているサービスとして最も多かったのが、クラウドによるメールサービスです。その割合は51.9%と、多くの企業がメールをクラウド上で運用しているという現状が見て取れます。

メールをクラウド化することで何が変わる?

多くの企業がメールをクラウド化している背景には、どのような目的があるのでしょうか。

メールのクラウド化とは

これまでは、自社にメールサーバを設置し、パソコンにメールソフト(メールクライアント)をインストールしてメールをやりとりするという方法が主流でした。この場合、ソフトをインストールしたパソコンでなければメールを利用できません。クラウド化されていないメールとは、このような状態のことをいいます。

一方で、クラウドのメールサーバを利用し、インターネット環境さえあれば世界中どこからでもメールサービスを使うようにすることが、メールのクラウド化です。さらに、クラウドのメールサーバを利用すると自社サーバのように設備投資が必要ありません。このように、メールのクラウド化は、利便性の向上やコスト削減を図ることができる仕組みなのです。

メールをクラウド化するメリット・デメリット

会社のメールをクラウド化することにより、次のようなメリットがあります。

  • 状況の変化に対して臨機応変に対応可能
    メールを使用する従業員の数が変わったり、さらに多くのメールの保存容量が必要になったりした場合でも、容易に拡張して対応することができます。
  • 利用する場所を選ばない
    クラウド上にデータが保管されているため、インターネットに接続できる環境さえあれば、外出先からでも利用することができます。
  • 大規模な準備作業が不要
    メールのためのサーバを設置したり、専用のシステムを構築したりする必要がないため、すぐに利用を開始できます。
  • 少ない導入コスト
    サーバ設置・システム構築が不要ということは、導入コストもかからないということです。このようにコスト面でも大きなメリットがあります。

一方で、デメリットとして次のようなことがあげられます。

  • 自社に合わせた仕様にしにくい
    自社で保有するメールクライアントと違い、クラウド上で運用されるメールサービスは、自社に合わせてカスタマイズしにくいという点があります。自社の求める仕様に完全に合わせるのは困難といえます。
  • セキュリティはメールサービス運営会社に依存
    データの紛失・個人情報の流出・ハッキングやデータ破壊など、セキュリティリスクはメールサービス運営会社側に依存することとなります。

しかし、このようなデメリットに対し、メールサービスを運営する企業もさまざまな工夫をして対応しています。

クラウド型のメールサービスを選ぶ際のポイント

クラウド型のメールサービスは数多く存在し、それぞれ特徴や違いがあります。いざメールをクラウド化しようとした際に、どのような基準でメールサービスを選べばいいのでしょうか。重要なポイントとして次のような点があげられます。

  • 安全性
    クラウドメールサービスにとって、最も重要なのがセキュリティ面での安全性です。信頼できる運営会社でなければ、自社のみでなく顧客の情報も含むメールの管理を任せることはできません。
  • 基本性能
    メールの保存容量や保存期間、送信できるファイルのサイズ、利用時にかかる費用などが、自社の要求を満たすものかどうかを、しっかりと確認する必要があります。
  • 操作性
    メールサービスが業務で使用するツールである以上、使いやすさも重要な判断基準です。操作性は業務効率と直結しますので、操作性やインターフェースのカスタマイズは十分に確認しておきましょう。
  • 拡張性
    メールサービスを使っていく上で、後から「こんな機能が欲しい」という欲求は必ず出てくるものです。そういった際に、アドオンや別アプリケーションによる拡張性があると、使用者の不満が解消され業務効率の向上につながります。
  • 互換性
    現行使用しているメールサービスまたはメールクライアントとの互換性も重要です。データを移行できるのは当然として、移行にどの程度の時間がかかり、どのような作業が必要になるのか、といった点も確認する必要があります。

クラウド型メールの導入時の注意点

実際にクラウド型メールを導入すると決まった時に、どのような点に注意すべきなのでしょうか。

もっとも重要なのは、「目的を明確にしておくこと」です。これはメールサービスに限らず、新たにシステムを導入する場合全般に言えることですが、目的が不透明なままだと導入に失敗するケースがあります。

メールサービスのランニングコストを抑えたいのか、さまざまな端末から利用したいのか、ユーザー数や容量を変動させながら運用していきたいのか。このような目的を明確にしておくことで、導入効果に対する評価も可能となります。導入が成功しているのか、または、まだ課題が残っているのかが見えてくるようになり、それに対する解決法はどのようなものがあるのかを考えるきっかけになります。このように、目的を明確にしておくことが、クラウドメールサービス導入と業務効率化を結びつけるカギとなるのです。

特徴を理解して賢くクラウドを活用

あらゆるものが、「社内で保有する」という形から「クラウド上で利用する」という形に移り変わりつつあります。メールについても同様に、自社のパソコンにあるクライアントで利用するのではなく、クラウド化されたサービスでの運用が主流となる時代が来るのではないでしょうか。クラウドメールサービスを導入する際は、それぞれのサービスを比較し、特徴を理解した上で導入・運用していくことが重要です。

参考: