テレワークの導入フローを確認!丁寧に手順を踏もう

テレワークの導入フローを確認!丁寧に手順を踏もう

働き方改革

テレワークの導入には社内インフラの整備業務フローだけではなく、セキュリティや勤怠管理など複数の視点が必要です。テレワーク導入前に自社の状態を把握し、入念に導入計画を練ることが求められます。テレワークをうまく導入すれば、社員の働きやすさや業務効率の向上などが見込めます。テレワークのメリットを生かすためにも、適切な手順でテレワークを導入していきましょう。

テレワークは多種多様!柔軟に対応しよう

テレワークとは、「ICT(情報通信技術)を活用した場所にとらわれない柔軟な働き方」のことです。在宅での勤務を思い浮かべる人が多いかもしれませんが、在宅勤務に限った働き方ではありません。在宅勤務以外にも、企業の本社や本拠地から離れた場所に設置されたオフィスを部分的に利用する「サテライトオフィス」や、移動時間や営業中に立ち寄ったカフェなどで仕事を行う「モバイルワーク」などがあります。

総務省「平成30年通信利用動向調査」によると2018年9月末時点でテレワークを導入している企業の割合は19.1%でした。ただしこの数字は企業全体の平均であり、内実は産業により差があります。例えば情報通信業は、導入割合が39.9%と4割近いのに対して、運輸・郵便業は8.7%と1割にも届きません。

さらに2020年には、新型コロナウイルス感染症対策としてテレワークの導入が一気に進みました。しかし、「新型コロナウイルス」の感染拡大を防ぐため、在宅勤務・リモートワークを実施したが、その後取りやめたとする企業も多いようです。東京商工リサーチの第6回「新型コロナウイルスに関するアンケート」調査での、「新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、在宅勤務・リモートワークを実施していますか?」との問いに対する返答は次のとおりです。※調査時期 2020年6月29日~7月8日

  • 在宅勤務を現在、実施している 約31.0%
  • 在宅勤務を実施したが、現在は取りやめた 約26.7%
  • 在宅勤務を実施していない 約42.2%

3割近くは在宅勤務の実施が一時的なものにとどまっており、在宅勤務の難しさがうかがえます。

一般にテレワークの課題として「有給休暇が取得しにくくなる」「オンオフの切り替えが難しく労働時間が長期化する」「業務内容の把握が難しい」などが挙げられます。テレワークを導入するためには業務内容や働き手の特質を見極め、きめ細かい対応が求められるでしょう。

なかにはテレワークに向かない業種や業務もあります。しかし、最初から「テレワークを導入することはしない」と決めてしまうのではなく、勤務形態についてさまざまな可能性を検討し、選択肢を広げておくことが重要です。各社の業務内容や懸念事項に応じて柔軟に、かつ段階的にテレワークを導入することも必要でしょう。基本的な導入プロセスを3段階で紹介します

なお、テレワークの幅は広いですが、ここでは在宅勤務でテレワークを行うことを念頭に導入プロセスを見ていきます。

テレワーク導入の第一段階 現状確認

テレワーク導入に当たり最初に整理しておきたい項目を紹介します。

まずはテレワークを導入する意義を考えよう

テレワークを導入する目的を明確にします。これは享受したいメリットを得るために不可欠です。仮に目的が明確でないと、逆に働きにくくなってしまったり、業務効率が落ちてしまったりする可能性があります。

例えば、テレワークを導入することで次のようなメリットが得られます。

企業側のメリット

  • 通勤時間による勤務地の制限がなくなるため、広範囲な地域から優秀な人材を集めることができる
  • 従業員への交通費やオフィス賃料などの経費が軽くなる

働く側のメリット

  • 通勤時間の削減ができる
  • 主体的に業務を行うことで効率的に働くことができる
  • 居住地をより自由に選択できる
  • 子育てや介護など、出勤が難しい場合でも仕事が継続しやすい

企業側と働く側の双方にメリットがあることがわかります。ただし、企業と働き手のニーズが合致するとは限りませんので注意が必要です。対象業務や導入推進の担当者を確定し、企業と働き手双方にとって望ましい形で導入を進めます。最初から全業務をテレワーク化するよりも、導入しやすい業務やニーズのある従業員を対象にして導入していくといいでしょう。

現状を確認し、問題点を洗い出そう

メリットのあるテレワーク導入のためには、現状把握を丁寧に行うことが必要です。現状を確認することで、テレワークを導入する際の課題や変更すべき点を見つけていきます。主な項目は次のとおりです。

  • 就業規則
  • 労働時間制度、勤怠管理、業務管理
  • 人事評価やマネジメント方法
  • 各種業務の申請や承認方法
  • 各種情報・ファイル、資料やデータなどのセキュリティ基準
  • 利用しているICT環境

この段階ならテレワークを導入するために必要な部分のみ洗い出していくのがいいでしょう。また、ここでは方向性の決定や改革案の提案で問題ありません。

ここはあくまで準備段階です。そのためテレワークを導入しやすい業務や、テレワークのメリットが大きい従業員を念頭に置いてテレワーク化を提案していきます。ここでメリットを明確に示せればテレワークに積極的でない人も考えが変わってくるでしょう。また部分的でもテレワーク導入を提案することで、現状ではテレワークになじまない業務も、テレワーク導入への対応策が見つかるかもしれません。

第一段階を丁寧に現状に即した形で進めることにテレワーク導入の成否がかかっていると言ってもいいでしょう。

テレワーク導入の第二段階 実施準備

第二段階で導入の具体化を進めていきます。テレワークの開始時期を設定し、そこから逆算して実施計画を立てると準備がスムーズでしょう。なお、実施計画には当初から導入後の「振り返り・検証」「改善策」などを盛り込んでおきます。

社内ルール、ICT環境、セキュリティ対策の3つを整える

テレワークを導入するために整えるべきことは「社内ルール」「ICT環境」「セキュリティ対策」の3つです。

1:社内ルール

「社内ルール」では、前段階の現状確認に基づいて次のような項目を決定していきます。

  • テレワークの対象業種、対象者を選定
  • テレワークの実施頻度
  • 在宅勤務用の労働時間規定(通常の労働時間制、フレックスタイム制など)
  • 勤務時間の確認方法
  • 評価方法

就業規則や人事評価をこの機会に大幅に改革する方法もありますが、当初から大きな変更を実施するのはあまりおすすめできません。例えば多くの企業では就業規則は変えず、付則としてテレワーク勤務規程を作成しています。人事評価について、出社する従業員と在宅勤務の従業員で評価方法を変える場合は、公平性を確保するのはもちろん、評価方法を丁寧に説明しなければなりません。

上記のほか、通信費の負担方法や業務指示の方法などについても決定します。

2:ICT環境

  • どのようなシステムを採択するか
  • 業務に利用する端末の規定
  • 従業員間のコミュニケーションツールや、データ共有方法の確認

システムについては現状のICT環境を最大限活用する方法もありますし、将来を見据えて高セキュリティで情報共有が容易なシステムを導入する選択肢もあります。既存のルールやICT環境をそのまま活用する方が、テレワークの導入はスムーズですし、コストも抑えることができます。ただし、セキュリティが脆弱(ぜいじゃく)な場合は新たなシステム導入が必要です。

従業員間のコミュニケーションやデータ共有方法も、必ずしも新しいツールやサービスが必要とは限りません。コミュニケーションツールについては、従来利用しているメール、電話、チャット、もしくはオンライン会議などが利用できます。またデータ共有方法も既存のクラウドサービスやメールで足りることは多いでしょう。

ICT環境の整備は新規に導入する部分と、既存のツールやサービスをうまくテレワークに組み込む部分があります。両者のバランスを取ってテレワーク環境を整えていきましょう。

3:セキュリティ対策

セキュリティ対策は「人為的なセキュリティ」と「技術的なセキュリティ」に大別されます。後者に関しては、前述のシステム選択に負うところが大きいので、ここでは人為的なセキュリティについて考えます。

人為的なセキュリティとは最終的に、テレワーカー自身の危機意識に左右されます。例えば「社外から社内システムにアクセスするための認証情報を適正に管理する」ことや、「パソコンの紛失に注意する」などが重要です。テレワーカーのセキュリティ意識に左右されるからこそ社内で一定のルール制定が必要です。

テレワーカーへの研修を行おう

就業規則や勤怠管理を変更しICT環境を整え、完成度の高いセキュリティルールを制定したとしても、それが従業員に伝わらなければ正しく運用されないでしょう。テレワーカーに対してテレワーク体制を周知し、セキュリティ対策や情報リテラシーについての研修をします。新システムや新たなツールを導入する場合は特に丁寧な研修が必要です。また必要に応じて、出社する社員への研修も行いましょう。

このような準備を経て、テレワークを導入していきます。

テレワーク導入の第三段階 実施と改善

テレワーク導入後は、実施計画のとおり導入後の振り返りや検証を行い、改善すべき点を見つけていきます。テレワークを導入したらそれで「成功」となるわけではありません。テレワークを継続して成功させるために、導入後の検証が大切です。

なお、新たな試みが軌道に乗るまでは時間がかかるでしょう。すぐに結果が出ない可能性が高いので、3ヶ月以上は実施して効果を検証したいところです。問題点や不満をこまめにすくい上げる仕組みを作っておくといいでしょう。不満や問題提起があったら素早く対応します。そうしてトライ&エラーを繰り返せば最速でテレワーク体制が改善していくはずです。

このように実績を積み、社内の理解を得ていくことで、テレワークを長く浸透させることができるでしょう。

テレワーク導入を成功させるためには社内の協力が不可欠

テレワーク導入でシステムや就業規則など、社内インフラを整えることは重要です。同時に働き手が安心してテレワークに移行できる作業フローやフォロー体制を整えます。会社の業務や働き手のニーズに配慮しながら導入を進めることで、会社にとっても働き手にとってもメリットのあるテレワーク体制ができ上がることでしょう。

 

参考: