なぜ仕事の効率化が必要なのか?効率化を進める方法やポイント

なぜ仕事の効率化が必要なのか?効率化を進める方法やポイント

業務効率化

働き方改革」の目的のひとつに、ワークライフバランスの実現があります。実はもうひとつ、改革を進めなければならない大きな理由があります。それは“自然に増えていく仕事に対応する”こと。これまでどおりの仕事では、増えた分は残業でカバーしなければなりません。仕事を増やす要因には、一人ひとりの心理的な側面もあるから厄介です。これらに対処する方策を検討してみましょう。

仕事が増えてしまう理由

基本的に仕事は増えるものですが、その原因は私たちの心の内側にもあります。

パーキンソンの法則、人はある時間だけ使ってしまう

期日に余裕があったはずなのに、結局納期ぎりぎりになってしまったという経験は誰にもあるでしょう。早起きしたのに始業間際に出社してしまうのもそうです。「パーキンソンの法則」は、「人は時間もお金もあるだけ使ってしまう」と説いています。転職して収入が増えたはずなのに毎月の貯金額はほとんど変わらない、なども当てはまります。

社内を見渡せば、この法則に当てはまるものが多々あります。会議の資料や顧客への提案書で、情報量や見栄えにこだわるあまり直前まで作り込みをするのもそうかもしれません。自分や部下のスケジュールが埋まっていないと気になる人や、毎日残業しないと評価しない上司などもそうでしょう。

つまり、「人は仕事がないときでも仕事をつくってしまう」傾向があるのです。

黙っていても仕事は増える、積極的に伸ばそうとしなれば売上は落ちる

「コンプライアンス」という言葉が聞かれるようになって以来、社内ルールの厳格化、その明文化や記録化などが行われるようになりました。まさしく増えた仕事の典型です。

ライバルが新製品を出したり、異業種からまったく新しい価値の商材が投入されたりすれば、なんらかのカウンターアクションをしなければなりません。プロダクト(製品)のライフサイクルが短くなれば、早期の新製品の開発が求められ、短期間に同じ量の仕事をこなさなければならなくなります。

人口減少、異業種からの参入、プロダクトライフサイクルの短縮などが複合化すれば、商品はますます売れなくなります。売上を確保するためにこれまで以上に努力する必要があるため、これらも仕事を増やす要因です。

仕事を減らすためにはECRSの原則を活用

そのため積極的に「仕事を減らす」必要があるのです。その基本的かつ参考にしたい「ECRSの原則」をご紹介しましょう。

ECRSとは

業務改善の手順をE、C、R、Sの4つの頭文字で示したものです。闇雲に業務改革を進めようとすると、ルールが新設されたり情報共有と称して会議や提出書類が増えたりするなど、かえって仕事を増やしてしまうことになりかねません。そこでECRSの原則に従って着手するのが望ましいとされています。

それぞれの頭文字の意味

「E」は「排除(Eliminate)」を意味します。業務改善の際は、最初に徹底的なスリム化をすることを示しています。結果として無駄なコストと時間が減り、同じ売上であっても利幅を増やせる可能性が出てきます。製造業ならば生産ラインの省力化などが代表的な「E」になりますが、事務部門の会議や報告、書類の削減なども該当します。

「C」は「結合と分離(Combine)」です。製造工程ならば部品や製造ラインを共有化したり、反対にそれぞれを専門工程に分離したりして生産性を高めることが該当します。会議も複数の目的別に行われているものを集約すれば、総時間が短縮できます。社内書類の書式を統一するのもひとつの方法でしょう。

「R」は「順序変更(入替と代替)」です。例えば稟議や決裁の順序を変えることが該当します。「営業(申請)→管理部門(決裁)→経営層(決裁)」ではなく、「営業(申請)→経営層(決裁)→管理部門(補佐)」の流れにするなどです。顧客の声を聴くカスタマーサービス部門を経営層の近くに置くだけでも、現場の情報が上層部に伝わりやすくなるかもしれません。

「S」は「簡素化(Simplify)」ですが、「E」「C」「R」の後に、さらなる簡素化を目指すのがポイントです。スリム化の結果、新たに見えてくるものもあります。それを基本に、改めてビジネスの中核は何かを考え、簡素化を目指して再構築を検討するのです。会議の参加者を減らしたり、システムを導入したりすることなどが考えられます。

ICTによるECRS的効果を考える

オフィスの構造を物理的に変更したり削減したりすることは、かなりの労力とコストを要します。しかしICTによる仕事の効率化ならば、そこまでの投資は必要としません。代表的な例を見てみましょう。

「電子化」して減らし、「見える化」して無駄を無くす

真っ先に取り組みたいのがペーパーレスです。ペーパーレスは、以下の手順で取り組むのが良いでしょう。

  • 書類の種類を減らす:提出書類の見直しをして、削減や結合に取り組む。
  • 書類の枚数を減らす:フォーマットの変更、ルールによる枚数上限規定などを設定し、簡素化を目指す。
  • 電子化して回覧、ストック、削除:可能な限り書類を電子化し、紙書類の保管や検索、廃棄コストを削減。

テレビ会議やWeb会議システムもECRSに適したツールです。会議の時間は必要ではありますが、非生産的な時間ともいえます。特に削減したいのは単なる報告の会議です。一方、課題発生の都度、対面で協議したほうが結果も早いケースもあるので、大きな会議を小さなミーティングやコミュニケーションに置き換える考え方がありえます。そのようなときに、自分のデスクや外出先からでも参加できるWeb会議システムがあれば、会議室への移動の時間や会議室を予約する手間を削減することができます。また、案件管理ツールでプロジェクトの進捗状況を「見える化」できれば、集まって進捗を確認しあう時間を減らすことができます。

「テレワーク化」でどこでも業務ができるようにする

ICTツールの活用により、「距離」「時間」「容量」などの物理的な壁を取り払うことができます。出張中でもモバイル機器を使い、デジタル上で稟議の決裁ができるワークフローや、いつでも必要な情報にアクセスできるクラウド環境でのファイル共有、そして、スタッフとの打ち合わせをどこでもできるビジネスチャットなども、ECRSを推進する強力な味方となります。

RPAやAIを活用する

RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)やAI(人口知能)の活用も、仕事の効率化には欠かせません。RPAは、経理や事務のような定型的な業務をロボットが代行する技術です。伝票処理の例では、これまで人が数値を読み、キーで打ち込んでいた作業を、OCRの読み取りと自動的に振り分けてデータベース化するRPAがあります。次の工程もソフトウェアのプログラムで自動化されていれば、次々に処理されていくことになります。判断が必要な場面はAIが担当するので、ヒューマンエラーを極力排除できます。昼夜問わず稼働できるので、仕事の正確さと速さが格段に向上します。社員の仕事をコア業務に絞るため、単純作業を機械に代替させるという発想です。

仕事の効率化を進めるために、まずはECRSから

ICTツールを導入すれば、すべてが解決するというものではないところは注意しなくてはなりません。不要な会議や文書を見直してスリム化してから、さらにそれをシンプルにするために導入するのがポイントです。Web会議ならば手軽だからと、回数を増やしてしまったら本末転倒となるわけです。仕事の効率化を目的に、まずはECRSから始めることが大切です。

参考: