労働時間短縮は難しい?課題や対策方法をおさえよう

労働時間短縮は難しい?課題や対策方法をおさえよう

働き方改革

働き方改革の一環として労働時間短縮に取り組む企業が増えていますが、一方でジタハラ(時短ハラスメント)や持ち帰り残業といった問題も発生しています。労働時間の短縮は、単に労働者一人当たりの労働時間を減らすだけでは解決できません。そこで、労働時間短縮の目的を見直し、労働時間短縮推進における課題や対策方法を考えます。

なぜ労働時間短縮が必要なのか

労働時間短縮は、政府主導で進められている働き方改革の一環として取り組まれています。日本で働き方改革が必要な理由として、少子化による労働力不足が挙げられます。国立社会保障・人口問題研究所によれば、生産年齢人口は2013年には約8,000万人でしたが、2027年には7,000万人、2051年には5,000万人を下回ると予想されており、日本経済の維持と発展が危ぶまれています。

労働力不足の対策として、女性や高齢者なども働きやすい環境を整備して労働力を確保するとともに、出生率をあげ、さらに生産性を改善することで国の競争力をつけることが提唱されています。女性や高齢者だけでなく誰にとっても働きやすい環境づくりのためには、ワークライフバランスが重要であり、このため、労働時間短縮や長時間労働の是正に取り組む企業が増えています。政府も長時間労働の是正のため、罰則付き時間外労働の上限規制の導入法案を出すといった取り組みも行っています。

さらに、長時間労働は心身の健康障害につながります。厚生労働省の過重労働による健康障害防止のためのガイドラインでは、時間外や休日労働時間が月100時間超または2~6カ月平均で月80時間を超えると健康障害のリスクが高まるとしており、月45時間以内におさめることが基準としています。

労働時間短縮の内容とメリット・デメリット

労働時間短縮をすすめるにあたっては、以下のような措置がとられるのが一般的です。

  • ノー残業デーの導入

「毎週水曜日は残業なし」とするなど、特定の日に残業を禁止します。

  • 休暇の取得推進

「有休休暇を完全消化する」など全社の目標を決め、上司から部下に働きかける施策です。

  • 所定労働時間の短縮

「退社時間を18時から17時30分に早める」など、退社時間や出勤時間を調整します。

  • 退館時刻の設定

「22時になったら館内の電気を強制的に消す」など、所定の時間に退社せざるをえないようにします。

  • フレックスタイム制

「9時~15時」などの特定の時間をコアタイム(必ず勤務しなければいけない時間)とし、それ以外の時間の出退勤は自由にできるようにする制度です。

労働時間が短縮されることで、以下のようなメリットがあります。

  • 育児や介護、趣味などに時間を使うことができる(ワークライフバランスの実現につながる)。
  • 社員の定着率がアップする。
  • 企業のイメージアップにつながる。

一方で、労働時間が短縮されると以下のようなデメリットもあります。

  • 業務内容や業務量が変わらないまま労働時間が短縮した場合、社員ひとりひとりの負担が増える。

さらに、社員がこなせない業務が管理職にまわって、管理職の負担が増える。

  • これまで業務に役立つ勉強や自己啓発、社員教育や研修にあてられていた時間も短縮せざるを得なくなる(社員が成長しにくい状況になりかねない)。
  • 顧客へ対応できる時間が限られることでサービスが悪くなり、クレームが発生する恐れがある。

労働時間短縮の課題と対策

労働時間短縮を進めるうえで一番問題となるのが、労働時間が減ることで与えられている業務がこなせなくなってしまうことです。このため社員ひとりひとりの業務内容が見えないまま上司が労働時間短縮を強要するジタハラ問題や、残業禁止で仕事を家でこなす持ち帰り残業問題が発生しています。どちらもメンタルヘルスに影響しますし、持ち帰り残業で会社の情報漏洩問題も発生しやすくなります。

こうした問題は、これまでと同じ業務のやり方を続けたまま労働時間だけ短縮することで発生しますから、次のような対策が必要不可欠となります。

  • 労働時間短縮の前に、社員一人一人が何をどれだけやっているのかを十分把握し、特定の社員に負担がかからないように業務を分担する。
  • 非効率かつ無駄に時間を使っている業務がないかチェックし、業務の効率化を図るためIT化できるところはIT化する。
  • 長時間働くことイコール仕事ができるという意識を改革し、短時間で業務をこなせる能力を評価するようにする。
  • 業務の重要度を明確にし、会社全体で優先度を設定して、それらを「見える化」する。

まずは、社内の労働環境を把握することが肝心

労働時間短縮は、働きやすい環境のための重要な施策の一つですが、単に時間を短縮するだけでは効果は期待できないどころか悪影響も出かねません。労働時間短縮に取り組むためには、まず社員一人一人の業務内容と量を把握することが重要です。ITツールも利用して効率化を進めることはもちろん、無駄な仕事に時間を使わないようにするなど意識改革が必要です。

参考: