働き方改革の最短コースは、ノンコア業務の再定義

働き方改革の最短コースは、ノンコア業務の再定義

働き方改革

働き方改革による仕事の生産性の向上がますます注目され、重要なテーマになってきました。そのなかで耳にするのが、「コア業務」や「ノンコア業務」という言葉です。「コア」とは核や中心という意味なので、本来その会社が最も重視すべき業務で、売上や利益との関連性の高い仕事と定義できます。「ノンコア業務」はその反対ですが、ではいったいどこまでが“コア”でどこからが“ノンコア”になるのでしょうか。今回はコア業務とノンコア業務を再定義して、業務の見直しや改善に活用できるヒントをご紹介します。

コア業務とノンコア業務の見分け方と再定義

業務を見直すために、改めてコア業務とノンコア業務について新しい捉え方や考え方も合わせ、確認しておきましょう。

コア業務とノンコア業務

最もシンプルにこのふたつの業務の違いを説明すると、次のようになります。

  • コア業務とは売上や利益を直接生むような業務
  • ノンコア業務はコア業務を支援したり、それに付帯したりする業務

例えば、商品の販売は、売上や利益の源泉ですので、コア業務になります。一方その前段で、見込み購入者からの商品の問い合わせに対応するなどの仕事はノンコア業務に分類されます。しかし、ノンコア業務だからといって疎かにしていると、商品の販売につながらないケースが出てきますので、ノンコア業務であっても必要な仕事です。また、商品やサービスの種類によっては、この最初の問い合わせへの応対で後の商談が大きく左右されるような場合もあるでしょう。こういった場合は、直接的に利益につながる業務と見てコア業務と位置付けることもできるのです。

つまり、会社の仕事や扱う商材により、コア業務とノンコア業務の区分は微妙に異なることになります。ひとつの見方としては、BPO(業務のプロセスの一部を継続的に専門企業に委託)ができる業務はノンコア業務とすることもできます。BPOを検討する過程では、コア業務とノンコア業務の見極めをしっかり行うことが重要であると言えます。

時代とともに変わる「ノンコア業務」

最近は「働き方改革」という言葉をよく耳にします。例えば、対面の会議をWeb会議などに替え、移動時間や調整時間を減らす、そもそも重要性の低い会議の回数を減らし、拘束時間を削減するといった、働き方の改革方法があります。ただし、単にすべての会議を減らせばよいというわけではありません。会議にも経営意思の決定や企画立案のためのものから、月々の報告会までさまざまなものがあります。その結果から何が生まれるか、どのような価値を生む会議なのかという見極めが必要になのです。新しい商材を生む会議ならばコア業務、単なる報告会ならばノンコア業務という分け方ができるでしょう。時間だけを取り、過去について参照するだけの会議は、ノンコア業務と考えるべきです。

また、インターネットによるデジタルマーケティングが主流になりつつある今の時代は、ホームページや電子メールなど間接的な営業手法で見込み顧客を獲得し、商談成功率の高い順に対面営業をしていくことも少なくありません。靴を擦り減らして歩き回る営業は、売上に直結していたとしても、もはやノンコア業務の要素を含んでいると言えるのです。

業務全体を見直すためには、コア業務と考えていたものの多くが、実は「ノンコア化」している危険性があることを認識することから始める必要があります。

改めて、コア業務の重要性を確認

「コア業務」の大切さは誰でもが理解しているはずです。しかし、その定義や分類、捉え方は同じ会社でも部署や人により異なることがあります。改めてコア業務の重要性を確認しましょう。

コア業務の集中度・集積度が落ちるとどうなる?

もしコア業務を疎かにし、ノンコア業務の見直しをせずにそのまま放置した場合はどうなるのでしょうか。当然無駄な作業が増えるので、コストがかさみ、仕事全体に費やされる時間も長くなります。そのままでは進化はおろか、業務のスリム化もままならなくなるでしょう。ビジネスのスピードも鈍り、売上機会の損失が増えることになります。つまり、コア業務を軽視し、ノンコア業務を見直さなければ、「コスト上昇」と「売上機会損失」という二重の損失を生み、利益を圧迫するのです。

「選択集中」はコア業務のためになる?

コア業務と関連性の高い言葉に「事業の選択と集中」があります。リソース(人材や機材、資金)は限られているので、対象とすべき事業を自社の強い分野などに絞るという考え方です。たしかに選択集中することで、リソースの無駄使いは減ることになります。しかし、この戦略には注意が必要です。ひとつには事業を集中させる領域に、それに見合ったリターンが充分にあるかということです。そしてもうひとつが、事業領域を絞っても、ノンコア業務が肥大化したままでは、リソースの集中効果が弱まってしまうということです。選択集中を促し、生産性を高めるためにも、やはりコア業務とノンコア業務の見直しを同時に行わなければなりません。

生産性を高めるには、「ノンコア業務」が鍵

コア業務だけでは企業活動は成り立ちません。コア業務を充実させるためには、ノンコア業務にコストを掛けないだけではなく、よりコア業務を効果的に支援できるあり方を考えることが大切です。ここでは生産性を高めるためのノンコア業務の見直し方にについて考えてみましょう。

「効果が少ないもの」はノンコアという再定義を徹底

まずは「コア業務」と「ノンコア業務」を再定義することが重要です。これまでコア業務と考えられてきたもののなかから、ノンコア業務の要素を徹底的に洗い出しましょう。会議の分類でも述べたとおり、どのような効果が、どの程度の期間やコスト(投入する人材数等)で生まれているか、それがどう事業に役立っているかを考えることです。例えば、朝礼は、社員への情報の伝達や一日の仕事の始まりにあたり意思統一する時間として、これまで多くの会社で重視してきました。スタッフを多く抱える工場や店舗ではその効果は今でも期待できるでしょうが、スタッフが少ない事業所の場合、効果は限定的です。また、何件訪問したかを営業日報に書かせることは、本当に営業力の維持や推進に貢献しているのでしょうか。そういった現状に疑問を投げかける視点で仕事の一切を細分化し、見直してみましょう。

再定義された「ノンコア業務」をすべて排除・改革

再定義された価値の少ないノンコア業務は、徹底的に排除します。ここで重要なことは、過去の価値観や慣習にとらわれてはいけないということです。もちろん排除だけではなく、業務内容を見直すことで、ノンコア業務の比重を少なくする方法もあります。営業活動ならば、営業マンは見込み顧客へのプレゼンと契約だけを担当とし、新規営業はコールセンターがすべて担うといった大胆な体制変革もありえます。この改革が実現すれば、商品への問い合わせ対応のみだったコールセンターなどの営業窓口が、コア業務の要素を強めることになります。そして、ITを上手く活用することで業務を効率化できます。CRM(カスタマー リレーションシップ マネジメント)のシステムで顧客・営業情報をコールセンターと営業マンが共有すれば、問合わせの内容に応じて、重要な案件は営業マンがすぐに向かう環境を整えることが可能です。

定期的にノンコア業務の定義の見直しを

ビジネス環境に合わせて、コア業務とノンコア業務をしっかりと見極め、排除や改革を繰り返していくことで、企業の競争力を高めることができます。売上や利益などの成長性が鈍化したと感じたら、このコア業務とノンコア業務の再定義を実施し、適宜それぞれの業務内容を見直してみましょう。

 

参考: