国税庁が管轄する電子帳簿保存法とは?改正における見直しポイントと実務対応

国税庁が管轄する電子帳簿保存法とは?改正における見直しポイントと実務対応

業務効率化

2021年に改正、翌2022年1月から施行となった電子帳簿保存法。時代の流れに合わせ、国税関係の帳簿や各種書類についてデータ保存を認めるといった内容ですが、企業にとってはどのような法律であり、どのような対応が求められるのでしょうか。

今回は電子帳簿保存法の基本的な知識とともに、改正に伴い必要となる実務対応について解説していきます。

電子帳簿保存法とは?

初めに電子帳簿保存法の誕生の背景、これまでの改正の経緯などを解説します。

電子帳簿保存法が誕生した背景

電子帳簿保存法とは、法人や個人事業主に対して法律により保存義務を課されている国税関係の帳簿や書類を電子データとして保存できるよう、その方法を定めた法律です。

法人税法や所得税法により、企業には7年間は国税関係の帳簿や書類を保存する義務が課されています。日々発生する取引の全容を記録し、保存するのは手間がかかるだけでなく、膨大な量に及ぶ紙の保管場所が必要となっていました。

一方、情報化社会、ペーパーレス化の流れを受けて、会計処理の分野でも電算機処理が増加していきます。電子化を進める企業からは、帳簿書類の電子データやマイクロフィルムによる保存の容認についての要望が上がるようになり、電子帳簿保存法が制定。

電子帳簿保存法の導入により、国税関係帳簿書類についてハードディスク、コンパクトディスク、DVD、磁気テープ等による電磁的記録、スキャナによる読み取りデータ、電磁的記録を出力したマイクロフィルムによって保管できる制度が確立されました。

これまでの電子帳簿保存法改正の経緯

電子帳簿保存法の、2022年以前の主な改正の経緯は以下の通りです。

  • 1998年:電子帳簿保存法施行。国税関係帳簿・書類の電子保存が認められる

電子帳簿保存法の制定された当初は、電子データとして作成されたデータの保存のみが対象とされており、紙ベースの書類からのスキャナ保存は対象外とされていました。

  • 2005年:e-文書法の発布に従い電子帳簿保存法改正

e-文書法は保存が義務付けられている書類全般に関する法律で、電子帳簿保存法よりもさらに広い範囲をカバーしています。

この改正により、国税関係書類(決算関係書類を除く)についてのスキャナ保存が可能となります。要件として、電子署名が必要、かつ3万円未満の国税関係書類に限定されました。

  • 2015年:要件が緩和され3万円未満の金額基準撤廃

同時に電子署名も不要になり、定期検査などの適正事務処理要件が追加されます。

  • 2016年:デジタルカメラやスマートフォンによる撮影での電子データ化が承認

IT機器の急速な浸透を受けて、容認されるデジタルデータの枠が広げられました。

  • 2020年:キャッシュレス決済の場合には領収書が不要となる

キャッシュレス決済の一般化が進み、領収書に関する要件が緩和されました。

このように電子帳簿保存法は誕生後、時代の要請に従って改正が重ねられてきたことがわかります。さらに変更が加えられた2022年の改正については、以下の項で解説していきます。

電子帳簿保存法 改正の背景

2022年の電子帳簿保存法改正の背景には、電子データによる保存が国の期待通りに進んでいなかったことが挙げられます。

すでに制定から20年余りを経ているにもかかわらず、要件の厳しさから企業の導入の動きは鈍いものでした。近年急速に浸透したIT技術活用に合わせた2015年以降の緩和によっても、条件の厳しさから敬遠する企業が多く見られました。

事前承認・複雑な書式・求められる添付資料の多さといった承認申請の手続きや審査時の負担は、導入へのハードルの高さを感じさせます。また業務プロセスの見直し・社員への教員・ルール整備など電子化への運用体制整備を伴うことも、一層電子データ保存を難しくしていました。

そんななか、新型コロナウイルスの影響下で日本国内におけるデジタル化の遅れと、そこに起因する課題が顕在化。紙とハンコをベースとする業務フローの非効率性・非合理性が浮き彫りとなります。

テレワーク・リモートワークにスムーズに移行できない企業の実体や、行政手続きのアナログ・もたつきが表面化し、社会的な電子化の必要性が明らかとなりました。

加えて近年の社会構造の変化による人材不足を改善していくためには、手続きの簡略化や複数人による確認の廃止、事務作業の軽減などが必須の課題です。

企業の生産性向上に向けた取り組みの促進に向け、電子帳簿保存法改正による電子化への対応から生じるメリットを、さらに社内全域のペーパーレス化、デジタル化につなげたい狙いがあります。

2022年の改正内容と今後必要となる実務対応

2022年1月スタートの電子帳簿保存法改正の主な内容と、企業側に求められる対応を解説します。

主な改正内容

〇要件の緩和

  • 事前承認の廃止:2022年1月1日以後に備付けを開始する国税関係帳簿又は保存を行う国税関係書類について、税務署長の事前承認制度が廃止され、手続きが不要となります。
  • タイムスタンプ要件の緩和:2022年1月1日以後に行うスキャナ保存についてタイムスタンプ要件が緩和され、付与期間が最長約2カ月と概ね7営業日以内とされました。

タイムスタンプの詳しい解説は、「電子帳簿保存法のタイムスタンプとは?基本知識と改正後の要件について解説 」の記事をご覧ください。

  • 適正事務処理要件の廃止:相互けん制、定期的な検査及び再発防止策の社内規程整備等の適正事務処理要件が廃止されました。
  • 検索要件の緩和:記録項目が取引年月日その他の日付、取引金額及び取引先のみとなり、一定の条件下において、システムへの細かな要件での検索機能の確保が不要となりました。

〇電子取引のデータ保存の義務化

これまで電子取引の関連書類は、紙に印刷して保存することが可能でしたが、2022年の改正では電子データでの保存が義務付けられます。義務規定であるため、事業規模に関係なくすべての事業者が対象となるのに注意が必要です。

2022年1月1日から2023年12月31日までの2年間は紙の出力でも認められる宥恕措置が置かれますが、準備が遅れている企業も、その間に完全に対応できるようにしておく必要があります。

企業として必要となる対応

電子帳簿保存時のシステム要件を満たせるよう、各要件への適用状況を確認していく必要があります。

〇真実性の確保

要件1 訂正・削除履歴の確保(帳簿)

  • 記録事項の訂正・削除を行った場合の事実内容を確認できる
  • その業務の処理に係る通常の期間を経過した後に行った場合には、その事実を確認することができる

タイムスタンプを付した取引情報の授受を実施し、情報の確認フローを確立しておく必要があります。訂正や削除を明らかにできるシステムを用い、訂正や削除を容易にできないよう事務処理規定を定めます。

要件2 相互関連性の確保

  • 電子保存された記録事項とその帳簿に関連する他の帳簿の記録事項との間で相互にその関連性を確認できるようにしておく

関連する帳簿のリスト化を行い、情報の更新に伴う記録の食い違いの発生を防止します。

要件3 関係書類等の備付け 

  • システム関係書類等(システム概要書、システム仕様書、操作説明書、事務処理マニュアル等)の備付けを行う

関係書類が散逸することのないよう一覧表を作成し、設置場所を決定します。

〇可視性の確保

要件4 見読可能性の確保

  • 電子保存された内容を必要に応じてディスプレイの画面及び書面に明確かつ速やかに出力できるようにしておく

表示の求めに迅速に対応できるようデータの整理・保存を行い、操作方法を習熟しておきます。

要件5 検索機能の確保

  • 「取引年月日」「取引金額」「取引先」で検索できる

データ作成時のルールを徹底し、検索への対応を確認しておきます。

企業として行うべき対応としては、以下の3点がポイントとして挙げられます。

  • 各用語も含めた電子帳簿保存法への理解の浸透:適宜勉強会や研修会を実施し、関連部署や担当者への教育機会を提供する
  • 電子帳簿保存法に即したシステム選定・デジタル化の推進:法令の求める要件を満たすシステムを導入すると同時に、各業務におけるデジタル化を全体的に進める
  • 業務上の運用ルールの規定と周知:決められたフローに従い、電子帳簿保存法の要件から逸脱しないデータ保存が実施できる仕組みづくりを行う

具体的には、全部門における取引の洗い出しを行い、デジタル化が即時必要となる取引についての優先的な対応を進めていきます。またPDF化やデータの受け渡しについての手順書を策定し、法令で規定されるデータ変換などの運用を実際の現場で円滑に進められるかの確認も必要です。

取扱説明書の備付けや見読性・検索性の確保といった各種要件とのすり合わせを一つひとつ丁寧に行い、見落としのないよう吟味していくことで、法令に対応できる体制を整備することができます。

なお、今回の改正では、大幅な条件緩和の一方、不正があった場合に重加算税が10%加重される、厳罰化も盛り込まれています。対応が不十分で法に抵触するといった事態にならないよう、着実に準備を進めていきましょう。

電子帳簿保存法改正に合わせた合理的な業務の見直しを

対外的な電子データの活用は企業活動において、すでに避けては通れない課題となっています。今回の改正を機会に全社的な業務の見直しを図り、デジタル化を進めておけば今後のさらなる変革にも対応しやすくなります。企業としてやるべきことは多くありますが、その分将来的に得るものも大きいはず。自社のみの対応に不安がある場合には、電子帳簿保存法への対応に精通したプロの力を借りるなどして、一歩一歩環境を整えていきましょう。

法令に則した対応をしていくためには、日々の業務の中で大量に発生する電子や紙の証憑書類を適切に管理する必要があります。リコーの「RICOH Desk Navi」は、企業の資産である情報の一元管理機能により、確実な法令遵守をサポートしています。電子帳簿保存法への対応の際には、ぜひご検討ください。

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