ワーク・アズ・ライフとは?これからの日本に必要な価値観

ワーク・アズ・ライフとは?これからの日本に必要な価値観

働き方改革

働き方改革」とともに「ワーク・ライフ・バランス」という言葉が世に出て久しくなりますが、近年これに異議を唱える「ワーク・アズ・ライフ」という新しい概念が出てきました。今回はワーク・アズ・ライフとは何かを解説し、ワーク・アズ・ライフを実践するためのポイントを紹介します。

ワーク・アズ・ライフとは

ワーク・アズ・ライフは、筑波大学教授でメディアアーティスト、研究者、実業家でもある落合陽一氏が提唱した、働き方についての考え方です。一言で言えば「睡眠時間以外のすべては仕事をする」ということですが、「まるで仕事人間になれということ?」と思ってしまうのは少々早合点です。要は、生活や趣味も仕事の一部として考える(もしくは仕事を生活や趣味の一部と考える)、仕事とそれ以外との分け目をなくした考え方です。

ワーク・アズ・ライフは「ワーク・ライフ・バランス」に異議を唱える言葉です。ワーク・ライフ・バランスは、仕事と、それ以外の家族との時間や趣味といった時間のバランスを保つという考えが基本です。つまり、ワーク・ライフ・バランスの考え方では、仕事と生活が明確に区別されているのです。これに対し「ワーク・アズ・ライフ」はその2つを分けずに融合させること。苦しいワークをして、バランスをとるためにライフを充実させるというのではなく、ワークとライフの両方に価値を置き、人生全体を充実させていくということです。なお、落合氏の言葉を引用すると、ワーク・アズ・ライフの定義は「差別化した人生価値観を、仕事と仕事以外の両方で生み出し続ける」ことです。

落合氏は、ITやインフラの発展により、産業革命以前の日本が農業を営んでいたような働き方が可能になってきていると言います。もともと日本人は季節にあわせて畑を耕し、何かを作りながら暮らしていました。そのような日本人が西洋的なワーク・ライフ・バランスを真似する必要はなく、東洋的な生活スタイルに戻るほうがむしろストレスは少なくなると唱えています。

ワーク・アズ・ライフをするために必要なこと

では、ワーク・アズ・ライフを実践して、人生を充実させていくには何をする必要があるでしょうか。

ストレスマネジメントをする

落合氏は、「これからは『タイムマネジメント』から『ストレスマネジメント』の時代だ」と述べています。従来の「労働する時間に価する報酬をもらう」という考えでは、多くの報酬をもらうためには長時間働く必要があり、苦痛やストレスにつながってしまいます。また落合氏は、自身の体験談として、1日に19時間続けて研究をしていたとしても、苦には感じないと語ります。それぞれの人が、ストレスを感じない仕事をし、その結果として報酬をもらうという流れを作ることができれば、人生全体のストレスが減り、充実した毎日を過ごすことができるでしょう。つまり、決められた時間割で動くのではなく、何が楽しくて(ストレスフリーなのか)、何が楽しくないか(ストレスなのか)を見極め、コントロールしていくことが重要なのです。ただし、すべてがストレスフリーの状態ではなく、10%のストレスをかけることが、成長するポイントだとも述べられています。

給与よりも学びや経験を優先する

また落合さんは、現在の日本のビジネスマンの多くが金銭を最上と考える「拝金主義」に問題がある、と指摘しています。つまり、仕事を選ぶ条件として、給与額を第一優先とする考え方を改めよということです。もし給与が下がったとしても、未経験のフィールドに飛び込むことは、学びたいものを学べるという利点があります。長い目で見たとき、自分の価値を高めてくれる経験を得ることは、表面的な給与額より貴重だとの視点に立った主張なのです。

能力を組み合わせたポートフォリオを作る

ひとつの能力に固執するよりも、自分のなかで価値を創り出すこと、それを組み合わせてデザインしていくことが、多様化していく時代を生き抜く方法でもあります。現在、もしあなたが、ひとつの専門的な技能、あるいは知識によって報酬を得ている状態なのであれば、趣味としてでも、他の人があまりやっていない何かで、人が喜ぶことを始めてみるのもいいかもしれません。その経験が強みとなり、新たな可能性が広がることもあるでしょう。

他人と共存する

当然ながら、好きものや得意なものは人それぞれです。自分は嫌いなことでも、他人は好きな場合も多々あります。ですから、苦手なものは得意な人に任せるのが効率的なのです。苦手な作業、嫌いな作業を無理に行っていると生産の効率も作業の質も落ちてしまいます。違う能力を持つ人が共同でそれぞれが得意とすることを行うことができれば、生産性や作業の質の向上にもつながるでしょう。

ビジネスの需要もめまぐるしく変わる時代に生きる世代は、今必要とされていることだけでなく、将来も見据えた多角的な投資が必要なのです。

ワーク・アズ・ライフによる効果

ワーク・アズ・ライフを実践することにより、どんな効果が期待できるでしょうか。

  1. ストレスが少なくなる
  2. モチベーションが上がる
  3. 障害の有無や性別・年齢に関わりなく仕事ができる
  4. 生産性が上がる
  5. 個人が成長できる
  6. 社会が成長できる

個人にとっては、ストレスを自分なりにコントロールしていくことで、精神的な負担は軽くなるでしょう。好きなことを追求していくため、仕事と趣味の境界は曖昧になり、ワクワクして仕事に取り組むことができるようになります。そうなれば、仕事に取り組むモチベーションの向上につながります。また、自分に合った仕事をするということは、障害の有無や性別・年齢に関わりなくそれぞれ自分に合った仕事ができるということです。会社にとってもモチベーションの高い社員が増え、雇用の幅が広がり、何よりそれぞれの活動時間が増えることで、生産性が上がるでしょう。また、個人がそれぞれにモチベーションを持って成長していくということで、日本の社会も成長していくことが期待されます。

IT化や多様化が進み、在宅ワークや副業を認める会社も増えるなど、働き方は劇的に変化しています。変革が進むなか、働き方の価値観も変わることは自然なことと言えます。ワーク・アズ・ライフという、欧米の真似でなく日本にあった人生の価値観を知ることは、今後を生き抜くヒントになるでしょう。

参考: