テレワーク導入を検討中なら助成金を知って活用したい!

テレワーク導入を検討中なら助成金を知って活用したい!

働き方改革

テレワークの導入を検討するに当たり、導入手順やセキュリティ対策も大切ですが、導入にかかる費用も重要事項です。そのため、導入を検討する際には国や地方公共団体から受けられる助成金についても調べておくと、導入もしやすくなるでしょう。今回はそもそも助成金とはどういう目的に使えるのか。また、どんなものがあるのかについて紹介します。

助成金とは

助成金と類似の制度に「補助金」があります。どちらも要件を満たすことで、国や地方自治体から返済不要の資金が支給されるものですが、同一の制度ではありません。両者を比較しながら特徴を紹介します。

助成金は返済不要!しかし要件がある

助成金にはいくつかの種類がありますが、多くは厚生労働省が管掌する「雇用に関係した支援金」を指します。「雇用に関係した支援金」の場合は、雇用保険料が財源です。そのほか、主な特徴は次のとおりです。

  • 助成金は返済不要
  • 要件を満たしていれば、おおむね申請は通る
  • (厚生労働省の助成金であれば)財源が雇用保険料なので雇用保険の適用事業者が対象

要件は、雇用や働き方など、労働環境の改善・向上に即した内容が主ですが、その種類は多岐にわたります。また、助成金はあと払いが基本です。申請後に審査を経て支給となるため、受給までに1年程度かかることもあります。助成金の要件に該当する雇用や働き方改革をするとしても、自己資金は必要ですので注意が必要です。

助成金より要件が厳しい補助金

補助金は、経済産業省や地方自治体が取り扱うことが多いです。補助金は前提となる国や地方自治体の政策に沿った内容で決まります。つまり、国や地方自治体の意向に沿った事業の実施をサポートするために支給されます。適用要件は助成金よりも厳しく、補助金の目的や趣旨に照らし合わせて申請内容が適切かどうかを審査されます。審査の結果、申請が通らない可能性もあります。

返済不要であることや、支給があと払いである点は助成金と同じです。補助金では、行いたい事業と補助金の目的が合致しているのかを事前に確認することが重要です。

ここでは、要件を満たしていれば受理される可能性が高い助成金を主に紹介します。

国の助成金にはどんなものがある?

国の助成金について、成立までの背景や具体例を見てみましょう。

国の助成金と予算

厚生労働省は国の機関ですので、厚生労働省の助成金も国の予算で組まれます。1年ごとに予算案を作成し国会で承認を得ます。そのため当初の予算を使い切ると助成金も締め切られるのが原則です。ただし、いったん締め切られたあとに2次募集がかかることもあります。

また、新型コロナウイルス感染症のように年の途中に国民の生活に大きな影響を与える出来事が生じると、追加で補正予算が組まれることが多いです。募集終了後の追加募集の有無、もしくは新たな助成金が立ち上がっていないか、こまめに情報をチェックしておきましょう。

毎年予算が組まれるため、助成金にはその年の世相や社会動向が反映されます。例えば女性の社会進出が社会の課題と判断される時期なら、女性が結婚や出産を経ても働きやすくなるための助成金が多くなる可能性もあります。

厚生労働省の助成金 具体例を紹介

厚生労働省の助成金は幅広いですが、労働条件や労働環境に関する助成金を抜粋して紹介します。

業務改善助成金

事業場内の最低賃金を一定額以上引き上げるための助成金です。さらに、POSレジシステム導入や業務に必要な車両導入など、設備投資による業務改善も助成金の要件です。

産業保険関係助成金

労働者のストレスチェック、ストレスチェック後の専門家からの面接指導などを実施する場合に支給される「ストレスチェック助成金」や、疾病を抱えた労働者が、治療を受けながら働き続けられる支援策を取り入れるための「治療と仕事の両立支援助成金」などがあります。こちらは労働者健康安全機構の助成金ですが、厚生労働省が支援している事業です。

働き方改革推進支援助成金

「働き方改革推進支援助成金」には、労働時間の短縮や有給休暇促進のための「労働時間短縮・年休促進支援コース」や、勤務と勤務の間に一定時間以上の「休息時間」を取り入れる「勤務間インターバル導入コース」などがあります。

2020年の助成金には新型コロナウイルス感染症の影響が色濃く出ています。前述の「働き方改革推進支援助成金」にも、新型コロナウイルス感染症対策のための助成金があります。子どもの休校(休園)に伴う特別休暇制度を整備するための「職場意識改善特例コース」や、新型コロナウイルス対策でテレワークを導入するための「新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコース」などです。

テレワークに関する国の助成金

テレワークに関する厚生労働省の働き方改革推進支援助成金制度を2つ紹介します。

労働時間短縮・年休促進支援コース

1つ目は、「働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)」です。「働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)」の適用を受ける主な要件は次のとおりです。

事業主要件

支給対象となる事業主は、以下4つの要件すべてに該当する必要があります。

  • 労働者災害補償保険の適用事業主であること。
  • 交付申請時点で、「成果目標」1から4の設定に向けた条件を満たしていること。
  • 全ての対象事業場において、交付申請時点及び支給申請時点で、36協定が締結・届出されていること。
  • 全ての対象事業場において、交付申請時点で、年5日の年次有給休暇の取得に向けて就業規則等を整備していること。

参考:「働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)

また4つに大別されている業種において、それぞれの業種ごとに設けられた「資本または出資額」「常時雇用する労働者数」のどちらかが基準の一定以下でなくてはなりません。

支給対象となる取組

  • 労働管理担当者に対する研修
  • 労働者に対する研修、周知・啓発
  • 外部専門家によるコンサルティング
  • 就業規則・労使協定等の作成・更新
  • 人材確保に向けた取組
  • 労務管理用ソフトウェアの導入・更新
  • 労務管理用機器の導入・更新
  • デジタル式運用記録計の導入・更新
  • テレワーク用通信機器の導入・更新
  • 労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新

上記のような事業を1つ以上行い、かつ所定の「成果目標」を設定します。目標が達成できない場合は助成金の助成率や上限額が小さくなります。

助成金の金額(目標を達成した場合)

以下のいずれか低い方の額が支給されます。

  • 成果目標の上限額および賃金加算額の合計額
  • 対象経費の合計額×補助率3/4

詳細については厚生労働省「働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)を参照ください。

新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコース

2つ目は「働き方改革推進支援助成金(新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコース)」です。「働き方改革推進支援助成金(新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコース)」の適用を受ける主な要件は次のとおりです。

事業主要件

「資本または出資額」「常時雇用する労働者数」のどちらかが一定以下でなくてはなりません。業種は4つに大別されていて、業種ごとに基準が異なります。前提として、新型コロナウイルス感染症対策として、テレワークを新規で導入する事業主が対象です。ただし試行的に導入している事業主なら対象となります。

支給対象となる取組

  • テレワーク用通信機器の導入や運用
  • 就業規則・労使協定等の作成や変更
  • 労務管理担当者に対する研修
  • 労働者に対する研修、周知・啓発
  • 外部専門家によるコンサルティング

所定の期間に上記のような事業を行い、かつ雇用する労働者1人以上が、在宅またはサテライトオフィスでのテレワークを実施します。

支給対象となる経費

  • 謝金
  • 旅費
  • 借損料
  • 会議費
  • 雑役務費
  • 印刷製本費
  • 備品費
  • 機械装置等購入費
  • 委託費

助成金の金額

補助率及び1企業当たりの上限額は次のうち、どちらか低い方の金額です。

  • 補助率1/2
  • 1企業当たり上限100万円

厚生労働省以外のテレワーク導入時の補助金

補助金は新規事業や事業改革を要件とするケースが多いので、働き方や職場環境である「テレワーク」に対応するものは少ないようです。ただし、テレワーク導入に伴う事業改革でいくつか対象になるものがあるので、簡単に紹介します。

独立行政法人中小企業基盤整備機構(経済産業省管轄)「IT導入補助金」

中小企業・小規模事業者などが対象です。自社の課題の克服、もしくは強みを活かすITツールを導入する場合経費の一部を補助します。テレワークでは給与や勤怠管理システムのIT化を行ったり、顧客管理や会計管理のIT化を行ったりしますので、受給の可能性は十分あります。

補助金の額はいくつか枠がありますが、通常枠のB類型なら上限が450万円(補助率2分の1)です。

公益財団法人東京しごと財団「はじめてテレワーク(テレワーク導入促進整備補助金)」

東京都に勤務している常時雇用の労働者を2人以上999人以下、かつ6ヶ月以上継続して雇用している事業者が対象です。また、就業規則にテレワークに関する規定がないこと、のほか、12の要件をすべて満たしていることが求められます。そのうえで、該当事業者が所定のテレワーク導入に向けたコンサルティングを受け、そのうえでテレワークを新規に導入すると補助金が受けられます。

また、助成金や補助金ではありませんが、テレワークの設備を取得した場合に税額控除を受けることができる「テレワーク等のための中小企業の設備投資税制」もあります。これは財務省が設けた措置です。詳細は「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策における税制上の措置」で確認してください。このような制度が複数の省によって設けられていますのでテレワーク導入の際はこちらも確認しておくといいでしょう。

※助成金や補助金は募集期間や要件が変更されることがあります。申し込みの際は最新の情報をご確認ください。

テレワーク導入時の助成金は、制度を理解して利用しよう

テレワーク導入に利用できる助成金は複数ありますが、期限や要件が決まっています。早い段階で助成金の内容を理解し、申請の不備や期限切れを回避するようにしましょう。また、補助率にも差があるため、自社の場合どの程度受給できるかをよく確認しておく必要があります。助成金をうまく活用することでテレワークの導入をよりスムーズに行いましょう。

 

参考: