生産性向上のためのスマートワークとは?導入のポイントと期待効果

生産性向上のためのスマートワークとは?導入のポイントと期待効果

業務効率化

「スマートワーク」という言葉をご存知でしょうか? テレワークなどもスマートワークに含まれますが、簡単に言えば、時間や場所にとらわれないシームレスな仕事環境のことをスマートワークといいます。また、職場環境の変革のみならず、優れたスキルを持つ人材などを外部のフリーランサーから調達してしまう考え方も当てはまります。スマートワークの目的は、ビジネスの生産性やイノベーション力を高めるというところにあるのです。

スマートワークとは、テレワークとの違い

スマートワークにはテレワークの概念も含みますが、どのような位置づけになるのでしょうか。

スマートワークの定義

スマートワークに関連するキーワードを整理しましょう。

  • テレワーク

    モバイル機器を活用し、本社や支社などのオフィス以外の場所でも働ける環境を用意することです。在宅勤務に限らず、サテライトオフィスや移動中の勤務も含みます。メリットは移動時間自体の削減のほか、連絡のためにオフィスに戻るなどの手間もなく、移動先での顧客からのメール対応など早いレスポンスと時間の有効活用ができるので、トータルの就業時間を短くできます。結果としてワーク・ライフ・バランスが適正化し、消費意欲の拡大等の副次的な効果も期待できます。

  • ダイバーシティ

    グローバル企業は世界各地に拠点を持ち、現地の才能を活かして企業力を高めています。優秀な人材をフルに活用するために、現地の風習や考え方や価値観を取り入れ、働きやすく、能力を発揮しやすい環境を整えています。この柔軟に多様性を受け入れ、様々な力を結集して全体を高度化させる考え方や体制をダイバーシティといいます。人種や文化の違いだけでなく、日本のように労働者不足が懸念される国において、子育て中や介護中で働けない人材に働いてもらえる環境作りもダイバーシティに該当します。先のテレワークなどはそういった取り組みの代表と言えるでしょう。

  • クラウドソーシング

    日本の企業は技術開発、商品開発を自前でやり遂げ、他社と差別化する戦略をとってきました。一方、海外では企業間の提携や買収でそれらを進める動きが優勢です。コア業務に限らずとも、データの入力、ホームページ用コンテンツの作成、商品のモニターとしての利用と評価、コピーライティングなど、外部の力を利用する業務は多々あります。そのスキルをインターネット経由で不特定多数から募る仕組みがクラウドソーシングです。手間と時間をかけずに調達できるので、些細な課題や問題解決で時間がとられることがなくなり、コストが安く済むメリットもあります。

  • フリーランサー

    出版社に出入りする下請けのライターやカメラマンのように、1つの企業に雇われずに独立して仕事を請ける人がフリーランサーです。現在はいろいろな病院で働く麻酔医のように、高度な専門知識を有するフリーランサーも増えてきました。利用する企業側は採用・常駐コストの削減や必要時に合わせたフレキシブルな対応と専門スキルの利用、フリーランサー側は仕事の機会と高い報酬が期待できます。単なる下請けではなく、必要に応じて専門家の力を借りることであり、フリーランサー側は問題解決力や仕事の対応力を高められます。

これらを活かして仕事を処理し、生産性やイノベーションを高めていくのがスマートワークと言えます。

スマートワークのメリット

スマートワークのメリットは、企業と社員の双方にあります。企業は業務の効率化、高い生産性や付加価値を実現できます。社員はテレワークのほか、クラウドソーシングやフリーランスとの協業・分担で仕事の能率向上やスキルの外部調達による付加価値の向上が図れます。業務の効率化によりワーク・ライフ・バランスの実現やモチベーション向上につながりますし、会社から許されれば自らのフリーランスやクラウドソーシングでの業務を受け、セカンドワークとしての就労機会や自己投資、自己実現の時間を持つこともできるでしょう。これらの結果、広く仕事のスキルを交換できたり、高めたりできる社会が実現します。

スマートワークの課題

しかし、スマートワークは緒に就いたばかりで、現実的にいまの日本では次のような課題があります。

企業慣習

企業がスマートワークでイノベーションを進め、業績を拡大させれば社員の給与に反映され、社会も豊かになります。しかし日本の企業は社員への出社の義務化や、フリーランサーなど外部の専門スキルの利用よりも自社での調達を重視する方針がまだ根強く、足かせになる危険があります。表向きはパートナーですが、安い費用で作業を委託する下請け制度が強いことで、外部調達できるリソースが広がらないなどの懸念もあります。

ICTの利用とセキュリティ

テレワークや外部リソースの利用では、そのパフォーマンスの管理も課題ですが、企業外でICT機器を使うことによる情報漏えいリスクを気にする企業も多いでしょう。しかし、セキュリティツールやサービスは日々進歩しています。常に最新のツールやテクノロジーに目を向け、可能性のあるものから導入していく姿勢が求められます。

スマートワークの事例

スマートワークによりどのような効果があるかが理解できれば、導入の機運も一気に高まるでしょう。ここでは先進的スマートワーク企業についてご紹介します。

コニカミノルタ

同社は『日経スマートワーク大賞2018』を受賞しました。同社の主力製品であるプリンターや複合機の主要なマーケットは海外です。そのうえで新人の15%を外国国籍にし、海外企業のM&Aを推進するなど、さらなるグローバル化を進めています。業務を自動化させるRPAの導入、セキュリティを実現したうえでのリモートワークの実現、兼業や副業の解禁、若手の海外短期派遣のほか、イノベーションを生み出す下地となるデザインシンキング(フィールド観察などによる市場の理解、ブレインストーミングによる発想、短期間での試作品の作成と検証)を取り入れていることなどが評価されての大賞受賞です。
https://www.konicaminolta.com/jp-ja/newsroom/2018/0116-01-01.html

ソフトバンク

同社は「より楽しく仕事をして、よりクリエイティブに、よりイノベーティブに」を目標に働き方改革を進めています。また、育児、介護、障害などの制約のある社員には週3回の在宅勤務を認めており、将来的に全社員への拡大を目指しています。さらに、コアタイムすらないスーパーフレックスタイム制の導入、そして業務ではITとAI(人工知能)の積極的な活用を表明しています。その効果として創出された時間を自己投資に活用してもらうため、全社員を対象に支援金を支給しています。これにより、社員自身がモチベーションを持って自己成長し、業務のさらなる効率化を進めるという流れを作っているのです。
https://www.softbank.jp/corp/hr/personnel/workstyle/

丸紅

どんな商材でも流通させてしまう力が商社の強みです。それは多様な事業の集合体、一種の強大なプラットフォームとも言えます。食品から旅客機まで扱える幅の広さは、それぞれにプロフェッショナルが在籍しているからです。しかしそれは縦割り組織の弊害も生みました。そこで、事業部間のコミュニケーション、外部頭脳の取り入れなどをさらに進めるために、ルーチン業務のAI等による自動化、多様な仕事環境の提供と、社員の国籍、性別、年齢の多様化、それに伴う社内共通言語の最適化など、大胆な変革を進めています。
http://smartwork.nikkei.co.jp/pickup/2018/02/marubeni.html

生産性の向上とイノベーションの発揮が目的

事例でご紹介した企業は、どこもテクノロジーや海外進出の先端企業ばかりです。そういった企業が仕事のスマート化を率先して進めています。時短ばかりにとらわれず、生産性の向上をテーマにスマートワークを設計し、常に前向きに改革を進めることの大切さをうかがい知れます。

イノベーションを発揮し、生産性を向上させるためには、既存の縦割り組織の見直しを図り、社内のみならず外部とのコラボレーションも導入することが大切です。そして会社の慣習を見直し、多少の手間やリスクは覚悟のうえで、目標を定めたスマート化を進めることが肝心です。

参考: