企業の一般利用が進んだクラウドストレージ、選定時の比較・検討方法

企業の一般利用が進んだクラウドストレージ、選定時の比較・検討方法

クラウド活用

会社内で取り扱うデータの容量は今後も増えることは間違いありません。多くの会社がデータを安全に、確実に保存し、運用を必要とするなか、増える一方のデータを社外のサービス会社が提供するクラウドストレージに保存・運用することが主流となるでしょう。このように利用が期待されるサービスになってきたクラウドストレージについて、最新の機能やサービス、導入にあたっての選定ポイントについてみてみましょう。

クラウドストレージの利用

会社内にあるデータは、基幹業務のデータだけでも膨大です。それに加え、各部署で作られる企画書や提案書などの文書データ、社内外とやり取りするメールのデータなど、どれも増える一方です。

増えるデータ容量に効率的に対応

クラウドストレージとは、クラウドサービス事業者が自社のストレージシステムを貸し出すサービスのことです。社外に倉庫を借りて荷物を保管するのと同じです。

例えば、IoT(モノのインターネット)はあらゆる機器類の稼働データを集め、それを解析してビジネスに活かすテクノロジーです。AIも、大量のデータを解析することで解を得ます。先端技術でなくても日常のメールやビジネスチャットでは画像や動画の交換が進み、データは拡大の一方です。こうした膨大になりつつあるデータは、貴重な情報です。きちんと保管をして、マーケティングや顧客ニーズの把握、あるいは業務展開のヒントを探るための財産です。すぐには活用しないと思われるデータでも、わかりやすく保存をすることは重要です。

そうした状況で活用できるのがクラウドストレージです。

また、データ量の増減や繁閑にうまく対応するには、ピークに合わせてストレージを自社で準備するより借りたほうが低コストで利用できるのも利点です。

生産性向上にむけて中小企業こそ利用を

総務省の『平成28年 通信利用動向調査』によると、調査対象企業の労働生産性(<営業利益+人件費+減価償却費>÷従業者数)が、クラウドサービスを利用している企業としていない企業では1.3倍の開きがある結果になりました。生産性向上のためには、クラウドサービスを積極的に利用し、データをうまく利用するべきなのです。とくに、自社で独自のストレージを用意する資金を出しにくい中小企業こそ、クラウドストレージを上手に活用し、生産性向上のためにデータを活用すべきなのです。

クラウド上でのファイル共有、運営上のポイント

クラウドサービスは溢れたデータの受け皿という機能だけではありません。クラウド上のファイルを共有することで、情報共有を推進する強力なツールとなります。こうした使い方で情報の伝達速度が高まり、必要なデータが必要な部署で活かされることになり、生産を向上させることができるのです。とくに外部の企業との共同作業などでは効果的です。メールでは送受信しにくい大容量のファイルも一度に相手に渡せるので、作業効率が格段に上がりますし、送受信漏れも防ぐことができます。

このようなクラウド上での情報共有を考える場合のポイントについて、確認していきましょう。

まずは、セキュリティとコミュニケーションを同時に強化

クラウド上にデータを保管するには、必然的にセキュリティの強化が必要です。悪意の第三者の侵入を防いだり、重要なファイルを消してしまったり書き換えてしまう事故も防止しないといけません。都度ファイルに暗号化を掛けてやり取りするのでは限界もあり、作業効率で問題があります。そういったセキュリティも同時に実現できるようなサービスを利用するのがもっとも重要なポイントでもあります。

ファイルのクラウド上の共有は物理的にやりやすいのですが、いざ共同で利用するとなるとルールづくりなど難しい問題が残ります。以下に紹介する機能について導入前に確認しておくことをお勧めします。

アクセス権限の設定

ストレージ内のフォルダにアクセスできる人を限定・管理することで、情報漏れを防ぐことができます。

アクセス権限を与えることで、社内でも外出先からでも、モバイル端末でアクセスでき、必要なファイルを確実に利用することが可能になります。社外の人もゲストとしてアクセス権限を与えることができるので、企業同士の共同作業にも活かせます。どこからでもファイルを共有でき、情報交換もスムーズになり、作業密度が作業場所に左右されないというメリットもあります。

デバイス認証、プレビュー機能(社外からダウンロードせず情報を閲覧)

クラウドストレージを使う際、デバイス認証の機能を活用すれば、特定のデバイスのみにアクセス権を与えられます。モバイル機器を外出先や出張先に持ち出す場合、紙で資料を持たなくてすむだけでなく、自分のパソコンにコピーやダウンロードする必要がありません。そのうえ、モバイル機器の紛失による情報漏洩の危険を最小限にできます。

また、プレビュー機能は、閲覧するだけの人と編集できる人に選別できる機能です。この機能で安全にデータやファイルを管理することができます。

ファイルロック(編集制限)、ファイルの更新、バージョン管理機能

ファイルロックは、権限がある人が自分の編集中にほかの人からのアクセスを制限する機能です。また、編集者がファイルを更新した場合、その情報をメンバーに通知する機能があると、メールで一斉同報する作業を減らせます。

また、新しい情報へと更新することが多い作業では、更新ごとに古いファイルを残し、ファイル名を書き換えて管理する方法がありますが、注意しないと古いファイルを書き換えてしまったり、古いものと間違えて削除してしまったりする事故が発生します。こうしたトラブルを防ぐためにバージョン管理機能の充実度も確認しておきましょう。

法人向けクラウドストレージの比較

それでは代表的なクラウドサービスについてみてみましょう。

Dropbox

個人の利用者が多いオンラインストレージサービスです。2GBまで無料で、友人などを招待すれば最大16GBまで無料で使うことができます。さらに容量を増やしたい場合はDropbox Proがあり、月額1,200円(消費税別)で1TBまで容量を拡大できます。また、Dropbox Businessは5人で1TBから利用でき、30日間の無料トライアルからスタートできます。料金はスタンダートで月額1,250円から始められ、ファイル共有・共同作業のための設定や管理機能、デバイス認証機能などが用意されています。
https://www.dropbox.com/ja/

OneDrive

マイクロソフトが提供するオンラインストレージであり、パソコン利用時に誰でもが使うWindows Explorer上で、あたかも使っているパソコンのハードディスクに別の外付けディスクがついたような環境で利用できます。データのバックアップは、パソコン内のフォルダ間のようなシンプルな操作でデータの移行が可能です。もとは個人用の無料ストレージとして始まりましたが、業務利用を前提としたOneDrive for Businessは最大1TBの大容量のほか、個人用に比べセキュリティが強化されています。アクセス権限の設定はもちろん、デバイス認証、ファイル転送時や保管時の自動暗号化、ファイルのバージョン管理などが可能です。
https://onedrive.live.com/about/ja-jp/

GoogleDrive

無料で15GBまで利用できます。もともとGoogleドキュメントという同社の文書作成ソフトのデータ保存用のためにスタートしました。そのためGoogleドキュメントで作ったデータは容量無制限で利用できます。GoogleDriveは、パソコンはもちろん、アンドロイドやiOS端末でもオンライン上での使いやすさを誇るストレージであるともいえます。セキュリティ、アクセス管理なども用意されています。
https://www.google.com/intl/ja_ALL/drive/

BOX

無料で10GBまで利用できます。Word、Excel、PDF、AI、EPS、PSD、写真など、120 種類以上のファイルをプレビューできるため、いちいちファイルをダウンロードせずに内容を確認することができます。月額1800円のBusinessプランの場合は、容量無制限のストレージを利用できるうえ、シングルサインオン(SSO)やセキュリティレポートなど高度な機能を利用することができます。また、大企業向けのEnterprise版もあります。
https://www.box.com/ja-jp/home

企業の成長とともにクラウドストレージ利用があり、そのノウハウが重要

システムの投資・構築には終わりがなく、また時代やビジネス環境で大きく変わります。将来の拡張を考えて現在の仕事をいかに効率化できるかという観点でクラウドサービスを選定し、早くノウハウを蓄積することが、生産性の向上の視点から重要な時代になってきたといえるでしょう。

参考: