混沌とした時代、ファシリテーションのビジネス上の重要な意味を考える

混沌とした時代、ファシリテーションのビジネス上の重要な意味を考える

業務効率化

現代は、新しい商材やビジネス機会を見つけるのが、大変な時代と言えるでしょう。そこで注目されるのがファシリテーションです。「容易にする」「促進する」を意味する「facilitate」という言葉からきています。会議やプロジェクトなどの知的な活動を促進・支援するファシリテーションについて、その意味や意義を再確認してみましょう。

ファシリテーションとは

まずはファシリテーションの主旨や目的から見てみましょう。

ファシリテーションの主旨・概要

日本ファシリテーション協会によると、ファシリテーションの定義は次のようなものになります。

『ファシリテーション(facilitation)とは、人々の活動が容易にできるよう支援し、うまくことが運ぶよう舵取りすること。集団による問題解決、アイデア創造、教育、学習等、あらゆる知識創造活動を支援し促進していく働きを意味します。その役割を担う人がファシリテーター(facilitator)であり、会議で言えば進行役にあたります。』

ファシリテーターにあたる人物を置かない会議の場合、次のような問題が生じることがあります。

  • 議長の権限で議事が進行し、結論を導いてしまう
  • 声の大きな参加者の意見がとおりやすい(社歴の短い社員等は発言しにくい)
  • 報告者の報告のみで、情報交換、意見交換が成り立たない
  • 会議の目的、その結果の効果について検証されない

ファシリテーションでは、ファシリテーターがその問題を解決しながら、適正なディスカッションと情報交換の場とします。この部分が、ファシリテーターにあたる人物を置かない会議との主な違いとなります。つまり、ファシリテーションはグループが効率的・効果的に活動できる仕組みということが言えます。

ファシリテーションの目的と効果

ファシリテーションは、以下のようなことを目的として実施されます。

  • ある問題に対する解決策を探る
  • 新商品について自由に意見やアイデアを出し合う
  • 進行中のプロジェクトについて、改善・改革を同時に進めながら進捗管理する

その過程で、プロジェクトや会議の目的・課題などがメンバー同士で共有され、各自のミッションも明確になってきます。結果として、ディスカッションによる直接的な課題の解決やアイデアの創出のみならず、モチベーションの向上や、各自の知識と技術を引き出すことも期待できるのです。

ファシリテーションに必要なスキル

ファシリテーションをスムーズに行うためのスキルには、次のようなものがあります。

場をデザインするスキル

全員が参加し、その能力や情報、アイデア等を結集できるようにする枠組みがファシリテーションです。目標は設定しますが、到達するまでの過程でどれだけ得るものが大きいかがポイントになります。つまり、いかに生きた情報交換や議論ができるかが重要です。そのためにも、目標達成に向けての段階的な到達点を設定したり、必要に応じて新しく追加したり変更したりする必要があります。形式的では終わらないように、実働・実効を重視した柔軟な「会議の段取り」を作るスキルが大切なのです。

対人関係に関するスキル

「自由に意見を」と言われても、多くの社員が集まるそのなかで、互いに遠慮したり顔色をうかがったりして、問題提起が進まないことがあります。また、自由に意見を言えればそれでいいというわけではなく、意見交換を進めるなかで論点がずれたり、置き換わってしまったりしては、目標達成に近づくことができません。このようなメンバーの舵取り役となるためには、真摯にどんな意見にも耳を傾ける「傾聴」や、提示された内容に間違いがないか、不明点はないかなどを「復唱」で探り、必要に応じて適切な人に「問い」を投げかけアイデアや意見を引き出そうとする姿勢、言語化されていない発言者の意図を「解読」するなどのスキルが重要となります。

整理するスキル

多くの意見や情報が挙がった後は、それらをまとめて、目標に近づけるように整理していかなければなりません。この段階でもディスカッションが必要なので、途中経過をはじめ提出された意見や情報を、ときには図やチャートを使い、メンバーにわかりやすいようにビジュアル化することも求められます。そして、まとめるうえではロジカルシンキングをもって、参加者が理解できるかたちである必要もあります。

合意形成するスキル

意見の整理、絞り込みが進むと、いよいよ合意に向けて集約していきます。全員がひとつの結論に納得するのは難しいことで、意見の対立などが続くことがあります。ファシリテーターとしての能力がもっとも求められる場面でもあり、対立の解消や、共有ができる結論を探す必要があります。反対派は、やはり最後まで反対派のままであることも珍しくありません。重要なことは、多数決などによる反対派の排除で結論を出すのではなく、反対派であっても合理的で建設的だと妥協できるだけの結論であり、その背景を納得してもらえるようにできるかどうかです。

ファシリテーションの実施方法

会議などにおいて、ファシリテーションを行う際は、以下のような実務的な設定やチェックが大切です。

準備や目標設定

メンバーと目的を共有する

ファシリテーションを実施する前はもちろん、実施中も、常にメンバーはその目的を意識し、共有しつつ、ぶれることのない視点・目的で臨む必要があります。ファシリテーターがその共有の程度について、個々のメンバーに目を行き届かさなければなりません。

メンバーについて把握する

メンバーの所属部署や肩書はもちろん、どのようなプロジェクトに参加してきたかなどの基本情報から、その発言の特性などについても把握し、ファシリテーションの進行中は、その人のいい部分が引き出せるような導き方がファシリテーターには求められます。

スケジュール等で無理がないか確認する

メンバーの都合が合う時間帯や、どの程度の頻度で参加できるのかはもちろん、ファシリテーション自体の目標到達までのスケジュール管理も重要です。メンバーが増えれば予想もできなかったような意見が出たり、議論が始まったりすることは覚悟しておくべきでしょう。必要な期間までに結論を導き出せなければ意味がありません。常に進捗状況とその先行きなどを見つめながら、運営していくことが肝要です。

議論の活性化と整理

意見の引き出しと傾聴、参加の均等化、深掘り

部署間では利害が異なることは少なくありません。早く納品したい営業と、できるだけ納期に余裕を持ち、完成度の高い製品を納品したい製造部門との関係などがイメージしやすいでしょう。いずれの立場の意見もしっかり聞き、その意見等の背景について深掘りをする姿勢が必要です。また、ファシリテーターは意見が偏らないように、中立性を保つことを心掛けなければなりません。

ツールの活用

複雑な情報を簡潔化し、人目で誰にでもわかるようにするためのツールとして、ボードやカードを的確に使います。そして、意見の整理や議論の収集がつかない場合は、必要があれば軌道修正をしなければなりません。そのような場合もチャート化すると、新しい展開や合意点などが見つけやすくなります。

場所と時間の設定

部署をまたがるような会議では、日時を設定し、会議室のような場所で開催することが多いでしょう。しかし、必ずしも会議室で行うことがベストとは限りません、職場の空きスペースで実施することがベストであることもあるでしょう。重要なのはメンバーが参加しやすく、議論が進みやすい環境であることであり、形式的な空間や席の配置にこだわる必要はありません。

まとめ・アウトプット・現実化

集まった情報を整理して、意見やアイデアを具体化した対策や戦略、改善策などに落とし込むところまでが、ファシリテーションです。そのために、メンバーに集まってもらっているのです。一方的な指示命令ではなく、それぞれが合意を持って、最善の方法を考え出せる機会とすることが重要です。

そして、具体化された目標や到達点は、実践してその結果を検証することも必要です。問題が新たに生じれば、またそこでメンバー間で意見を交換したり、アイデアを出し合ったりして解決していくことになるでしょう。PDCAの流れに組み込むことで、継続的な業務の改善や、新しい商材の開発が期待できることになります。

多くの職種・部署でも実践したいファシリテーション

ファシリテーションというと、一部の部門だけが必要とする手法だと感じられる方が多いかもしれません。現代のように、それぞれの部門や職種で課題解決が求められる時代は、どの職種、そして誰でもがファシリテーションの機会を持ち、スキルを高めていく必要があると言えます。実践と経験が必要なため、とにかく試験的にでもファシリテーションを行ってみるとよいでしょう。

 

参考: