ナレッジマネジメントとは?知的財産を創造し企業力を高めるための手法

ナレッジマネジメントとは?知的財産を創造し企業力を高めるための手法

業務効率化

企業内には、これまで活用に至らなかった貴重な経験やノウハウなどの情報が数多く潜在しています。ナレッジマネジメントはそうした情報を掘り起こし、共有化を図ることにより新たな知的財産を創造していく手法です。厳しい環境下にある企業経営にあって、自社独自の経験やノウハウなどの活用は大きな力となります。

ここではナレッジマネジメントの概要や求められる背景、実践方法について解説していきます。

ナレッジマネジメントとは

ナレッジマネジメントとは、組織内にある知識や経験、ノウハウなどのナレッジを共有しムダなく活用することにより、新たなナレッジの創造、イノベーションの促進、生産性の向上などに役立てる経営手法です。

ナレッジマネジメントの概要

ナレッジマネジメントの概念は、1990年代に一橋大学大学院の野中郁次郎教授らが提唱。1995年に出版した著書が世界的ベストセラーになったことで、企業のための理論として広く知られるようになりました。

ナレッジは知識を意味しますが、企業にとってのナレッジには、知識や経験、ノウハウ、スキル、テクニック、考え方、知見、事例など、組織にとって有益で多種多様な情報が広く含まれます。企業にとって価値のあるナレッジの戦略的管理をナレッジマネジメントと呼びます。

事業を通じて取得した各種データや、言語化や数値化された知識・技能・ノウハウなどの形式知のほか、言語化に至っていない個人が保有する暗黙知(例えば、ベテラン・熟練工のスキル、経験値など)も、すべてナレッジマネジメントの対象です。ナレッジマネジメント実現のためには、潜在する暗黙知を言葉や数値に置き換えた形式知に変換し、共有可能な状態にする必要があります。

SECIモデル

必要に応じて暗黙知を形式知に変換し、適切に管理して新たな暗黙知を生み出すプロセスモデルが「SECIモデル」です。SECIモデルは以下の4つのプロセスから構成されます。

 1. 共同化(Socialization)

個々が所有する暗黙知を、共通体験を通して暗黙知のまま他者に伝達するプロセス。例えば、上司が仕事をする様子を見せて部下が覚えるといったように、五感を通して共有します。

 2. 表出化(Externalization)

共有された暗黙知を形式知に変換するプロセス。例えば、1.で共同化したノウハウを、話し合ってマニュアルに落とし込み、言葉や数値、図式などで表現します。

 3. 連結化(Combination)

複数の形式知を組み合わせて、新たな形式知を創造するプロセスです。例えば、部署や部門ごとにあったマニュアルを全社で統合し、より包括的で実践的なマニュアルに仕上げていきます。

 4. 内面化(Internalization)

共有された暗黙知を形式知に変換するプロセス。例えば、1.で共同化したノウハウを、話し合ってマニュアルに落とし込み、言葉や数値、図式などで表現します。

SECIモデルについての詳細は、「 SECIモデルとは?ナレッジマネジメント推進のためのプロセス」をご覧ください。

ナレッジマネジメントが必要とされる背景

ナレッジマネジメントが注目される背景には、次のような社会環境の大きな変化があります。

雇用状況の変化

まずは終身雇用制度の事実上の崩壊により、企業のあり方が大きく変わってきたことです。

非正規雇用が多数の割合を占めるなど、企業内の雇用形態は多様化しています。転職への抵抗感が薄れ、ひとつの企業にこだわらずに働く人も増えてきました。

終身雇用が一般的であった時代では、長く勤める人材が多く、そのほとんどが新卒から定年まで同じ企業に所属していました。人材が固定されていた時代は、組織内でのナレッジの共有が容易となる環境が保たれ、自然に継承されてきました。

現代のように人材が流動化している時代では、こうした自動的な機能に頼ることができず、ナレッジの伝達を意図的に行う必要があります。

人材の入れ替わりが激しいと、個々人が持つノウハウや知識も社内に蓄積せず流出する恐れがあります。企業側には知的リソースを積極的に収集・管理する体制が求められます。

働き方の多様化

また昨今テレワーク・リモートワーク、サテライトオフィスなど、集約的な働き方から分散型への動きが加速。ノウハウや知識の共有がますます容易でなくなる傾向にあります。

今は市場のグローバル化および業務のIT化により、迅速な意思決定と行動が求められる時代です。暗黙知の自然継承を待っていては、組織内における有益情報の蓄積水準が不足し、競合他社との競争力に影響を及ぼす可能性があります。

企業側では社内に蓄積されたノウハウや個人のスキルを共有し、スピード感を持って成長戦略に組み入れていく必要があります。

ナレッジマネジメントを実践する方法

ナレッジマネジメントの実践においては、先に紹介したSECIモデルを基に、知識創造プロセスを繰り返していくことが必要となります。

SECIモデルの4つの「場」

SECIモデルではプロセスに応じて以下の4つの「場」が必要とされます。

  • 「創発の場」共同化が行われる場:他者と関わり知識共有のためのベースとなる環境
  • 「対話の場」表出化が行われる場:プレゼンテーションやミーティングなど、意図的に暗黙知を形式知に変換するための環境
  • 「システムの場」連結化が行われる場:形式知を持ち寄り、体系化していく環境
  • 「実践の場」内面化が行われる場:形式知を個人の暗黙知として定着するための環境

SECIモデルによるナレッジマネジメント実践の流れ

SECIモデルによるナレッジマネジメント実践の流れは次のようになります。

 1. 共同化:

経験やノウハウ、考え方などを共有するためにOJT、ロールプレイング、営業同行といった「共同作業」を行います。雑談の場の提供、飲み会、レクリエーションなど、暗黙知をより多く引き出すための仕組みづくりをすることも必要となります。

 2. 表出化:

ブレインストーミング、ワールドカフェなど、暗黙知を言語化、数値化するためのアイデアや意見を出し合う場を提供します。会話が流れてしまう一般的な雑談よりも、フォーマルでありながらも形式ばらずに自由な声を出せる場であることが理想的です。

 3. 連結化:

暗黙知から導かれた形式知を整理し組み合わせる作業。ICTの利用、グループウェアやSNSなどの活用により形式知をデータベース化し、既存の形式知と組み合わせていきます。

 4. 内面化:

社内で連結化された形式知の活用を推進。日常的な実際の業務を通じた個人の経験により、暗黙知への転換が図られます。

ナレッジマネジメントを成功させる方法

ナレッジマネジメントで効果を得るためのポイントとしては、以下のようなものがあげられます。

  • ナレッジマネジメントの目的を理解する

ナレッジマネジメントを推進していくにあたり、組織内で導入する目的を明確化する必要があります。目的と実施のメリットについて、社内での理解の浸透と意識の統一化を図ることが重要です。

当事者となる社員が、そもそもナレッジマネジメントが何を目指すものなのか、企業にとってどれほどの有益性があるのかを知らなければ、ナレッジマネジメントの成功はありません。

ナレッジマネジメントの実施に必要な考え方を浸透させ、共有化したい情報、共有すべき情報について意見を集約しておくことで、有効なナレッジ活用につなげられます。

ナレッジを共有しやすい仕組みや環境を整える

ナレッジマネジメントへの理解が得られても、実際にどのように情報を提供・蓄積していくのかが不明確では、実践できません。社内での情報共有が、日常の業務上でごく普通に行えるような環境整備を目指します。必要に応じてシステムの活用、業務プロセスや作業フローの見直しを図り、効率的なナレッジマネジメント体制を整えます。

ナレッジマネジメントに活用できるツールを導入することで、ナレッジ共有や検索性の向上が容易になります。主なツールには、以下のようなものがあります。

  • グループウェア型:部署やチーム間でスケジュールや情報の共有・管理が可能です。チャット・メッセージ機能、ワークフロー管理、タスク管理などの機能が搭載されています。
  • データマイニングツール型:組織や個人から収集した情報をAIにより分析し、価値ある情報を抽出することができます。膨大なデータから有用なナレッジを見出して活用するのに役立ちます。
  • 知的情報検索型:データベースにより一元管理された情報を、必要に応じで容易に取り出すことが可能です。
  • ヘルプデスク型(FAQ):蓄積されたナレッジを用いて課題や疑問を解決します。質問の内容も新たな情報として格納されます。基本的な知識習得にも役立つため、新人育成にも活用可能です。

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知識の共有により企業力の強化を図るナレッジマネジメント

ナレッジマネジメントが適切に実施されることで、それまで眠っていた情報が知識財産となり、企業経営を活性化していきます。

知識やノウハウ、経験などが個人に留まっていると、業務の属人化やノウハウ継承の妨げとなりかねません。それらを社内で広く活用できれば、新規事業の開発、生産性の向上への新たなきっかけとなる可能性もあります。企業の宝であるナレッジを集約し、大きな力へと変えていく取り組みが求められます。

属人化の弊害については、「属人化のデメリットとは?原因や対策もあわせて紹介」でご紹介していますぜひご参照ください。