どこの企業も課題の多い社内コミュニケーション、ICTで本当に改革できる?

どこの企業も課題の多い社内コミュニケーション、ICTで本当に改革できる?

業務効率化

社内コミュニケーションというと、朝礼にはじまり、報連相(報告・連絡・相談)、定時後の飲み会、そして社内報や年に何回かの社内旅行が代表的です。このように顔を合わせることを重視している会社が日本では多いのかもしれません。また、SNSをはじめとする新しいコミュニケーションスタイルのビジネスへの応用に、懐疑的な目を向けている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、スピードと変化が求められる現代において、有効な社内コミュニケーションとはどのように行なうべきなのでしょうか。改めて、社内コミュニケーションについて考えてみましょう。

社内コミュニケーションが重要というのは本当か?

「社内コミュニケーション」の現状について、日本の企業はどうなのでしょう。

調査結果が示す、社内コミュニケーションの課題

ProFuture株式会社が運営する人事ポータルサイト「HR pro」による、社内コミュニケーションに関する調査結果を見てみましょう。2016年8月、上場・未上場企業合わせて229社の人事担当者に質問した結果、「社内のコミュニケーションに課題がある」との回答は全体で74%(大いにそう思う+ややそう思う)でした。

また、課題があるとしたコミュニケーションでは、「部門間や事業所間」(68%)、「経営層と社員」(51%)が特に多く「部署内の部長とメンバー」(38%)と続きます。どれもビジネス上重要な連携部分です。また「コミュニケーション不足は障害」と思うかどうかについての回答は「大いにそう思う」が63%「ややそう思う」が34%、合わせて97%とほぼ全員が「コミュニケーション不足は障害」という危機感を持っているという結果でした。

では、コミュニケーションを阻害している要因はどのようなものなのでしょうか。同調査によると、阻害原因としては、「組織風土・社風」(54%)、「対面コミュニケーションの減少」(50%)、「コミュニケーションスキルの低下」(48%)が上位に挙がりました。企業体質と世代との考え方のズレ、物理的な時間の確保の難しさなどが見えてきます。おもしろいのは回答の4番目に「ITツール依存」(33%)があることです。社内ポータルに掲示するだけ、共有フォルダに保存するだけ、メールを一斉同報して通達終了というような一方通行の情報共有がコミュニケーション減少の原因のひとつとしてあげられそうです。

社内コミュニケーションの解決すべき課題

これらの結果から、コミュニケーションが活発に行われるようにするためには、コミュニケーション本来の双方向性を取り戻しや現代の状況に沿ったコミュニケーション方法を取り入れていくことが課題のひとつとなります。無駄なコミュニケーションをなくし、何を伝えるか、どう情報共有するかを突き詰めることと言い換えられるかもしれません。

社内コミュニケーションの改善とビジネス効果

コミュニケーション不足が深刻化すると、以下のような弊害が生まれます。

  • 仕事の視野が狭くなる:会社やビジネス全体の動きを見ようとしなくなる
  • コンプライアンス違反等の危険が生じる:危機意識、誠実さや忠誠心が欠落し不祥事の発生を招く
  • 営業機会が減少する:顧客やマーケットについての情報共有や協働が不足する

まずはこの3つを強く意識し、課題として全社で認識することが重要です。

また、米国のMcKinsey & Companyの調査によると、従業員同士が連携し合うことで組織の生産性が20~25%向上することが期待でき、さらに、その効果は年間1.3兆ドル(144兆円超)に相当する可能性があるとのことです。

有効な社内コミュニケーションツール

それでは具体的にはどのような手法やツールがあるのでしょうか?

社内コミュニケーションを電子メールのみに頼っている会社は、ビジネスで遅れを取る危険性があります。電子メールは「双方向コミュニケーションに不向き」、「大容量ファイルが送れない」といったことがボトルネックとなっているからです。ICTツールの世界も新旧交代が速いペースで進んでいると認識するべきなのです。「電子メールを導入したので、もう充分にIT化した」と安堵するのではなく、常にベストな状態を模索する姿勢が重要であるということです。

ここからは、そのような社内コミュニケーションのボトルネックを解消するためのツールをご紹介します。

ビジネスチャット

電子メールでも「1対多数」の発信が可能ですが、全員が読んだかどうかは、それぞれから返信がなければ確認できません。その点SNSやチャットは、電子メールよりも双方向でのコミュニケーションが行いやすく、頻繁な情報交換が可能です。さらに動画などの大容量ファイルを共有することが可能であるということも利点でしょう。また、メールと異なり、全員の発言をひとつのログとして閲覧することも可能です。そのため、ログの流れを追えば会議の流れや案件の進捗、質問への回答などを把握しやすく、途中参加したメンバーとも高いレベルで情報を共有できるほか、「報連相」やOJT効果も期待できるでしょう。

代表的なツールとして、以下のものが挙げられます。

ChatWork

基本的なグループチャット機能のほか、メッセージ検索、チャットログの出力、タスク管理機能なども付帯されています。14グループチャット、5GBのストレージ利用までは無料です。
https://go.chatwork.com/ja/

Slack

アメリカで生まれたチャットツールです。最初はエンジニアを中心に利用されていましたが、現在は世界のさまざまな企業・職種で利用されています。
https://slack.com/intl/ja-jp

Microsoft Teams

ファイル共有や会議の調整など、さまざまなことができるサービスです。Office 365のアカウントがあれば利用でき、ファイル共有などがしやすいといったメリットがあります。
https://products.office.com/ja-jp/microsoft-teams/group-chat-software

Web会議ツール

ノートパソコンやスマートフォンにはカメラやマイクが標準装備されています。これらのデバイスでインターネット回線を使い、動画と音声でオンライン上の会議や小規模なミーティングができるのがWeb会議ツールです。サービスによっては、会議用というよりも、海外など遠距離でもWebミーティングをしながら協働作業ができるコミュニケーションツールと考えることができます。

代表的なツールとして、以下のものが挙げられます。

Skype

インターネットの無料通話ができます。デバイスのカメラ機能を使えばそのままオンラインミーティングが可能です。提供元はマイクロソフトであるため、Office365との相性も良くできています。Skype for Businessを利用すれば、画面やファイルの共有やPowerPointを用いてのプレゼンテーションなどをSkype上で行うことができます。
https://www.skype.com/ja/

Googleハングアウト

ビデオチャット機能のほか、Googleの他のサービス(オンラインストレージなど)を併用することができます。共同作業をするのに向いています。また、プライベート用やビジネス用など、複数のアカウントを簡単に使い分けることができます。
https://hangouts.google.com/?hl=ja

Appear.in

SkypeやGoogleのハンドアウトはサービスを利用するには専用ソフトのインストールが必要ですが、Appear.inは専用ソフトのインストールなしに利用することができ、相手にURLを発行するだけでWeb会議に招待することができます。社外とのやり取りで相手の会社が自社内で採用しているWeb会議ツールを入れていない場合や、会議以外への用途が期待できるでしょう。
https://appear.in/

ペーパーレス化、ワークフロー

押印文化の日本企業では、紙の書類で稟議をするのが、重要なビジネスコミュニケーションのひとつです。しかしその書類を印字する手間や、稟議者不在で決裁が遅れたり、書類の紛失や他の書類に紛れてしまったりといったトラブルで情報漏洩してしまうリスクを伴うなど、改革の余地も大きいのです。この紙のやり取りの工程を電子化してしまうのがワークフローです。稟議申請の途中経過の把握や、外出先でもモバイル機器で申請や決裁ができます。事務スタッフが書類を持ってフロア移動をする必要がなくなります。

代表的なツールとして、以下のものが挙げられます。

ジョブカンワークフロー

ジョブカンシリーズとして勤怠管理、経費精算、採用管理、労務管理、給与計算などを行える管理システムを提供しています。そのなかで申請書類等のクラウド上での管理を行えるのがジョブカンワークフローです。ジョブカンのほかのシリーズと連携や、利用者に合わせたカスタマイズ、1ユーザー月額300円からで利用できることなどがポイントです。
https://wf.jobcan.ne.jp/

X-Point

他社の各種ワークフローとの連携も特長としており、業務の目的ごとに異なるサービスにサインインする手間を省くことが可能です。2018年6月に提供開始された「X-point v2.6.00」でビジネスチャットのChatWorkや、既存の文書管理システムとの連携に対応しました。
https://www.atled.jp/xpoint/

R@bit Flow

ワークフロー機能のみならず、公開文書等のセキュアな管理をする文書管理機能と、ワークフローや掲示板など情報システムを管理するポータル機能をあわせ持ちます。さらに会計や人事等の基幹システムとの連携も可能で統合プラットフォームとしての利用が可能です。
https://www.ricoh.co.jp/si/workflow/

やはり社内コミュニケーションは重要、その改善もICTの使い方が鍵

「電子メールのみ導入されている」「文書をパソコンで作成しているが、印刷して回覧している」など、社内コミュニケーションがスムーズにいかない場合があるでしょう。すべてを一斉にICTで電子化する必要はありません。業務の効率化などで効果が高いと思われる部分から段階的に進めることが重要です。社内コミュニケーションについて、改めて見直してみてはいかがでしょうか。

参考: