ジタハラの問題点はどこにあるのか―その予防と対策について

ジタハラの問題点はどこにあるのか―その予防と対策について

働き方改革

セクハラやパワハラに続いて問題視されつつある、ジタハラ。ジタハラとは、時短を達成するために上司が部下に早く退社することを強要することで、働き方改革による労働時間短縮から派生する問題ですが、パワハラとは違う視点で考察する必要があります。そこで、そもそもジタハラとはどのような状態のことで、どこに問題があるのかを探り、その予防と対策についてまとめています。

ジタハラとは

ジタハラとは働き方改革を達成するために、時短(労働時間短縮)、つまり上司が強制的に残業をしないで早く帰宅することを促すハラスメントのことです。高橋書店でアンケートを行った結果、「働く人の約4割がジタハラにつながる悩みを抱えている」との回答を得ました。

(出典)「働き方改革」の推進で、約4割のビジネスパーソンが“ジタハラ”(時短ハラスメント)被害予備軍に…?!|髙橋書店(PDF)

多くの企業において似たような状況にあることが伺え、今や無視できない、働き方改革推進に伴う問題として注目されています。

ジタハラの問題点

残業をしないで早く退社することを強要されて、それを苦痛に思うことがジタハラの問題であれば、パワハラとあまり違わないかもしれません。では、ジタハラの何が問題で、ジタハラによってどのような問題が発生するのでしょうか。ジタハラの問題点としては、以下のようなことが挙げられます。

  • オフィスでこなせない業務を自宅に持ち帰る、持ち帰り残業が発生する。会社での仕事時間は減らせても、結局は自宅で仕事をすることになるので、働き方改革につながらない。また、パソコンを自宅に持ち帰ることによる、情報セキュリティの問題も発生する。
  • これまで慢性的に行われていたサービス残業が表面化し、労働基準法違反により罰則を受ける可能性がある。
  • ジタハラがあることで、ブラック企業と認識されてしまう。
  • 社員が無理やり仕事を早く終わらせようとすることで、仕事の質が低下する。
  • 顧客に迷惑をかけることにもつながる。

また、そもそも残業がない職場環境であれば、早く帰宅することを強要されるジタハラは発生しないはずです。残業の原因としては以下のようなことが挙げられます。

  • 仕事量、特にペーパーワークが多く、業務時間内に終わらない。
  • 上司や同僚が遅くまで残っているので、自分だけ早く帰りづらい。
  • 夜の方が、仕事がはかどるため、残業が習慣になっている。
  • 仕事が多いことを周りにアピールするため。
  • 残業代を稼ぐため。

ジタハラの対策

セクハラやパワハラは、会社の組織の問題というよりも社員の人間関係の問題に起因することがほとんどですが、ジタハラの場合は、残業に頼った業務のありかたに根本的な問題があるといえます。従ってジタハラが発生しないようにするためには、残業の是非やありかたを考える必要があります。会社側と労働者側の両者において、どのようなジタハラ対策あるか、考えてみましょう。

企業側の対策

企業としては、まず、やみくもに残業を禁止するのではなく、社員がなぜ残業しているのかの原因や理由を明らかにする必要があります。残業の原因には、自分だけ先に、または上司より先に帰りづらいから残業をしているとか、特に仕事はないけれど残業代を稼ぐために残業をしているといった理由もあります。しかし、仕事量が多いことによる残業に焦点を当てると、以下の対策が考えられます。

  • 各社員の業務内容と量を可視化して、仕事が一部の社員に偏っていないか、あるいは無駄な業務がないかを見直す。改善できる点があれば改善し、業務量全体から残業となっていた量を減らせるような業務体制にする。
  • 経理や人事などのバックオフィス業務の場合は、ITツールなどを利用して業務を効率化し、一人当たりの仕事量を減らす。
  • 営業職の場合は、無駄な会議やメールを減らして、客先回りから帰った後のオフィスでの業務の負担を減らす。外出先からでも参加できるWeb会議システムや、リアルタイムでコミュニケーションが取れるチャットツールなどの利用を検討する。

労働者側の対策

なぜ残業をせざるを得ないほど、自分に業務が集中しているのかを見直しましょう。たとえば、なんでもかんでも、仕事を一人で抱え込んでいるのかもしれません。同じプロジェクトのなかで、他の人に頼んだり任せたりできる仕事がないかを検討することが必要でしょう。また、スケジュールを常に把握できるようにし、作業に遅れがないか、効率化が図れないかを個人でも検討すると同時に、プロジェクト内で進捗状況を共有し、プロジェクト内での対策を検討することも重要です。

残業減らすには残業の必要のない業務環境を作ることが先決

残業を禁止することが、働き方改革につながるわけではありません。労働時間短縮は、業務の効率化や労働者側の意識改革によって達成可能となるべきものです。ジタハラが起こる前に、なぜ残業しているのか理由を明らかにし、業務の見直しや効率化を検討してみることが大切です。