ビジネスチャンスが広がる!コワーキングスペースとは

ビジネスチャンスが広がる!コワーキングスペースとは

働き方改革

ITの発展によって、固定のオフィスに縛られずに働くことが可能な時代となりました。自宅やカフェなど、自分一人で仕事を行うことができる環境は緊張感から解放される反面、人と接することが少なく孤立するという問題も見えてきました。コワーキングは、こうした問題を解決する方法として注目を集めています。改めて、コワーキングやコワーキングスペースについて紹介します。

コワーキングおよびコワーキングスペースとは

コワーキングとは、起業家、フリーランス、企業で在宅勤務が許可されている人など、働く場所を固定していない人たちが、ひとつの場所でオフィス設備や会議室を共有しつつ、それぞれの仕事を行うというワークスタイルです。そして、その場所となるのがコワーキングスペースです。

コワーキングスペースとシェアオフィスにはどのような違いがあるのでしょうか。一般的なシェアオフィスは、複数の企業が同じオフィスを共有しているワークスペースであり、働く人それぞれに区切られた空間が用意されています。一方、一般的なコワーキングスペースはオープンスペースとなっており、他企業の社員とも同じ空間を共有して働くというケースが多くなっています。つまりコワーキングスペースでは、他企業の人が隣に座っていることもあり得ます。その分、利用者同士が自分の専門分野以外の話題についてもコミュニケーションを取りやすいのが特徴と言えます。

実際には、このふたつのワークスペースの形態に明確な違いがあるわけではないと言えます。

コワーキングスペースの始まりと現状

では、コワーキングスペースはいつどこで始まり、現在はどのように利用されているのでしょうか。

コワーキングスペースは、1995年のドイツでその原型が作られ、現在のコミュニティー形成を重要視したスタイルは2000年代初頭に米・サンフランシスコで始まったとされています。以降、米国を中心に世界各地で急速に増えています。JETRO「米国におけるワーキングスペースの現状1(コワーキングスペース)」(2018年3月)によると、世界のコワーキングスペースの数は2017年で1万4,411件となっており、2022年には3万件を超えると予測されています。また、中国やインドを含むアジア太平洋地域において、今後も急速な成長が見込まれています。

日本では、2010年ごろから浸透してきたとされており、日本各地にコワーキングスペースができています。もともとフリーランスで働く人が中心でしたが、働き方の多様化によりリモートワークやテレワークの場所として利用する企業の会社員もここ数年で増えています。

コワーキングスペースのメリット・デメリット

コワーキングスペースを活用することのメリットやデメリットには、以下のようなものがあります。

メリット1:新しいビジネスチャンスを創出できる

同僚や上司のいないところで一人仕事をしていると、どこかで行き詰まってしまう、新しい情報も得づらくなってしまうといった問題があります。コワーキングスペースでは、さまざまな業種、企業の社員と同じスペースを共有するため、いろいろな人と話すチャンスがあり、新しいビジネスも生まれやすくなります。また、イベントなどを開催して利用者同士の交流を図っているコワーキングスペースも多く、人脈を広げるチャンスを得やすいと言えます。

メリット2:オフィスを低コストで利用できる

例えば、オフィスを一室借り続けようとすると、その賃貸料や電源などのインフラ設備費用、印刷機の設置料などがかかります。また会議室がなければ、適当な場所を探さなければならなくなります。コワーキングスペースでは、そういったものを他の会員と共有することで、コストを抑えることができます。

メリット3:仕事をしやすい環境が整っている

コワーキングスペースは、そこで働くことを目的に作られているため、仕事をしやすい環境が整えられています。例えば、カフェでは、長居するために注文を追加しなければ居心地が悪くなりますし、そもそも混雑時にカフェのスペースを占有し続けるのは気が引けます。また、社外秘の話をする際には周囲に気を配らなければなりません。また、店によっては賑やかすぎて、仕事に集中しやすい環境とは言えない場合もあります。コワーキングスペースでは作業や打ち合わせなど目的に合わせ、フリースペースや個室などを活用できます。
また、自宅でも静かな環境は作れますが、一人よりも、周囲で仕事をする人がいるとモチベーションが維持しやすい、集中しやすいと感じる人は多いのではないでしょうか。

以上は利用者についてのメリットを紹介しましたが、オフィス提供者にとっても、空きスペースを収益化できるなどのメリットがあります。

このようにコワーキングスペースにはさまざまなメリットがありますが、デメリットについても確認しましょう。

デメリット1:仕事に集中したいときに話しかけられる

他人とスペースを共有することは、交流できることがメリットです。反面、他社の人には話せない内容を尋ねられたり、仕事に集中したいときでも、隣の人に話しかけられたりする場合はあります。人間関係を維持しつつ距離を保つ工夫は社内で仕事をしていても同じですが、とくに他社の人とも接触する機会が増えるコワーキングスペースでは注意しなくてはなりません。とは言え、コワーキングスペースによっては集中したいときのスペースを設けていることもあるため、そういった場所を利用したり、ヘッドフォンをつけて集中していることをさりげなくアピールしたりするなど、解決できることもあります。

デメリット2:自宅に比べると料金が高い

前述では、オフィスを借りるより低コストで利用できる点をメリットとして挙げました。しかし、自宅で仕事をすることと比較すると、やはりコストがかかる場合が多いと言えます。

仕事の性質を考えて、メリットとデメリットを比較しながら、利用を検討するとよいでしょう。

主なコワーキングスペース

ここ数年では、日本でもユニークなコンセプトを持つものが登場するなど、コワーキングスペースも多様化してきています。以下に、代表的なコワーキングスペースを紹介します。

森永ヴィレッジ

森永製菓株式会社が株式会社ワイエムユーシーネットに委託し運営しています。ただの空き地に仲間が増え、“村”ができるように、ひとつの場所に人が集まり、自然とつながりができていく場所をコンセプトにしています。ニューヨーク・ロフトスタイルを目指したシックながらも温かみのある雰囲気のスペースです。田町駅から徒歩7分、品川や羽田空港へのアクセスも便利な場所にあります。床面積は300平方メートル。84席のコワーキングエリアや複数の貸し会議室、キッチン付きのイベントスペースなどが用意されています。

所在地:東京都港区芝浦1-13-16森永芝浦ビル2階
ウエブサイト:https://morinaga-village.com/

ワークスタイリング

三井不動産が「組織に所属するビジネスパーソンが自分に合った新しい働き方を実現する場」としてスタートさせた施設です。法人向けに3つのプラン、全国32カ所どこでも利用できる「ワークスタイリング SHARE」、目的や人数、期間に合わせて個室オフィスを選べる「ワークスタイリング FLEX」、泊まれるホテル型ワークスペース「ワークスタイリング STAY」を用意しています。

所在地:東京(19拠点)、神奈川、千葉、埼玉、宮城、広島、福岡、大阪、名古屋、北海道
ウエブサイト:https://mf.workstyling.jp/

Think Lab

JR飯田橋駅より徒歩1分の立地に、アイウエアの「JINS」が昨年スタートさせた、科学的アプローチで「集中できる環境」にこだわったコワーキングスペースです。神社の参道にヒントを得て設計されたエントランスや、人と目が合わないよう配置された椅子と机、文書のロジックなどをチェックするときとアイデアを創出するときなど、思考方法によって違う姿勢のパターンに合わせて設計された3種類の椅子が用意されるなど共有しながら個を重視する設計は徹底しています。さらに仕事の集中度合いを測ることができる眼鏡型ウエラブルデバイス「JINS MEME」を無料で貸し出しています。

所在地:東京都千代田区富士見2-10-2飯田橋グラン・ブルーム29階
ウエブサイト:https://thinklab.jins.com/

LODGE

Yahoo! JAPANが運営するコワーキングスペースです。1,330平方メートルの開放的な空間で、スタートアップ企業はもちろん、Yahoo! JAPANへの事業に興味がある方も利用できます。食事やドリンクを自由に持ち込むことができます。また、ラウンジやミーティングスペース、撮影スタジオなど、さまざまな設備があり、審査に通過するとイベントを開催することもできます。

所在地:東京都千代田区紀尾井町1-3 17F
ウエブサイト:https://lodge.yahoo.co.jp/

今後の働き方に影響を与えるコワーキングスペース

最初はニッチなサービスだったコワーキングスペースは、今や個人だけでなく企業で働く人の働き方に大きな変化をもたらしています。2018年2月に日本に進出した業界最大手のWe Work 社(米国)は、「(日本の)文化や働き方を変えたいとは思っていない。プラットフォームや業界を作れば自然と文化も変わっていく」と語っています。コワーキングスペースが、人々の仕事や生き方に大きく影響していく鍵となりそうです。

 

参考: