フリーアドレスは働き方改革にも効く?フリーアドレス導入のポイントと成功事例

フリーアドレスは働き方改革にも効く?フリーアドレス導入のポイントと成功事例

働き方改革

働き方改革が叫ばれるようになり、「フリーアドレス」があらためて注目されています。フリーアドレスはコストを削減するだけでなく、働き方にも大きな影響を与えるオフィスのあり方です。そこで、フリーアドレスの概要やメリット・デメリット、導入事例などについてご紹介します。

フリーアドレスを知る

いま注目されているフリーアドレスを検討するために、まずはフリーアドレスがどのようなものであるかを正確に把握する必要があります。

フリーアドレスとは何か

フリーアドレスとは、オフィスのレイアウトや座席をポイントにしたワークスタイルのひとつです。たとえば、個人の指定席を決めず、オフィスのデスクをすべて共有の自由席にして、好きな席で仕事をするオフィスの形態のことです。最近は単なるレイアウトに留まらず「働き方改革」の手段のひとつとして考えられるようになっています。

フリーアドレスと言えば海外発の斬新なワークスタイルのように見えますが、実は1990年代から存在する日本生まれのスタイルです。当初は失敗も多かったと言われています。
しかし、最近は当時の失敗を参考にしてうまく運用する企業が増え、再度フリーアドレスを導入する企業も増えてきています。2017年には、総務省の一部でも取り入れられて話題になっています。

なぜフリーアドレスなのか

フリーアドレスが再度注目を浴びているのにはいくつかの理由があります。

働く側の意識の変化

最近では、若い世代を中心にワークスタイルが多様化しています。そこで、より活発なコミュニケーションや、社内の連携が必要になり、オフィスの環境にも変化が求められているのです。
こうしたオフィス環境に自由度を増し、それを生産性向上へとつなげるには密なコミュニケーションが不可欠。フリーアドレスを実現すれば、自分の定位置という考え方に縛られなくなり、自由に席を移動させられるので、部署の内外を問わず気軽にコミュニケーションを図れるようになります。部署や場所にこだわりがなくなると、他部署のスタッフとも話し合いながらアイデアを出し合って仕事を進めることがしやすくなります。つまり、それによって生産性も向上すると考えられるのです。

IT技術の進化

90年代はまだ携帯電話も普及しておらず、パソコンはデスクトップ型の固定式で大きく、情報は紙の文書でのやりとりが基本という企業も多い時代でした。そのため、フリーアドレスにすると仕事に必要なものを、いちいち持ち運ぶ必要があり、かえって非効率的でした。
しかし現在はスマートフォンをはじめ多様なデバイスが普及し、パソコンはタブレットやノートパソコンの形へと小型化し、どこへでも持ち運べます。しかも、Wi-fiなどのネット環境が充実しているので、固定された席以外でも十分に仕事がこなせるようになりました。さらに文書のデジタル化も進んでいますから、いちいち紙で情報をやりとりする必要がなくなりつつあります。通信環境や、情報共有環境の観点からもフリーアドレス化しやすくなっているのです。

導入目的の変化

80年代後半から90年代に注目されたフリーアドレス化の目的は、空席の回転率を上げることでオフィスのスペースを減らし、コストを削減することでした。そのため社員の協力も得にくく、あまり普及はしませんでした。
現在のフリーアドレス化は、生産性の向上や人材確保を目的とし、自由な働き方を実現するためのものです。これは社員のニーズと一致しているため、社員にも受け入れられやすくなっています。さらにノマドワーカーや在宅勤務などが話題になり、多様な働き方に対する理解も深くなっています。

フリーアドレスのイメージ

フリーアドレスには、いくつかの誤解があります。

オフィスのスペースを減らすためのもの?

社員1人あたりのスペースに注目して考えてみましょう。ワークスペースの面積を社員数で割って計算をしてみると自社のケースを数値化できます。一般的には固定席制の場合なら1人あたりの必要スペースは1.8平方メートル。空席があってもなくても、自分に割り当てられる空間は、それくらいだ、ということになります。それを、空席率なども考えて、固定席をやめ、4人席のテーブルを複数配置することを考えると、1人あたりのスペースに余裕が持てると言われています。結果的にスペースの削減につながることはあっても、そもそもオフィスのスペース削減を目的としているわけではないのです。

コストを削減するためのもの?

フリーアドレス化の目的はコスト削減だけではありません。主な目的は、コミュニケーションの活性化、社員のモチベーション向上、業務効率化などです。

毎日ファイルなどを持ち歩くのが面倒

フリーアドレスでは毎日仕事に必要な道具や書類を座席まで持ち運びます。かつては引き出しや箱を持って移動していました。
最近はネットワーク化およびペーパーレス化が進んでいるため、持ち歩くのはパソコンや一部の文房具など必要最小限なものだけになっています。

フリーアドレスに向いているところ・向いていないところ

フリーアドレスが注目され、導入を検討しようと考えている企業も増えているようですが、フリーアドレスを導入しやすい企業や部署と、導入しにくい企業や部署があります。

フリーアドレスに向いている企業、部署

IT企業など、新しいワークスタイルへの意識が高い企業、若手の多い企業、特定の職種(営業やSEなど)のメンバーが多い企業は、フリーアドレスに向いている企業です。フリーアドレスに向いている企業でも、全社で一斉に導入する必要はなく、一部の部署だけで導入することもあります。

部署では、他の部署との交渉が多い企画部門や外回りの多い営業部門がフリーアドレスに向いています。アイデアを出す企画部門では、活発にコミュニケーションが取れるフリーアドレスが向いていて、生産性の向上も期待できます。外出の多い営業部門では、フリーアドレスを導入するとオフィスのスペースを大きく削減できます。

また、1人で集中して仕事をしたいSEやエンジニアなどの職種もフリーアドレスに向いています。これらの職種は20代から30代の若手が多く、フリーアドレスに限らず、通信手段があるところではどこでも仕事ができます。

フリーアドレスに向いていない企業、部署

社員が同じ時間に在席していることが重要な企業、時間単位で社員を管理している企業は比較的フリーアドレスを導入しにくいでしょう。また社員の平均年齢の高い企業では、これまでの企業文化にはないものを導入することになるので、フリーアドレスが成果を発揮するまでに時間がかかるかもしれません。

受付や工場など、その場にいることが重要な部署ではフリーアドレスの導入は難しいでしょう。また人事部門や経理部門など、外部に持ち出し禁止の情報が多い部門はフリーアドレスには向いていないといえます。

フリーアドレスのメリットとデメリット

フリーアドレスにはいくつものメリットがありますが、デメリットも存在します。

フリーアドレスのメリット

1. オフィスの省スペース化、コストの削減

営業部門のように在席率の低い部署は、人数分のデスクは不要です。そのため、フリーアドレスにすればオフィスのスペースを大きく削減することが可能です。個人用スペースを削減して、コミュニケーションのためのフリースペースを設けることもできます。
さらに、新規採用や異動・退職などがあってもレイアウトや固定した設備を変更する必要がなく、人数の変動に柔軟に対応できるので、レイアウト変更にかかるコストを削減できます。

2. コミュニケーションの活性化

座席を固定しないことで期待できるのが、コミュニケーションの活性化です。
普段の業務では接触のない人とも情報交換でき、部署を越えた横のつながりが生まれます。そこで新たなアイデアが生まれたり、部署を横断したプロジェクトが実行しやすくなったりするので、生産性も向上します。
部署内でも、より気軽で自由なコミュニケーションができるようになります。会議室での正式な会議ではなくても、座席で簡単に打ち合わせできるので、作業を進めやすくなるでしょう。さらにプロジェクトのチーム編成もしやすくなります。
コミュニケーションが活性化することで、生産性も仕事の質も向上が期待できます。

3. ペーパーレス化

もし、紙ベースの文書管理や情報共有を維持したままフリーアドレス化を進めると、作業をする席へ必要な紙の文書や資料を持って歩くことになり、物理的に大変です。また、席の位置によってはプリンターやコピー機までの距離が遠くなり、紙の文書を作成するのにも手間がかかります。
そこでフリーアドレスを導入すると、同時に文書はできるだけ電子化するようになり、オフィスのペーパーレス化が進みます。それによって、紙や印刷にかかるコスト、プリントアウトにかかる時間を削減できることになるのです。
文書の電子化が進むと印刷したものを回覧する時間がなくなるので、情報共有がよりスピーディーになります。

ただし、フリーアドレス化しても、紙の文書がゼロになるわけではありません。自分用の資料は、必要なものは個人用ロッカーなどのスペースに収納し、不要になれば電子化しましょう。また保存する資料や文書は、厳選して共有スペースやサーバーに保存しましょう。

4. 整理整頓

フリーアドレスにすると、オフィスで使うパソコンや文書など、私物は最小限のものになります。終業時にはすべて個人用のロッカーなどにしまいます。また、前述のとおり可能な限り文書のペーパーレス化が進みます。
それによってオフィス全体のものが減り、オフィスが整理整頓された状態を保つことが容易になります。

5. 社員のモチベーションや満足度の向上

フリーアドレスにすると、職場環境の自由度が高くなります。そのため社員が日常的に気分転換を図れる環境が整うことにもなります。社員の職場に対する満足度やモチベーションが向上し、より自主的、主体的に業務を行うようになり、生産性の向上につながります。

デメリット

1. 会社への帰属意識の減少

これまでのワークスタイルに慣れた社員にとっては、フリーアドレスで「自分専用の席」がなくなると、社内における自分の位置づけ、存在意義に疑問や不安を持つことがあります。そこから、仕事へのモチベーション低下につながることも少なくありません。その場合、次のような解決策があります。

  • 私物を収めるロッカーなど専用の場所を用意する
    職場に「自分専用」のスペースがあり、そこに自分の名前があることで、会社や職場への帰属意識を取り戻すことができます。ロッカーは私物の置き場として用意することが多いので、一石二鳥です。
  • 意識の転換を促す
    フリーアドレスで「自分の席がなくなる」のではなく「どこでも自分の席になる」のだと考えるように、フリーアドレスの導入を担当している部門や上司から説明をしましょう。
  • デスクや座席の選び方を工夫して、孤独感を減らす

コミュニケーションが取りやすいデスク配置などオフィスデザインの工夫をすることで、抵抗感が薄れます。

2. 集中して作業しにくい

職種や作業、また個人の性格によっては、オープンな空間で話し声がしていると集中できず、効率が落ちてしまいます。その場合は1人で集中して作業できる個室のようなスペースを用意しましょう。フリーアドレスの長所を損なわずに、効率の低下を防ぐことができます。

3. 誰がどこにいるのかわからず、電話等を取り次ぎにくい

フリーアドレスでは、誰がどこにいるのかを把握できないことが多く、受付から呼び出すことができません。
そのため、個人に社内用の携帯電話を支給し、個別に呼び出すようにします。連絡が取れなくなるという事態は避けなくてはいけません。

4. コストが増える

フリーアドレス化するには、個人用のパソコンやロッカー、連絡用の携帯電話を用意したり、さらにオフィスのレイアウトを改装したり、共有スペースを作ったりする必要があります。また文書を共有するためのファイルサーバーやクラウドサービスなども必要で、ある程度の初期コストがかかります。

5. 社員の管理がしにくい

フリーアドレスでは常に部下が目の前にいるわけではないので、従来のように、時間を基準にしてのマネジメントはしにくくなります。それは不便だという管理職もいるかもしれません。
部下の評価はプロジェクトの進捗や成果を基準にしたり、連絡方法を携帯電話やチャットツールを利用するように変更したり、仕事のやり方を変える必要があることも、導入当初に感じるフリーアドレスのデメリットです。

フリーアドレス導入のポイント

フリーアドレスを導入するときには重要なポイントが2つあります。うまく導入するために、このポイントを押さえておきましょう。

導入目的を明確にする

フリーアドレスを導入する前には、導入目的を明確にし、社内に広く告知しましょう。特に課題も目的もなく、なんとなく流行だから、おしゃれだから、という理由で導入してもうまくいきません。

現在どのような問題点があるのか、それをどう解決したいのかを考えます。そして問題解決のためにフリーアドレスを導入することが効果的であることを確認しましょう。さらにフリーアドレス化に伴うメリットやデメリットを明確にしておくと、社員もフリーアドレス化を受け入れやすくなります。

導入に対して社員が納得できること

フリーアドレス化をスムーズに進めるためには、社員がフリーアドレスの導入に納得していることが必要です。特に職種や世代によっては、フリーアドレス化はなかなか受け入れにくいこともあります。そのような社員がいる場合は、導入目的やメリットだけでなく、フリーアドレスを実施するうえでのルールを明確にし、導入の必要性を理解してもらいましょう。

フリーアドレスは社員の働き方そのものに関わるので、社員の協力が得られなければ、無理に導入してもうまくいきません。

フリーアドレスを導入する前には

フリーアドレス導入には、あらかじめ決めておくことや用意するものがあります。

導入前に決定すること

フリーアドレスを導入するときには、ただレイアウトを変更して自由に使わせるだけでは不十分です。あらかじめ運用のルールやガイドラインを作り、どのように振る舞えばいいのかを社員にもイメージしやすくしておきましょう。そうすればスムーズに導入でき、フリーアドレスのメリットを十分に生かすことができます。
特に、次の3点は重要です。

1. 資料はできるだけ共有し、電子化し、不要なプリントアウトは行わないこと

機密情報ではない資料は、できるだけ電子化し、共有サーバーに保存します。ペーパーレス化と情報の一元管理を同時に行うことができ、業務が効率化できます。共有サーバーの資料は整理して、誰が見ても使いやすくしておきます。

2. 対面や通話以外の通信手段を活用すること

フリーアドレスでは固定したデスクがないので、固定した内線電話番号もありません。連絡にはできるだけメッセージツールやグループウェアなどを使い、急ぎの場合は社内用の携帯電話を使用します。これまで気軽に内線電話を使っていた世代には馴染みにくいかもしれませんから、一気に進めるのではなく、徐々になじんでもらうよう段階を設けるなど工夫が必要です。

3. 運用支援チームを用意すること

総務部門など導入をリードする部署に、フリーアドレスの運用支援チームを用意します。フリーアドレス化での質問を受け付けたり、トラブルを解決したりして、スムーズな導入を支援します。

座席の選び方

フリーアドレスの基本は自分で好きな席を選ぶ、ということです。しかし、次のような問題が起こる場合もあります。

いつも同じ席に座ってしまう、気の合う人と固まって同じ場所を専有してしまう

いつも同じ席で同じメンバーと固まっていると、コミュニケーションの活性化につながらず、フリーアドレス化が無駄になってしまいます。それを解消するには、次のような方法があります。

  • くじ引き
    毎日くじ引きを行い、ランダムに座席を決める方法です。実際に導入している企業もあります。
    自由に席を選ぶことはできませんが、毎日違う場所、違うメンバーの近くで仕事をするので、コミュニケーションの活性化につながります。導入当初数ヶ月など期間を区切って、フリーアドレスに慣れるために導入してもいいでしょう。
  • チームアドレス制
    多くの企業で利用されている方法です。チーム単位でフリーアドレス化する方法で、同じプロジェクトや部署のメンバーでチームを作ります。チームのメンバーが近くにいるので気軽にコミュニケーションが取れますが、仕事をする場所は毎日変わります。つまりゆるやかなフリーアドレス化と言える状況です。
    コミュニケーションの活性化や多様なアイデアの発生というフリーアドレスのメリットは弱くなりますが、上司の反対も少なく、導入しやすい形です。

上司がフリーアドレス化に反対して自分の部署だけは従来どおりにしようとする

管理職が従来のようなレイアウトを好んでフリーアドレスを拒む場合もあります。またフリーアドレスを導入しても、上司が毎朝勝手に部下の席を決めてしまうこともあるのです。
この場合、通常より広いデスクで上司用のスペースを用意するという方法があります。また上司以外はチームアドレス制で、同じフロアでゆるやかに座席を決めたり、くじ引きと併用したりすれば、上司にも部下にも受け入れられやすくなります。

必要なもの

フリーアドレスを導入するには、必要なものがあります。しかし、もともとの備品がどのくらいあるのか、レイアウトはどのくらい変更するのかは、それぞれの企業によって大きく異なります。そのため一概に目安となるコストは提示できませんが、まずは必要なものを洗い出してコストを把握してみましょう。

ノートパソコン

フリーアドレスでは、自由に移動できるノートパソコンが必須です。営業部門では、もともとノートパソコンを持っているところも多いので、導入時も現状のまま継続できるでしょう。データはパソコン内部に保存するか、クラウドストレージに保存して必要なときにアクセスします。営業部門のように、外部からのアクセスが多い場合はクラウドストレージが便利です。

社内用無線LAN

社内を自由に移動するためには、どこからでもネットワークにつながらなくてはなりません。そのため、社内全体にWi-Fiを整備し、無線LANにつながるように整備します。プリンターへもWi-Fi経由で通信できるようにしましょう。

デスク

デスクについては、これまでのものを使用する場合も、新規購入する場合もあります。全員分用意する必要はありません。在席率数などをもとにして、20%から半数くらいまで減らします。デスクのレイアウトも、従来のような島型だけではなく、長方形、同心円など多様な並べ方ができます。
オフィス用のデスクではなく、長机や円形、雲形などのテーブルを並べるところもあります。円形や雲型のテーブルは、柔軟に人数を調整でき、フリーアドレスで利用しやすい形です。自然にコミュニケーションを取ることもできるので、フリーアドレスのメリットを十分に生かすことができます。
テーブルの周りには、十分な数の電源タップと、資料や文房具などの荷物を置いておける場所が必要です。

共有スペース

デスクのほかにソファスペースやドリンクバーなど共有の設備があると、自然に人が集まり、コミュニケーションがより活性化されます。この共有スペースといろいろな形のデスクによって、フリーアドレスのおしゃれなイメージが作られます。

共有資料を入れるスペース

紙の資料をファイリングして、誰でも閲覧可能なキャビネットを用意します。そこには機密情報以外の共有ファイルを収納します。個人用のデスクがないので、使い終わったファイルはすぐに収納する必要があります。
また、電子化された文書を共有データとして保存するためには、クラウドストレージか社内のファイルサーバーが必要です。

個人用のスペース

個人用の資料や私物などを入れておく場所も必要です。多くは鍵付きのロッカーになるでしょう。社内で「自分専用スペース」として使える唯一の場所でもあるので、社員にとっては重要な場所です。

フリーアドレスの事例紹介

フリーアドレスを導入して、業務改善が成功した企業を4つご紹介します。

株式会社内田洋行

内田洋行は「情報の価値化と知の協創をデザインする」会社です。営業職も多く、フリーアドレスを導入しやすい状態にありました。さらにオフィス環境を整備したり提案したりする事業も行っていますので、自社環境にも導入しやすかったと言えます。まず新川第2オフィスの営業部門をフリーアドレス化しました。それにより、次のような効果がありました。

  • 社内業務を効率化でき、不要な会議が減った。
  • 客先対応の時間を増やすことができた
  • コミュニケーションが活性化された
  • ペーパーレス化でき、文書管理システムにより情報へのアクセスが簡単になった
  • 情報共有が進み、スピーディーに意思決定できるようになった
  • 社員が自主的にフリーアドレスの運用のルールを決め、常に改善するようになった

(出典)フリーアドレス2.0 成功のポイント|内田洋行

カルビー株式会社

お菓子や食品の製造・販売を行うカルビーでは、毎日ダーツシステムで座席を決める完全フリーアドレスを導入しています。プロジェクトや部署によっては、曜日によりチームアドレス制を導入するなど、フレキシブルに運用されています。

カルビーではCEOである松本晃氏の提唱でフリーアドレスが導入されました。トップダウンでの導入でしたが、目的がはっきりしており、実際に導入後の成果も目に見えてきたところで、社員の理解を得ることができました。今ではフリーアドレスが定着しています。オフィス全体が明るくフラットなイメージで、毎日違う人と話すので新鮮だと好評です。

カルビーでは、営業部門だけでなく総務部門などバックオフィスにもフリーアドレスを導入して次のような効果を上げています。

  • 時間の使い方が効率的になって、残業が減った
  • 他の部署の人ともコミュニケーションが取れ、横のつながりができた
  • 紙の書類を70%も減らすことができた
  • 社内が清潔で、終業時には必ず片付いているようになった

さらにカルビーでは、フリーアドレス化により多様な働き方への理解が深まり、在宅勤務の人数も増えました。社内全体で働き方改革が起きています。

(出典)カルビー「フリーアドレス」オフィスは在宅勤務推進への一歩|文春オンライン

キューピー株式会社

食品をはじめ医薬原料、建築設計など多角的に事業展開をしているキューピー株式会社の事例は少し他とは異なっています。多くの企業では、営業部門にフリーアドレスを導入していますが、キューピーでは研究開発や生産本部の間接部門でもフリーアドレスを導入しました。これは、間接部門での業務改善活動「HIT(ヒット)活動」による業務効率化をきっかけにしてフリーアドレスが導入されたためです。

キューピーはもともと間接部門での業務改善に熱心な社風だったので、フリーアドレスも業務改善の一環として自然に導入することができました。トップダウンではなく自主的な活動から導入されたので、より定着しやすくなっています。キューピーでは、フリーアドレス化によって次のような効果がありました。

  • 商品企画に多様な部署のスタッフが参加にするようになり、新しい視点からのアイデアが生まれた
  • 部署間の連携が良くなった
  • ペーパーレス化が進み、オフィスが常に整理されるようになった
  • 業務効率化が進み、作業時間が減った

(出典)キユーピー、工場の間接部門でフリーアドレス導入進む|日経ビジネス

日本航空株式会社(JAL)

運輸業務を担うJALのフリーアドレス化は調達本部が主導しているため、細かなルールが徹底されています。「オフィスに常に流れをつくり、人・モノを滞留させない」という方針に基づき、営業部門だけでなく管理部門でもフリーアドレスが導入され、次のような改革が行われました。

  • 電話はスマートフォンで、固定した電話の取り次ぎをなくす
  • 四半期ごとに個人用のロッカーを移動し、紙の文書や個人用の資料を減らす
  • 業務文書は基本的にパソコンではなくサーバーに保管する
  • 曜日により、チームアドレス制と完全フリーアドレスを使い分ける

JALでは、フリーアドレス化によりコミュニケーションが活性化し、簡単な会議は会議室ではなくデスクで行っています。紙の文書は80%削減され、資料だけでなく業務全般の見える化が進みました。内線電話はないので、連絡にはメッセージ機能を使います。

フリーアドレス化にともない、自分の作業予定や進捗、退社時刻などを自主的に申告して共有することで、管理職からも部下の様子を見えるようにしました。それによって管理職の安心感が増し、残業が減って定時退社が増えました。さらに、リモートアクセスや在宅勤務など、多様な働き方を増やすことにつながっています。

(出典)超残業職場を満足職場に変えた、JAL調達本部の「働き方革命」|DIAMOND ONLINE

フリーアドレスの導入が多様な働き方導入につながる

フリーアドレスでは、常に定位置を意識する必要がなくなるため、リモートワークなど他の働き方も導入しやすくなります。これから良質な人材を確保するためには、まずはフリーアドレスを導入し、オフィスの雰囲気を変え、今働いている社員が働きやすい環境を作ることが大切です。

参考: