テレワークの導入企業から見るテレワークの現状と今後

テレワークの導入企業から見るテレワークの現状と今後

働き方改革

政府主導で働き方改革が進められ、テレワーク、リモートワーク、サテライトオフィスなどといった言葉もよく耳にするようになりました。では、現在テレワークはどんな企業でどのくらい導入されているのでしょうか。今回はテレワークの現状やテレワークを導入した企業の実態や事例をご紹介します。

テレワーク導入の現状

テレワークを導入する企業が増えています。しかし導入検討中の企業からは、テレワークの効果や導入実態について疑問の声も多いのです。そこで、テレワークの現状をご紹介します。

テレワークをどう定義するか

厚生労働省では、テレワークを「ITC(情報通信技術)を活用し、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方」と定義しています。また、そういう働き方をする人をテレワーカーと言います。

テレワークを導入している企業の規模

国土交通省の2017年のテレワーク人口実態調査では、従業員数が多い企業ほど、テレワークの制度を導入している傾向にあります。この調査によると、従業員数1,000人以上の大企業の25.1%でテレワークが導入されています。導入している企業には、社員全員を対象としたテレワークを制度化している企業から、現在正式導入を前にテレワークの試行を行っている企業までが含まれており、現在テレワークを認めている企業という意味での数字が挙がっていることになります。

テレワークを導入している企業の業種

企業において、テレワークを最も多く導入している業界は「情報通信業」で、テレワーカーの割合は30%以上です。次に「学術研究、専門・技術サービス業」で、27.0%。その他の業種では10~20%程度に留まっており、最もテレワーカーの割合が低いのは「宿泊業・飲食業」で、7.2%となっています。

またテレワークを導入している職種は「管理職」「営業」「研究職」が多く、いずれもテレワーカーが30%前後となっています。

テレワーク利用についての制限

企業によっては、テレワークを導入していても、次のように利用が制限されている場合があります。

  • テレワークは一部の部門や職種に限られている
  • テレワークは役職、もしくは勤続年数などにより適用される社員が限られている
  • テレワークを利用する理由に制限がある

テレワーク導入企業の事例紹介

テレワークを導入している企業の実例から、テレワークのメリットや課題をご紹介します。

株式会社NTTドコモ

株式会社NTTドコモでは、2010年からテレワークを導入し、在宅勤務制度を利用できる範囲は全社員に設定しています。2017年以降はフレックスタイム制の対象も全社員に拡大し、在宅勤務制度と組み合わせて、柔軟な働き方が可能です。また年2回のキャンペーンによって、在宅勤務制度を活用するよう広めています。これらの施策や体制には、人事部のみならず、働き方改革に関心のある社員の現場からの声が生かされているのです。

(出典)報道発表資料 働き方改革推進に寄与する、テレワークICTとシェアオフィスをセットにした「ワークスタイル・イノベーションパッケージ」を提供開始-ドコモが自ら実施した結果、時間外労働時間が15%減少-

味の素株式会社

味の素では、2017年から全部門を対象にテレワークを導入しています。目的は、社員の退職を防ぎ、多様な人材を活用することです。それまで限定的だったテレワークをほぼ全社員(新卒採用勤続1年未満の者、試用期間中の者、休職者等は除く)に導入し、それぞれにパソコンを支給して「どこでもオフィス化」を実行しています。結果、移動時間を大きく削減し、業務を効率化できました。

(出典)味の素がテレワーク全部門に導入。当日の在宅勤務申請もOK、日数も制限なし|ニュースイッチ

P&Gジャパン

P&Gジャパンは、商品のメインターゲット層としても社員としてもワーキングマザーを重視しているため、テレワークの導入は必要でした。2008年からは全部門に在宅勤務制度を導入しましたが、なかなか利用者が増えなかったため、管理職から利用を勧めることで、利用を広げてきました。さらにビデオ会議システムやクラウドストレージ、チャットシステムなど、ICTの活用にも力を入れ、テレワークを支援しています。

(出典)P&G流、“使える”在宅勤務のコツ|東洋経済ONLINE

Sansan株式会社

Sansan株式会社の本社は東京ですが、全国4か所にサテライトオフィスを開設しています。徳島では古民家に通信基盤を整備して活用することで、テレワークと地域貢献を両立させ、社団法人日本テレワーク協会の「テレワーク推進賞」を受賞しています。

(出典)第12回【テレワーク推進賞】優秀賞を受賞|sansan

テレワーク導入企業について、今後の見通し

今後、テレワークの導入は進むのでしょうか。総務省、およびテレワークを導入している企業と導入していない企業のテレワークについての見通しをご紹介します。

総務省の見解

総務省では、テレワークを推進しています。テレワークや時短勤務制度による多様な働き方の実現は、少子高齢化による人手不足の解消策と考えているからです。また、テレワークにより労働力人口の都市部集中を緩和し、地方の活性化にもつながると期待されています。

導入している企業の見解

総務省の2017年の調査では、すでにテレワークを導入している企業の82.1%が、生産性向上などの効果があったと回答しました。特に育児や介護などの理由がある女性社員の退職を防ぐ効果が高く、女性の活躍を促進するためのひとつの方法として期待されています。

実際にテレワークを行っている人の声

実際にテレワークを利用している社員からは、次のような声が挙がっています。

  • 機会があればまた利用したい
  • 所属部門により利用しにくいところもあるので、もっと使いやすくしてほしい
  • 現在は利用に制限や面倒な手続きがあるので、もっと利用しやすくなってほしい

導入していない企業の見解

総務省の2017年の調査によると、テレワークを導入しない企業の理由として最も多かったものは以下のとおりです。

  • テレワークに適した仕事が無いから
  • 情報漏えいが心配だから
  • 業務の進行が難しいから
  • 社内のコミュニケーションに支障があるから

導入するメリットがよくわからないから、つまりテレワークを導入していない企業に導入推進するには、テレワークでも充分なコミュニケーションが取れることや、テレワークのメリットが理解される必要があります。また、テレワークを導入しやすくするためには、人事評価制度の変化や、社員全体のITスキル向上、充分なセキュリティ確保などが必要です。

テレワーク導入の流れは止まらない

大企業ではテレワークを導入する企業が増えています。少子高齢化や労働力不足の流れに対抗するため、テレワーク導入の大きな流れは止まらないでしょう。企業側でも自社にあったテレワークの導入方法や、より効果的な運用方法を考える段階にきていると言えます。

 

参考: